第80話 ブラックベリーワイン
『女が身を飾るのは、奢ってもらえるのを意識しているからである』
―思想家キムチゴール―
「これは、領内の苔の民の方々が造っていますブラックベリーのワインです」
そう言って、ウィットリは蛇口付きの小さな樽を持って来たのよさ。
蛇口をひねると赤黒いワインがグラスに注がれるのよさ。
それだけで甘酸っぱい香りがほんのりと周囲にあふれだすのよさ。
あたしとウィットリと猫男爵の3人で、軽く乾杯してさ、早速飲んでみたのよ。
「おお、ブラックベリーの甘さ、酸っぱさがしっかりしているねぇ。とってもフレッシュで、生き生きとしているベリーの味なのだわさ。渋みえぐみも無く、お酒である事を忘れさせるような爽やかさでありつつも、ワインらしさもしっかり残しているのよ」
「確かに、マジョリン殿の言う通り、甘さが強いのに、しつこく感じず、さらりと飲めるのが良い」
「そんなに喜んで頂けますと、同じ領民としてうれしい限りです」
「苔の民って、もっと野性的で、周囲にあまり接点を持たないような人達だと思っていたのよ。でも、こんなワインを作れるって事は、もっとフレンドリーな人達なのかもしれないねぇ・・・」
「そう好意的に思って頂けるとうれしいです。このワインはドワーフ達も大好きなのですよ。後、城伯様もこのワインを好きだと言っていました」
「ドラゴンもお酒、飲むんだねぇ・・・」
「はい。好きみたいですよ。でも、そんなにお酒に強くないのか、酔いがまわるのは早いみたいで、沢山は飲めないって言ってます」
「ドラゴンって、火を吹くからお酒とか強いのかなぁって勝手に思っていたのよさ」
「・・・確かに!」
そんな感じで会話をしながらのんびりとブラックベリーワインを味わっていたのよさ。
「そういえばさ、猫男爵さんは領地でワイン産業がどうのこうのってここに来る途中に言ってたよねぇ?」
「そうであるな。吾輩の領地で造られるワインもいいワインであるぞなもし。張り合うつもりでないが、このワインとは別の美味さがある。領地を治める者として、領民には感謝しかないものであるな」
流石は男爵・・・
城伯相手でも一歩も譲らない何かのプライドを感じるねぇ・・・
「所でウィットリ殿。最近、領内で何か変わった事は起こっておらぬか?」
「変わった事・・・そうですね・・・領内の東側で密猟者の目撃が苔の民から報告されていますね・・・ここら辺は野生動物も多くいますので」
「それはよろしくない問題であるな。密猟者を捕らえる事はできぬのか?」
「それが厄介なんですよ・・・密猟者は騎士なんです・・・」
「ええ?騎士が密猟するの?」
「はい・・・それ故に、下手に捕まえると問題を起こしそうで・・・前にもそういった揉め事が起こったりしてまして、危うく自警団を組んだドワーフが斬られそうになったりもしました」
「そうであったか・・・領地の東側・・・その周辺に騎士の領地、飛び地があるはずであるな・・・」
「もしかして、ズィーベン同盟の騎士の報告って、単純に逆恨みとかじゃないのかねぇ?」
「それはありえるかもしれぬな。明日、城伯との対談で詳しく伺ってみよう」
☆☆そして次の日☆☆
入城の受付を済ませ、案内人のドワーフに導かれ、岩肌の道なき道を進む。
やっとの思いで、城のある山を登り、城壁の前にたどり着いた。
「なんっちゅう所を登らないとならんのさ・・・もう、へとへとだわさ・・・」
「そうだねマジョリン・・・攻めにくい感じの造りなのかな・・・?」
「こんくらいでへばって、情けねえぜ~」
あたしとハレルは息を切らしているっというのに、プロテイウスは全然元気だし、メメシアに至っては余裕が伺えれるのよさ。
猫男爵も徒歩で身軽に上って来たし、流石猫なのよね・・・
城門が開き、武装したドワーフ達が警戒する中を進んだのよね。
「ハイル!! ハイル!! ドラッヘン!!」
武装ドワーフ達の掛け声が少々威圧的に感じるのよさ・・・
あまり、部外者の事を歓迎していないようなのよね・・・
城の中の広間に案内させたのよさ。
すると、黒い服装の高貴な感じの人がお連れを2人連れて現れたのよね。
「聖戦士ハレル殿、よくこの城へ来たぞ。ワシがこの城の主、ファフニエル・フォン・リントフルスベルク6世であるぞ」
「ファフニエル城伯閣下。我々もお会いできて光栄です」
「聖戦士の仲間、プロテイウス殿、マジョリン殿、それと・・め・・・メメッチァアー殿・・・?そなたらも会えてうれしいぞ。聖地奪還の夢はまだ、潰えていないという事なのであるな?」
ああ、入城手続きで間違えて書いた名前のまま伝わっている・・・
しかも、勇者でなく、聖戦士と記載した事で、妙に勘違いされているみたいだわさ・・・
「城伯閣下、ドラゴン城伯と聞いていたから、人の姿をしていて変な感じなのよねぇ・・・」
「そうであろうな。ワシは普段は人の姿に変化して暮らしている。本来の姿に戻る時は、戦いが起こる時であろう。まあ、人の姿でいる時の方が長いので、どちらが本来の姿なのかわからなくなるものだ」
「城伯閣下。吾輩と勇者達は、ダイムラー辺境伯の頼みで来たのである」
「猫よ。お主は騎士であるな?ズィーベン同盟とはどのような関係にある?」
「吾輩は同盟に名前だけあるようなもの。吾輩は皇帝より爵位を授かった故、吾輩に指図できるは神聖帝国の皇帝である。辺境伯とは昔より親しい仲である」
「では、男爵と聖戦士達、そろってワシに何を求める?聖地奪還の為の支援金であるか?それとも免罪符の押し売りか?」
「いえ、ズィーベン同盟の騎士が言うに、城伯閣下が配下の兵を招集し、周辺地域の平和を乱そうと企んでいるという事であり、辺境伯に頼まれ何が起きているのかを確認しに来たまでであるぞなもし」
「なんだと?!やらかしてきたのはやつら、ズィーベン同盟の騎士共である!彼等はこの領内で密猟団を率いて狩りをする。それにとどまらず、苔の民の集落や、ドワーフの集落まで襲撃し、強奪してゆくのだ!これまで何人と領民に被害がでたことやら・・・」
やはり、騎士連中の悪巧みがあるようだわさ・・・
「ワシはワシの息子達とドワーフ達に領内の治安を維持するように、自警団を組織させたに過ぎぬ。平和を乱してきたのは騎士であり、ワシらがどこを攻めようが、何も利益が無い事はわかるはずである」
まあ、城伯閣下は怒りを隠せない様子だったのよさ。
背後の影が龍の形をしていたのよ・・・
「そんなに感情が高ぶっては冷静に物事が判断できなくなってしまいますよ」
「そうであるな・・・失礼した。少し早いが、昼食でもとろう。皆も召し上がってくれたまへ」
っと、なんかランチタイムになったのよさ。




