第83話 ユーデンガッセ ~旧約の路地~
『生きる事は呼吸をする事では無い。飲む事だ』
―ジャン≒ジャック・ジャソー―
街の中は家々がびっちりとくっついて建造されていて、閉塞感がパナいのだわさ。
そのなかでもひときわ家々がびっしりとぎゅっとされたように建てられている通りがあって、そこが旧約の民の居住区なのだわさ。
「あー、こんな窮屈な生活止めて、世界を裏側から牛耳りたい!」
へんな事をぼやく旧約の民がいるのよさ・・・
「ロートシルトさんこんにちは~」
マカフシくんの知り合いだったのよさ・・・
「おおマカフシ!オレの子孫は絶対、世界を裏から牛耳るんで、よろしく!」
「はっはっはっ、トケツスタンの弾丸には気を付けろって言い伝えてくださいね~」
なんっちゅう会話だ・・・
「っけ!旧約の民なんかに頼らなきゃいけねぇってのは」
「レギン、それ以上はいけない」
「旧約の民に対する愚痴は述べてはいけない」
「・・・把握したぜ」
しばらく歩いて、とある家に到着したのだわさ。
ちょっと外見がこじゃれた家なのよさ。
「宮中伯相手に金貸ししているから、もっとでけぇ家かと思ったぜ」
「見かけじゃないんだよ」
マカフシくんはドアをノックするのよさ。
「は~い。あら、マカフシさん。どうしたのかしら?主人に用?」
「はい。今、いらっしゃいますか?」
「いるわ~。あら、こんなに多く。狭いですが、どうぞお上がり下さい」
あたし達は客室に招かれたのよさ。
しばらくして、家の御主人が来て、マカフシくんは丁寧に説明してくれたのだわさ。
「ズィーベン騎士団同盟を止める為に宮中伯と交渉するのか・・・いや、マカフシくんの友人であり、我が同胞を守ってくれた恩人でもあるあなた達に私は強力したいのですが・・」
「ですが?」
「宮中伯は今、フランコノファード内にいないんだ」
な、なんだってー!
「だが、宮中伯では無いが、力になるお方を紹介は出来る。フリーデスラ方伯が今、この都の邸宅にいらっしゃる。彼はまだ若いが、力はある。紹介状を書こう」
こうしてあたし達はフリーデスラ方伯と会う事になったのだわさ。
☆☆
フリーデスラ方伯の邸宅に、マカフシくんも同行したのだわさ。
あたし達は邸宅の門衛に話をして、でも、方伯は留守との事だわさ・・・
いつ戻るか、まだわからないとの事なのよねぇ~。
だからと言って、邸宅の前に7人で待ってるってのもなんかあまりいい印象を与えないって話しになってさ、あたしとメメシアとマカフシくんとレギンくんの4人は少し周辺を散策する事になったのだわさ。
マカフシくんはここら辺の事が詳しいみたいなもんで、案内してもらう事にしたのよさ。
「つまんねぇ所案内したらどつくぜ」
っとレギンくんはオラついているのだわさ・・・
「ここ、フランコノファードでは、印刷所が栄えてまして、本の見本市が開かれているんですよ。知的な皆様にとって、そこはきっと面白いと思いますよ」
っと、マカフシくんはレギンくんに対して少し嫌味っぽく言うのよさ・・・
「は?本だ?・・・まあ、嗜む程度には読むがな」
レギンくんは強がっている感じなんだわさ・・・
なんやかんやで、本屋が多く立ち並ぶ通りに出たのだわさ。
店頭で、本を並べている店もあって、人も多くて賑やかなのよねぇ~。
「印刷技術の発展と、紙の量産化で、様々な種類の本が手軽に手に入るようになっています。まさに、知識の泉ですね」
「おお、宗教関係から料理の本まで、本当に幅広いのだわさ」
「翻訳する人達もいまして、これまで神聖帝国内では読まれなかった本もあるんですよ」
「これは、古典語がわからないあたしにとってはありがたい事なのだわさ」
すると、メメシアが何か1冊の本を手に取って、小刻みに震えていたのよ。
「何かいい本があったのかねぇ?」
「いいえ・・・最悪の本です!」
「え?逆~・・・」
「この本は・・・『マクシムスの寄進状』が偽書であると書かれた本です・・・このような秩序を乱す内容の本が出回っているなんて、信じられません・・・しかも、翻訳されているんですよ?!元の書は全部、古典文字で書かれていたと言うのに・・・」
「・・・その暴露本的なやつの、元の文章を知ってるメメシアの謎なんだわさ」
「教皇と対立する者達の意見もしっかり知っておかねば、話しすらできません。わたくしはそういう人文主義者と対話し、対立を緩和させるべきだと考えていますので・・・ただ、まだこの書が出回るのは早いんですよ!」
「マクシムスの寄進状ってなに?」
っと、気になった様子のマカフシくん。
「それはねぇ・・・マクシムスという皇帝が、帝国の西側を教皇に寄進したという内容の書状なのだわさ。それを根拠に今日の教皇の権力がある的なやつ・・・で、あってたかねぇ~」
「西側・・・じゃあ、東側はそのマクシムスっていう皇帝の領地のままなの?」
「東側はあんたの祖国が滅ぼしたのよ・・・」
「あ、まじか」
「マカフシさん。この本、印刷元は店主に問い詰めればわかりますよね!?」
「まあまあ、落ち着いてなのよ・・・」
メメシアは本屋の店主に、問題の本の印刷元を問い詰めたのよさ・・・
「こ、この印刷はわたしの所有する印刷所で行ってまして、その・・・守秘義務がありまして、原稿の持ち主は言えないんです・・・ただ、」
「ただ?」
「翻訳家はわかります。その本の末尾に翻訳家の署名があります・・・」
メメシアは本をめくり、翻訳家の名前を見たのだわさ。
「なんという事ですか・・・これは、意図的に世を乱す為に刷られた本という事になりますよ・・・」
「メメシア・・・大げさな・・・いったい誰が翻訳したと言うのだわさ・・・」
「ワルリッヒ・フォン・ハッテン・・・現在の魔王の名です!」
な、なんだってー!!?




