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第65話 未知との戦いに備えて

『千リットルの酒も1杯から』

―老人―




あたしゃ皮肉な事に、魔女を狩る連中を守る為、未知の魔法に対する対抗策を考えさせられていたのよさ。

牢屋よりはいい部屋を与えられ、色々な本を読んで、魔女監獄に攻め入って来た魔女が最後に自らを生贄に発動させた未知の魔法にどう対応するか・・・

色々な本を読んで考えているんだけどねぇ・・・


多分、ヴィルデ ヤークトを招く魔法なのだわさ。

しかし、それは多分である上に、対策なんて聞いた事が無いのよ・・・

もはや、隠れて災いが去るのを待つだけって感じだし、でも、今回は確実に魔女監獄が標的になってるんだから、どこに隠れようとこの周辺にいれば無事にはいられないはずなのよ・・・

結論から言えば、何処か遥か遠くへ逃げるだわさ。

でも、それは出来ないのよねぇ~・・・


「どうだ?研究は進んでいるか?」


魔女狩り将軍が現れたのよさ。


「なんの成果も得られませんのよさ」


「手助けになるかと思い、他所で捕らわれていた魔法使いを連れて来た」


っと、兵士に手かせの鎖を引かれ、部屋に入ってきたのは、可愛らしい女の子だったのよさ。


「あら、可愛い魔女だわさ」


「ああ、こいつは男だ」


「・・・え?」


「はい・・・わたし、男なのよ」


「・・・へぇ」


「彼の名はヴィトゥス。ドクトルファイトと言う名を使って放浪の魔法使いをしていた者だ。女性のふりをして、助産師をしていた所を捕らえられ、他所の監獄で烙印をおされている」


「わたしは、女の子として生きたいの・・・」


「黙れ。汝は言葉を慎め。煉獄に叩き込んでやろうか?」


「まあまあ、その・・・ヴィトゥスはどんな魔法を使えるのかねぇ?」


「わたしは・・・呪いを解呪したり、瘴気を払う事ができます」


ほう、それなら少しは役に、下手するとあたしよりも今の状況に適切かもしれないねぇ~・・・


「あたしはマジョリン。ヴィトゥスよろしくだわさ。」


「あ、はい。よろしくします」


っと、あたしはこの女装魔男のヴィトゥスと一緒に、例の魔女の魔法の対応策を考える事になったのよさ。


あたしはヴィトゥスに、何が起こったのかを詳しく説明したのよ。


「う~ん・・・正直、マジョリンさんの推測が当たってる気がしますわ。わたし、各地を旅して、ヴィルデ ヤークトの伝承は耳にした事がありますの。でも、それを止める方法なんて、聞いた事がありませんわ・・・」


「あたしもだわさ・・・」


色々考えたけど、やっぱりいい案なんて出ないものなのよさ・・・


「あ、夕方には少し小雨がふりますね」


っと、ヴィトゥスは空を眺めはじめる程に、手段が思い浮かばないのよ・・・


「おまえら、真面目にやってくれ」


あたし達を見張っている兵士が文句言うのよ・・・


「真面目にやって、これなのだわさ・・・」


「空から舞い降りて来る大群相手に、逃げる以外の選択肢が無いのよ」


っと、あたし達は文句を言い返してやったのよさ。


「・・・そうだ。身代わり人形を用意しておくのはどうかしら?」


「役に立つかねぇ~・・・?」


「その身代わり人形に、対悪霊用の護符を忍ばせて、悪霊共が身代わり人形をさらおうとして手にふれた瞬間、ビリリってなる感じよ」


「嫌がらせ程度だねぇ・・・」


「無いよりはましでしょ?」


「それなら、壁と言う壁に護符を描いた方がましなのよさ」


「でも、魔女監獄であるこの建物に、下手にそういう事はできないでしょ?」


「まあ・・・そうねぇ~・・・」


結局の所、あたし達は、藁とボロ布などを使って、身代わり人形を作りながら、他の対策を考え続ける事になったのよさ。


日が暮れて、夕食が運ばれて来たのよ。

なんと、皿に盛られた豚肉のローストとふんわり白パンが出されたのよさ。


「え?あたしらの晩御飯?」


思わずあたしは兵士に確認してしまったのよ。


「そうですよ。特別待遇ですよ。しっかり食べて、その分、しっかりと働いて下さいね」


「・・・お酒とかは流石に出ないのかねぇ~・・・?」


「出るわけないだろ・・・」


「お酒があると、もっと頑張れるのにねぇ~・・・」


っと、あたしはヴィトゥスにアイコンタクトを送るのよ。

すると、ヴィトゥスもうなずいてくれたのよさ。


「そうですよ。お酒があればもっと結果はよくなりますわよ」


「お酒だよ早く!!」


兵士は何か、困っているのよ・・・


「ま・・・魔法使いさん。やっぱりやめましょう。飲酒なんて・・・ね?」


「ダメだ!!だったらこの監獄から出して、自由にしろよ!」


あたしは苛ついて、兵士に本を投げつけてやったのよさ。


「O.SA.KE!!O.SA.KE!!」


観念した兵士は、陶器のビンを持って来たのよさ。


「これは、本当は薬用の薬草酒で、健康長寿の万能薬として、聖職者の間で飲まれているお酒です。強いお酒なので、水で割って飲んでください。」


そうやって持ってこられた薬草酒を、あたしはグラスに注いで、まずは割らずに1口飲んでみたのよさ。


「おおっ、これはいいお酒だねぇ・・・様々なハーブの香りが強く出ていて、それでいてはちみつも使われているねぇ?結構強めな甘味があって、全体をマイルドにさせてるのよ。でも、酒成分が強いって感じのお酒だわさ」


あたしはお酒を注いだグラスに軽く水を注いだのよ。

そんで1口・・・


「うん、少し水を足して飲むとちょうどいい味加減なのよ。全体的にバランスが良くなる感じがするのよさ」


ヴィトゥスもあたしの真似して、薬草酒を水で割って飲んでみたのよ。


「あら、とっても美味しいお酒だわ。わたし、この味、好きよ。こんな美味しいお酒を飲んで、健康長寿になれるんだったら最高じゃない。もっと広めるべきだわ」


「まあ、その薬草酒の作り方はわからないんだ。その酒を造っている修道院が、その製法を門外不出としている」


「出たのよ。修道院の秘密主義的なやつ。修道院は知識の独占を止めるべきなのよ」


「そうですよね。マジョリンさんもそう思いっていたのね?わたしもそう思っていたのよ。もっと、人々の為に、大っぴらにするべきなのよ」


っと、この後は何か、教会とか、修道会に対しての愚痴を言って、盛り上がったりしていたのよさ。


ただ、解決策は特に思い浮かばないまま、夜が更けていったのだわさ。




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