第85話 プロテスタント方伯~抗議同盟の影~
『自由な人間は決して禁酒しない』
―哲学者ヘーゲルナッツ―
金貨の音がチャリンと鳴れば、魂は天国へ~・・・
免罪符で行く、まさに天国片道切符
なんて、免罪符を売る修道士の売り文句があるそうな。
あたし達は、本屋街で出くわしてしまったフリーデスラ方伯こと、フィーリプ殿下の屋敷に招かれたのだわさ。
そこで、教会に異議を申し立てる95の論題に関して、話をしないとならなくなったのよねぇ~・・・
まあ、あたしは他人事だけど、メメシアはかなりどぎまぎしているのよねぇ~・・・
なんか、自分の言葉で神聖帝国の未来が左右されるかもしれないって感じにねぇ~・・・
大げさだわさ~・・・
あたし達は屋敷の豪華な客間でフィーリプ殿下と対面したのだわさ。
「どうかそこまで深く考えず、単純な意見を教えて欲しいのじゃ」
「ほら、メメシア。いつもみたいな毅然とした何にも動じない頼もしい聖女の姿は何処に行ったのだわさ」
「マジョリン、帝国の興廃この対話にありなんて、後世の人に言われたらどうするのですか?!」
「後世まで気にしてられないのだわさ」
こんなやり取りを見たのじゃショタ方伯こと、フィーリプ殿下は笑みを浮かべたのよ。
「大丈夫じゃ。安心せい。余は様々な人から意見を聞き、書物から知識を得ているが故、1人の意見で自分の信念を曲げるような事はありえぬぞ。この先何があろうとも、原因は1つで無い」
「ほら、のじゃショタ方伯もそう言っているのだわさ」
「のじゃショタ方伯?」
「あ、口が滑ったのだわさ・・・フィーリプ殿下もそう言っているのだわさ」
メメシアは深呼吸をし、意志を固めたようだったのよさ。
「まず、95の論題に関して、わたくしの立場、すなわち教会内における道の修道会の役割から説明します」
っと、すっげえ堅苦しい話が長々と続いたのだわさ・・・
メメシアの話す事に、フィーリプ殿下が質問をする対話・・・
教会用語や、教会の聖書解釈の難しい話しに加え、古代哲学者の哲学用語もかなり出て来て理解が追い付けないのよ。
そして、そこで繰り出したのは、メメシアによる95の論題の怒涛の論破ラッシュだったんだわさ・・・
ゴリ押し論破も数知れず、痛い所を突く質問に対しては、「それって、あなたの感想ですよね?」「何か裏付けはあるんですか?」などの言葉で切り抜ける・・・
論破リストと化したメメシアは、最終的に教皇庁の偉大さを演説しはじめたんだわさ!
信心深く無いあたしなんかでも、この対話を聞いていて薄々と理解できたことがあるのよねぇ~・・・
教会の分裂は決定的だって言う事・・・
長い長い対話は最終的に答えが明確にないままで終わる事となったのよ。
教会の鐘の音で日が暮れて行く事に気が付いた程に、誰もが熱心に話を耳にしていたのだわさ。
「正直、全部理解出来たわけじゃないし、わずかしか理解できないのだけど、ただ、世の中の常識が変わる事だけは理解できたのだわさ・・・」
そう、それは、長く続いた教会の時代から、新しい時代への転換期になるって事。
「長い話にお付き合い頂き感謝する。今日は、屋敷に来客用の寝室がある故、皆様どうか泊ってくれたまへ。どうか、遠慮せず、くつろいで欲しいのじゃ」
「方伯さんよ。話しは変わるが、ズィーベン同盟を止める事に協力はしてくれるんだろうな?」
「あなた達の持ってきた紹介状に書いてあったのう。ダイムラー辺境伯とは仲良くしたいというのもある故、余はそなたらに協力する事を約束しよう」
っと、本来の目的である方の話しは上手く進んでよかったのよねぇ~。
「所でフィリープ殿下。ボクは商人で、見た通りにトケツスタンの品物をあらゆるルートを駆使して届ける事ができるんですよ。今、あなたに必要なもの、欲しくありませんか?」
「必要な物?はて、トケツスタンから手に入れる物で何があるのかのぅ?」
「そんなのわかりきってるじゃないですか。ボクの国ではフィティリ トゥフェンクと呼ばれる物・・・すなわち、火縄銃ですよ」
・・・いきなりマカフシくんは物騒な商談をはじめやがったのよさ!
「ちょっと、いきなり何を言い出すのかねぇ!?そんな物騒な!」
「でも、フィリープ殿下は必要なはずですよ。領地を、権威を守る為、今後何が起こるかわからないし、強い武力は生存戦略の上に欠かせないでしょ?」
「じゃが、もし余の軍が、教皇の元に集う対トケツスタンの十字軍に参加したとして、それらの銃はトケツスタンに向けられる事になるがいかがかのう?」
「商人として、戦争で何処が勝とうとも、商売ルートが変わると言う話しでしかないし、ボクは教会の信者です。それに、銃だけでは人を殺しません。人を殺すのはいつでも人なんですよ」
「そうであるな。使う日が来ない事を願いたいが、綺麗事だけでは領地も領民も守れぬ。現に、魔王軍の脅威に一番さらされているのは我が領地と言っても過言では無い状況じゃ。少なくとも200丁は欲しい所じゃ」
「200丁、お安い御用ですよ。支払の窓口には、旧約の民の方にご相談くださいね」
「でも、そんな数の銃、どうやって持ってくるのさ?」
「ルートは様々ありますから大丈夫ですよ。それに、トケツスタンだけが調達先ではありませんから」
マカフシくんは予想外に、やり手の死の商人のようなのだわさ・・・
「まじか。うちも銃欲しいぜ~」
「レギンくん・・・そんな流行の靴でも欲しがるようなノリで銃を欲しがらないでほしいのよさ・・・」
「レギン、そのような武器は不要だ。分離主義的異端者や、カイ教徒の使う武器だぞ。その様な物がいくつあったとしても、戦いは槍と剣で決まるものだ」
「ははっ!傲慢な騎士はみんなそう言うんだぜ。兄貴はわかってね~な~」
ドラゴン城伯の息子達は意見が食い違ってるのよねぇ~・・・
「そうですね~・・・結構大口案件になりそうだから、小型の大砲も運送できるかもしれませんね」
「大砲じゃと!買う!」
「オレもほしいぜ!」
「即決で買うものじゃないのだわさ~!」
恐ろしい子達だわさ・・・




