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第63話 聖者から与えられた鉄槌

『飲酒する自由が無ければ真の自由にあらず』

―社会心理学者エーリッヒ・フロンガス―




捕まっているみんなは、どう見ても魔法使いじゃないのよさ・・・

魔力も微塵も感じ取れないのよ。

囚人の羊はどうやら、魔女を魔女の集会に運んだ容疑がかけられて囚われているって事らしいのよさ。


それでも、一番気になる囚人が1人・・・いや、1冊あるのよさ。

グリモワールと思われるその書物は、鉄格子の中で拘束されているのよ・・・

本が、足枷みたいなのも付けられている・・・

よっぽどヤバイ感じのグリモワールなのかねぇ~・・・


この日の夜、仕込んだ密造酒の味見をする事にしたのよさ。

就寝時刻を過ぎた後、寝床の藁の中に隠した袋を取り出して、水漏れはしてなく、封を開けてみたのよ。

パンらしい香りがして、しっかりと袋の中で熟成されていたようなのよさ。

確か、あたしの記憶では、魔法使いのお師匠さんが自分で飲むお酒をこっそり造っていた時に言っていた言葉を思い出していたのよ。

泡が出てる時はまだ、お酒が出来る途中で、それが収まれば飲む頃合いだってねぇ・・・

中を見ると、泡立ってはいないのよ。

ただ、くすんだ果汁が入ってるだけなのよさ。

あたしは恐る恐る袋に口を付けてみたのよ・・・


「・・・お、お酒だわさ!思ったよりもお酒になってるのよさ!」


あたしゃうれしい気持ちになったのよねぇ~。


「限られた空間で、限られたものを使って、お酒を密造してしまったのよさ・・・これこそ、魔法だわさ!」


そう、これですぐに飲み干すのではないのよさ。

この底にあるカスを集め、次に用意した袋に入れるのよ。

そこには、朝食、昼食で出たけど食べずにくすねたスモモが入っているのよさ。


これであたしは、この窮屈な生活を耐えれるってわけねぇ~。

まあ、一刻も早く外に出たいけどさ・・・

人生に何も楽しみが無いなんて、ありえないのよ。

人が人である権利を奪う事は不可能なのよさ。


あたしゃ、この密造酒を嗜んだ後、ぐっすりと寝たのよさ。



☆☆



次の日の朝・・・


礼拝堂でお祈りの後、数名の聖職者の説教がはじまったのよさ。


「お前ら魔女、入れられた刑務所、禁じられた魔法使った諸事情、重ねられた罪、このままじゃ人生詰み、許される道は懺悔のみ、悔い改めよそれが汝の励み」


テンポよくなんか罵られたのよさ。


その後、今日は中庭で草むしりをさせられたのよ。

ふと、壁をみると、妙なツタが壁の上まで這っていたのよ。

それも妙にしっかりとしたツタで、壁にしっかりと根付いているのよ・・・

いつの間にか突然現れたように見えたのよねぇ~・・・


っと、壁の上をみたのよさ・・・

誰かが壁の上に登っているのが見えたのよ。

外の壁を登ったのか、それも、1人、2人と、徐々に増えてゆく・・・


「おい魔女!ぼーっとしてないで、手を動かせ!」


「あ、はいはいなのよさ・・・」


あたしゃ見ないふりをしたんだけどね・・・


「なんだ!壁の上に誰かいるぞ!」


っと、監守の声がしたのよさ。

その瞬間、シュバッと風を切る音と、ドッと鈍い音がして、見れば監守の胸に短い矢が刺さっていたのよ。

壁の上の何者かが、クロスボウを射ったのよさ。


ツタをつたって、何人かの人達が降りて来たのよ。


「お父さん!」


「あなた!!」


囚われていた魔女とされた女の人達が侵入者に向かって走ったのよ。

どうやら、救出に来た男達だったのよさ。


そして、おおきなつばのとんがり帽子の魔女が、壁の上からふわりふわりと舞い降りて来たのよさ。


「早く、囚われた人達を救出するのよ!」


っと、魔女は侵入者達に支持を出すのよ。

壁の上の男達はクロスボウの他に、弓矢を射って、監守を近寄せないようにしているのよ。


「あら、あなた、魔力を感じるわね。本当の魔法使いでしょ?手伝って。ここから脱出するわよ」


っと、魔女はあたしをすぐに魔法使いと見抜いたのよ。


「でも、仲間が釈放する為に色々手回ししてくれてるから、あたしゃ下手にここを出れないのよさ」


「無理よ。何人たりとも大司教には逆らえない。私はエースパ。あなたも魔法が使えるなら、私に協力しな」


「あたしゃマジョリンだわさ。でも、協力できないし、妨害もしないのよ。あたしゃあたしの仲間を信じてるからねぇ~」


「そう。残念」


エースパは左手の手の甲をあたしに向けたのよ。

そこにはルーンから発展させた魔法陣の一種、畏怖の兜の印象が描かれていたのよさ。

その印象が不気味な光を放ったのよ。


「あなたはそこでじっとしているといいわ」


地面から突然ツタが生え、あたしの体に絡みついて、あたしはツタに縛られてしまったのよ。


「魔女め!逃さぬぞ!」


鎧を着た兵士が数名走って来たのよさ。

それは白いマントに赤い十字が描かれた、まるで聖騎士のような姿の兵士達だったのよさ。


「魔女狩り将軍の魔女狩り隊が来たぞ!」


壁の上の人が大声で周囲に呼びかけたのよ。

その瞬間、兵士は短い銃、短銃を壁の上に向けたのよさ。

短銃には、火縄が付いていないのだけど、兵士が引き金を引くと、短銃の脇についた車輪が回転し、火花が散って、そのまま火薬に引火され、銃口から火を吹いたのよさ。


ズドーーーーンと言う大きな音の後、壁の上の男は壁の上から血を巻き散らしながら地面へ落下したのよさ。


あたしゃ、この火縄の無い銃に驚いたのよさ。

もはや、魔法が使えない人間が、さらに簡単に人を殺める事が出来る道具・・・

魔法に対抗しえる対人用の兵器・・・

恐ろしい物がこの世に生まれていたのだと、恐怖だったのよさ。


「自然は征服するものでは無いわ。共存するものよ」


エースパが拳を高く上げると背後に、ユグドラシルの幻影が浮かび上がったのよさ。

周辺の草が急激に成長し、障壁を作り出したのよ。

でも、魔女狩り隊はそれをただ見ているだけじゃなかったのよさ。

草の壁を光のはしごが貫いたのよさ。


「アンジェリス スカーラエ!?」


真横に勢いよく伸びる光のはしごに反応したエースパだったが、それをかわす事は出来ず、胴をはしごに抑えられる形で壁まで突き飛ばされ、そして、はしごに捕らわれてしまったのよさ。

そして、魔女狩り隊が短剣で草の壁を切りひらき、その姿を見せたのよさ。


「よくやったジャキエル。貴公は名誉ある最優秀魔女狩り騎士である」


「ハスラング将軍。誉れ高きお言葉に感謝致します」


偉そうな、そして体格がいい騎士。

これがハスラング将軍、いわゆる魔女狩り将軍ってわけね・・・

そして、光のはしごを放ち、しっかりと握りしめ、エースパを捕えている兵士がジャキエルと呼ばれているやつって事さ。


「魔女様をお守りしろ!」


侵入者達が短剣や鎌を手に、魔女狩り隊へ立ち向かおうとした瞬間、


ダダダーーーーーンっ!


数丁の銃が一斉射撃!

侵入者達は倒れたのよ。


「やはり最新の銃は、それこそ金はかかるが威力も使い勝手も格段に違う。憎き過激異端者共は銃を笛と呼んだが、これは聖なる銃、ジェリコラッパと呼ぼう」


なんか、将軍は1人で語ってるのよさ・・・


「お前らの好きにはさせない!」


エースパの左手の印象が強く光ると、壁から大量のツタが生え、光のはしごを包み込み始めたのよさ。


「聖なるはしごを冒涜する者に裁きあれ!」


ジャキエルがそう述べると、ツタはその姿を燃え盛るヘビに変え、エースパに巻き付き噛みついたのよさ。

エースパが悲鳴を上げ、その体が燃え始めたのよ・・・


「ガウト ゲンドゥル ゴロル スヴィパル ヴァク ユッグ ヴィズル」


エースパが何か唱えると、Fの横二本線が曲がったルーン文字が宙に浮かび上がったのよさ・・・


|v

|v

|


その瞬間、燃え盛るヘビは破裂し、9つの破片になって飛び散って、エースパが光に包まれ、その肉体は消滅し、魂が天高く飛び上がって、雲の中に消えたのよ・・・


「こりゃあ不味い事が起きるのよさ・・・」


ともかく、侵入者達は殺されるか捕らわれ、囚人は脱出出来ずに牢へ戻されたのよさ・・・


魔女狩り将軍はあたしに絡まったツタを切って、解放してくれたのよさ・・・


「所で魔女よ。不味い事が起こるとはなんだ?」


「・・え?」


「先程述べたであろう。話を聞かせたまへ」


口は災いの元だわさ・・・

口から出るものが人を汚すとは、この事かねぇ~・・・




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