第75話 求められる者達
『新しい酒には恐れあり』
―哲学者ヘーゲルナッツ―
あたし達は激しい戦いの疲れを癒す為に、宿でただひたすら寝た!!
ちょっとお高い宿の部屋を借りて、も~、めいいっぱいぐだぐだした!!
「こんなにぐだぐだして、いいのかねぇ~・・・」
「マジョリン、お酒があるよ」
「えっ!?今日はお酒を飲んでもいいのか!!」
「ええ・・・しっかり飲め」
メメシアはあたしの前に、ビールの入った小さな樽を持ってきてくれたのだわさ。
「わあ、美味しそうな白ビールなのだわさ!」
ゴキュッゴキュッ・・・っぷはぁ~~~!!
白ビールが身に染みるのだわさ~!!
「おかわりもいいぞ!」
「・・・・・・・・」
あたしは恐る恐る空けたグラスを持って、メメシアの元へ向かうのよ・・・
「遠慮するな。今までの分、飲め・・・」
メメシアはグラスにビールをたっぷり注いでくれたのよ!
「うめ うめ うめ」
あたしは涙を流しながら美味しいビールを飲んだのよ。
ハレルもプロテイウスも、笑顔で歓迎してくれたのよ。
すると、メメシアが・・・
「ただ今より毒魔法訓練を開始する!!」
あたしは突如、部屋に発動された毒の霧の魔法を受け、もだえ苦しんだのよ・・・
「いやしくたらふく飲んだ奴ほど苦痛は続く!!」
あたしは吐しゃ物巻き散らしてそのまま身動きが取れなくなったのよ・・・
そんなあたしをメメシアは見下して・・・
「まさか死ぬとはな・・・落ちこぼれがいずれ消えて行く運命だ・・・」
っは!!!
ここで目を覚ましたのだわさ・・・
「はっ・・・はっ・・・はっ・・・」
最悪な目覚めだわさ・・・
変な汗もびっしょりなのよ・・・
そんなあたしを、先に起きて朝の祈りを終えたメメシアが心配そうに寄って来たのだわさ・・・
「マジョリン・・・どうしました?」
「え?・・・あ、へ、変な夢を見たのだわさ・・・」
「それは、何かのお告げかもしれません・・・どのような夢だったのですか?」
「え?ど、どんな夢って・・・」
素直に言える内容じゃないのよさ・・・
「な、なんか、思い出せないのよねぇ~・・・」
「そうですか・・・もし、何か思い出したら言ってください。悪夢を和らげる事ができるきっかけができるかもしれません」
「ありがとうメメシア・・・そうするのよさ・・・」
あたしは宿の外に出たのよ。
ハレルとプロテイウスは何か筋トレだか踊りだか、わからん感じのエクササイズをしているのが見えるのだわさ。
木々に囲まれ、周囲を見渡せば山、山、山!
空は青いし、太陽はさんさんと輝いて、翼の生えた馬が・・・
翼の生えた馬がっ!!!
「ぺ、ペガサスが飛んでるのだわさ!!」
しかも、背中に誰かが載っているのだわさ!
ちょうどあたしの真上に来た時、ペガサスに載っている何かが飛び降りたのよ!
「マジョリン。何騒いでいるのですか?」
「メメシア!空から遊牧民が!!」
ドドドーーーン!!
着地(?)した遊牧民は地面に下半身をめり込ませたのだわさ!
「クマノニア騎兵の鉄の仮面・・・まさか、クリンゲル!?」
「いかにも。我は誇り高きマギャロの魔法使い、クリンゲルである!」
「・・・植えられた状態で言われても、気高さを感じないのだわさ」
「マジョリン・・・ちょっと引っ張ってくれ・・・」
うんとこしょと、あたしはクリンゲルをひっぱるんだけど、びくともしないのよ・・・
「プロテイウス!これ、抜いてほしいのよさ~」
「おう!まかせろ!」
プロテイウスはクリンゲルの頭を思いっきり引っ張ったのよ。
「ぎゃああああああああああああっ!!!」
「あれ?抜けねえぜ・・・」
「首を持つのは止めてくれ!我を殺す気かーっ!!」
「大丈夫だ。次は全力で引き抜いてやる!」
「何が大丈夫なんだーっ!我が死ぬーっ!」
「うおおおおおおおおおおっ!!」
「ぎゃああああああああああああっ!!!!」
どんなにプロテイウスが力んでも、クリンゲルは地面から抜けないのよさ・・・
「プロテイウス。私に任せなさい」
そう言い、メメシアは手で印を作りながら、呪文を唱え始めたのよ。
「ナウマク サンマンダ バザラダン センダ マカロシャダ ソワタヤ ウンタラタ カンマン・・・」
メメシアから闘気が溢れ出て、背後に燃え盛る輪が現れるのだわさ!
「あ、あの~、メメシア殿?我を消すつもりではあるまいか?」
怯えるクリンゲル・・・可哀想・・・・
「ふんっ!!」
メメシアはクリンゲルの手を掴み、地面から引き抜いて、そのままぶん投げた!
ぶん投げたぁぁぁあああっ!!!
クリンゲルは宿の壁に突っ込んで、下半身だけ外に出ている状態になってしまったのよ・・・
「か・・・壁尻だわさ!!」
「あら、力が入り過ぎてしまいましたね」
「メメシア・・・お前、化け物か・・・!?」
「私が化け物?・・・違う!私は神の申し子です!」
悪魔より怖いのよ・・・
「そんな事より、我を助けてくれぇ~!優しく助けてくれぇ~!」
わがままだわさ・・・
「壁にはまってるなら、油を使ってスベリを良くして抜きましょう」
そう言うと、メメシアは聖油を持って来たのよ。
そんで、クリンゲルに聖油を塗りたくって、引っ張ったのよ。
「やめでぇ~!ぐ、ぐるじぃぃぃぃ!!」
「少しの我慢です!」
メメシアは力任せにぐいぐいとクリンゲルのケツをひっぱるのよ・・・
「ら゛め゛ぇぇえ゛え゛っ!!い、イ゛ク゛ぅぅウ゛ウ゛ッ!(死ぬ方の意味で)」
ヌうっポオオオオオオンッ!!!
「あ!ヌケたっ!!」
壁からヌケたクリンゲルは、仮面も吹っ飛ばし、涙と鼻水ど唾液と汗と油でぐちゃぐちゃな顔を晒してのびてしまったのよ・・・
「哀れクリンゲルだわさ・・・アヘ顔を晒して昇天してしまうとは可哀想にねぇ・・・」
そんな姿を見たハレルは前かがみになったのよ・・・
「うっ・・・体が熱いっ・・・」
「ハレルには刺激が強すぎたんだわさ・・・・」
所で、クリンゲルは何をしに来たのか・・・
謎は深まるばかりだわさ。




