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第64話 迫りくる脅威

『生きる為に飲め、飲む為に生きるな』

―道徳哲学者ソクテラス―




あたしは魔女狩り将軍であるハスラング将軍に連れられて、監獄にあるハスラング将軍の部屋に来たのよさ。

まあ、背後に銃をいつでも撃てるように構えた兵士と、魔女狩り隊のエースのジャキエルが付いてきてはいたんだけどねぇ~・・・

ハスラング将軍の部屋は聖人の絵や聖書の絵など、様々な宗教画に飾られていたのよさ。

多分、魔除けなんだろうねぇ~・・・


あたしは席に着くように言われ、ポンと座ったのさ。


「今回、あの魔女と愚者達の襲撃で、他の囚人は外へ出されようとしていたのだが、貴公のみは魔女の魔法で拘束されていた。貴公は他の魔女達とは違うようだな」


「まあ・・・あたしは、勇者と旅をしていた魔法使いなのよさ。あたしの潔白を証明する為に、仲間達は色々交渉している最中だと思うのよ・・・」


「ほう、勇者と・・・その勇者は教皇庁か、神聖帝国皇帝からの承認は得ているのか?」


「いやぁ・・・ただ、あたしの聞いた話では、勇者は田舎の農民の息子だったとしか・・・」


「まあよい。それよりも本題だ」


あら、あたしの事は興味無いのねぇ~・・・


「魔女が自滅した時、不味い事が起こると申したが、何が起こると言うのだね?」


「あ~、あれはねぇ・・・そもそも魔女が単純に自滅したようにあんたらは見えたって事ねぇ~・・・」


「自滅以外の何だと言うのだ?」


「あれは自分を生贄にする強力な魔法なのだわさ」


「自分を・・・生贄だと?」


「そうなのよ・・・ただ、その手の魔法は禁術に値するから、あたしは詳しくまではわからないのよ・・・ただ、そういう魔法があるのを知っている程度の知識なのよ」


「実際に、何をやったのか、わかるのか?」


「そうねぇ~・・・あれは多分・・・多分なんだけど、ヴィルデ ヤークトと呼ばれる悪霊の狩猟軍団を呼び起こす魔法なのだわさ・・・暗雲と共に訪れ、地上の人々を狩る、恐ろしい災いなのだわさ・・・」


「ヴィルデ ヤークト?・・・ワイルドハントと呼ばれるやつか。そんなものが呼び寄せられるだと?汝は戯言を述べるのか?」


「多分だから保証も糞もないのよさ。多分としか言いようが無いし、自分の命を引き換えに行う魔法がちっぽけなものだとは思えないのよ。それに最後に現れたルーン文字からも、相当のものだと思うのよねぇ~・・・」


そこで、ジャキエルが前に出てきたのよさ。


「この者が言う言葉、ただの戯言では無いと思われます。あの絵を見てください」


そう言って、ジャキエルが指さしたのは、聖母が救世主を身ごもった事を天使が伝えると言う、ありふれた宗教画なのよ。


「あの絵、鳩が描かれていましたが、その姿が消えています」


そうなの?

元から描かれていなかっただけな気もするのよさ・・・


「他にも、パンの守護聖人の絵、皿にのせた乳房から血が滴っているように変わっています。他にも釜茹でにされている雷からの救難聖人の絵、背景で空が描かれていましたが、空が真っ黒になっています」


そういう変化はよくわからんけど、聖人の絵って妙に痛々しい姿が多いのよねぇ~・・・

みんな、死に際が惨いのよさ・・・

わかりやすいからって、そういう惨い絵ばかりで無くてもいいのにねぇ~・・・


まあ、考えなくとも、魔女狩りの犠牲者の怨念はこの地に多く渦巻いているし、あの魔女が最後に行った魔法がそういう悪霊化した怨念を集結させているってのもあり得そうなのよ・・・


「どう対処すべきか、魔女よ。何か意見を述べたまへ」


「あたしゃマジョリンって名前があるのよさ・・・そうねぇ~・・・奇跡術が使えるなら、悪霊の大群は豚の中に押し込んで、溺死させるのがいいんじゃないのかねぇ~?」


「そのような奇跡術、簡単に起こるわけが無い事を存じての発言か?」


「いやぁ・・・奇跡術はさっぱりなのよ・・・悪気は無く、聖書の教えに従って考えたまでなのよさ」


「ジャキエル。そういら立つな。マジョリンと申したな。今日から特別に部屋を与える。勇者と旅をしていたと言う言葉はまだ信用できぬが、これより迫りくる脅威への対策を考えるのだ」


「・・・もし、できなければ?」


「まあ、車輪に縛り付ける事になるがな」


車輪は人を縛り付けるものじゃないのよ・・・


まあ、そんなもんで、あたしは人が生活するらしい部屋に移転になったのよさ。

ただ、密造酒は回収できなかったんだけどねぇ・・・


部屋には、いつも必ず見張りの兵士が2人、付き添いでいて、その部屋であたしがやる事は、色々な書物から、気たるべき脅威への対策を考える事。

何冊か本が並べられた本棚。

聖人の伝説をまとめた本や、北の異教徒の神話を記載した本、ペンタクルが描かれた本や、天使の護符が描かれた本など、様々だったのよさ。

正直、これらを読んだ所で、何か解決方法が思い浮かぶとは思えなかったのよ。


「何かわかった事はあるか?」


「いやぁ・・・まだすぐすぐ何もわからんのよさ。しかし、こんなに色々本がある中、1冊囚われている本があるって事だけど、それは本当に、どんな内容が描かれているのかねぇ・・・」


「あれか?あれは先々々代の教皇の時、教皇庁にある教皇宮殿で行われた晩餐会において、娼婦を沢山呼んで、乱痴気騒ぎを起こした時の記録が記載されているって話しだ。まあ、読んだ事は無いがな」


「魔術的な意味で禁書ってわけじゃなかったのねぇ~・・・」


さて、どうなることやら・・・




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