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第56話 狼共よ、さらば!

『酔いはいつまでも続かない』

―道徳哲学者ソクテラス―




「我々はもっと魔王に対抗する為に、聖なる力を必要とします。大聖堂へ向かいましょう。そこには真の十字架の聖遺物があり、聖なる守護の恩恵を授かる事が出来るはずです」


っと、メメシアが言いはじめのよさ。

そんでもんで、その大聖堂へ向う事になったのよねぇ・・・


確かに、ハレルは勇者の特権たる技、神の雷を使い過ぎると寝込んでしまう弱点が露見しちゃったし、プロテイウスは魔法に対しての抵抗力が低い事もわかったのよねぇ・・・

あたしは・・・まあ、攻撃魔法が強力すぎて、人口密集地などでは容易に使えないってのもあったりするのよねぇ・・・

それに反して、メメシアは完璧だと思うのよさ。

謎の術で治療も攻撃も守備も出来る上、本気の奇跡術に至っては、魔王軍の強力な魔女を圧倒させる事ができる・・・

完全で究極の聖人だわさ・・・


大聖堂へ向かう途中だったのよさ。

雑木林に囲まれた道の途中、車輪が外れた馬車が隅に放置されていたのよさ。

なんだろうと思って近寄ると、あたり一面、真っ赤っかなのよさ・・・

馬車の中もまあ、大変な状態なのよ。

人であっただろうものが散らかっているありさま・・・

馬車の近くには、中途半端に馬肉として食されたであろう食べかけの馬刺し1頭分が転がっているのよさ。


「これは・・・オオカミかな?」


「いや、オオカミの襲い方じゃねえな・・・」


「狼男かもしれませんね・・・それも、1体だけじゃない・・・複数の狼男の群れだと思われます」


やっかいだわさ・・・

狼男は魔法抵抗力が強いから、集団で現れたらやっかいだわさ・・・


なんて思っていたら、ガサガサっと音が聞こえたのよさ。


「ねぇ・・・もしかして、囲まれてないかねぇ・・・」


「囲まれてますね」


薄暗い雑木林から音がするのよさ・・・

そして、ほんのりと獣の臭い・・・

ハレルとプロテイウスは剣を抜き、身構えたのよさ。


「ここじゃ囲まれて危険だわさ・・・どうにかして、ここから離れるしかないのよさ」


「でも、どうやって!?」


「あたしに任せて!」


あたしは呪文を唱えるのよさ。


「ドゥンストヴァント!」


霞がたち、雑木林に真っ白な霞の壁を作り出したのよさ!

視界を塞いで、あたし達は少し開けた場所まで移動したのよ。

振り返ると、狼男達が霞の壁を抜けて、道に出て、あたし達を追いかけて走っているのが見えるのよさ。

その数3体・・・


あたしは神経を集中させ、魔力をため込み、呪文を唱えるの。


「シュテルケシュトラール!」


あたしは魔法の光線を放ったの!

魔法の光線を浴びた狼男達の体は燃えたのよさ!

流石に抵抗力があるとはいえ、強力な魔法を浴びさせたらひとたまりもないのよさ!

体が燃え盛る狼男達はその場に倒れ、後はただただその身が燃え尽きるまでだったのよさ。

でも、他の狼男達は雑木林から飛び出て来たのよ!

数は6体!

でも、プロテイウスとハレルが何とか狼男達を切り倒し、2体の狼男が雑木林の中に逃げて行ったのよさ・・・


「ハレル。あれは逃げたままにしておくのは危険です。今、追跡して殲滅させたほうが良いと思われます」


「そうだね・・・ここを通る人達がまた、襲われるかもしれない」


「追跡魔法、シュプールフェフォルグ!」


あたしは魔法を唱え、逃げた狼男達の痕跡が見えるようになり、皆を引き連れて雑木林の中へ入ったのよさ。

しばらく歩くと、小さな川があって、その先に小さな洞穴があったのよさ。

中には先程逃げた2体の狼男がいて、何かウロウロしているのよさ。

どうやら、完全に理性を失った魔物なのだわさ。


あたし達はこの2体を倒し、洞穴の中を見たのよ。

そこまで深くない穴で、狼男達が奪ったと思われるカバンやらが散乱していたのよさ。

あたしはさりげなく、そのカバンの中にあった銀貨をそっとくすねたんだけどさ~・・・

ハレル達は狼男達が革袋に蓄えていた金貨を見つけたのよさ。


「凄いよ・・・金貨が5枚も入ってた・・・」


金貨1枚が大銀貨20枚の分、中銀貨40枚分、銀貨300枚分の価値があるのよさ。

大体、2大銀貨があれば1家族1ヶ月暮らせると言われていて、上手く職業について働いてる魔法使いの平均月収が4大銀貨。

すると、金貨5枚は・・・銀貨1,500枚分・・・

何・・・しばらく働かずに飲み放題で暮らせるじゃん・・・


「この金貨、どうしようか?」


「そうですね・・・我々には大金すぎます。それに、命を落とした人がいて、ここにある金貨です。教会に寄付しましょう」


「え・・・ええーっ!そんな折角の大金をー!」


「そうだそうだー!傭兵の給料約2年分の大金だぜー!」


「落ち着いてください。今すぐ寄付するわけではありません。これから大聖堂へ向かうにあたって、何が起こるかわかりません。それまで使わずにおくべきでしょう」


まあ、確かにそうだわさ・・・


その後、近くの村にたどり着いたあたし達は、村の人に襲われた馬車がある事を告げたのよさ。

村の人達を連れて、現場へ行ったのよ。

どうやら村の人達の知り合いの馬車だったそうで、町に買い出しに行く途中で襲われたそうなのよさ・・・

お亡くなりになった遺族もわかって、とても悲惨な状況だけど、村の墓地に埋葬する事が出来たのよさ。

不思議な事に、襲われた人はツケ払いで買い物をするので、手持ちの金が無かったはずとの事なのよさ。

狼男達が奪った金貨がどういう経路で、どんな人を襲って入手したのかはわからなかったのよさ。

まあ、結局、あたし達が持っておくことになったのよねぇ~。


狼男達も何処から来たのかよくわからなかったし、世の中は不思議に満ち溢れているのねぇ~・・・




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