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第53話 魔法使いのミンネザング

『一番大切な事は、単に飲むのではなく、善く飲む事』

―道徳哲学者ソクテラス―




あたし達はヘーニッヒを連れて、ダイムラー辺境伯の所へ向かったのよさ。

そこで、傭兵隊に使った資金の請求をする為なのよさ。

到着したこの街はベンズガルトって言う、古くから攻めたり攻められたりと、争いがあった地域なのよねぇ。

強固な城壁で囲まれた大きな街なのよ。

ダイムラー辺境伯の宮殿がある街で、辺境伯がいると警備の強化があって、普段でも賑やかな街が、さらに賑やかになるそうだけどさ、どうやら今日は辺境伯がいるみたいなのだわさ。


街の入り口で番兵に止められたけど、勇者とわかるとすぐに通してくれたのよ。

それどころか、辺境伯の宮殿に招かれちゃったのよさ。

まあ、順調に事が進みそうでよかったのだわさ。


大きな広間にダイムラー辺境伯と辺境伯令嬢のメルセデスお嬢様がいらしてさ、歓迎してくれたのよ。

そんでもんで、ヘーニッヒが辺境伯に資金の話しをしようとした瞬間、メルセデスお嬢様がさ、


「私、魔法使いが大好きですの。ぜひ、素敵な魔法を見せて頂けません?」


なんて言い出すもんで、ちょいと困っちゃったのよさ。


「マジョリン。どうしたの?なんか、顔色悪いよ?」


「ハレル・・あたしゃ人に見せる魔法ってやった事が無いしさぁ~、あんまりやるものでもの無いって思ってるのよさ・・・」


「それは、なんでかな?」


「見世物魔法って存在はするんだけどさ、まあ、低俗魔法って言われているし、それに教会の人によってはそれを悪しき魔法とする人もいてさ、好ましいものじゃないのよさ・・・」


「そうなんだ・・・メメシアはどう思う?」


「わたくしですか?」


メメシアは話をふられ、あたしをじっと見たのよさ・・・


「教会の規律に下手に触れなければいいと思います」


「それは大丈夫な範囲がわかりにくい・・・」


すると、プロテイウスがあたしの肩をぽんと叩いたのよ。


「マジョリン。断るなら断っちまえばいい。お前の魔法はそんな安っぽく見せる為じゃねえってさ。大丈夫、説明しずらいならオレ達が話してやるよ」


うう、そう言ってくれると助かるようだけど、あたしゃ困っちゃうんだよねぇ。

だって、断ったらみんなに迷惑かけちゃうってのを再認識させられた的なぁ。

資金の話しだって、下手に相手の気持ちを折ってしまうような事があったら、差し支えまくりなわけじゃん。

あ~、あたしも面倒くさい魔法使いだわさぁ~。


変なプライドや周囲の目、評価やらなんやらと、こんな時にお酒があったらノリでぱぁーって花でも咲かせて見せちゃうんだけどねぇ・・・


ん・・・・


それだ!


「あ、あのぉ・・・メルセデスお嬢様ぁ~・・・申し上げにくいけど申し上げなんだけどさぁ・・・」


「なんじゃ。わらわに言うてみなはれはれ~」


「見せる為の魔法、あるにはあるのですがぁ、そのぉ、お酒を飲まないと発動出来ないのですだわさ~」


それを聞いてメルセデスお嬢様はブイブイ大笑い。


「ブイブイ(笑い声)」


「マジョリン・・・あなた、そんな事を言い訳に、単純にお酒にありつこうとしているのではありませんよね?」


「あ、あはは~・・・お酒が無いと、その、発動出来ない魔法なのよ・・・」


「魔法使いよ。よいぞ。美味い酒を用意致すぞ。それと折角じゃ。勇者の皆も一緒にお昼の食事でもしようぞなもし」


そんなもんで、あたし達はお昼ごはんを御馳走してもらう事になっちゃったのよさ。


長い大きなテーブルに料理が並ぶのよさ。


「勇者の皆、この土地の料理、是非ともご堪能あれ~」


っと、メルセデスお嬢様は上機嫌。


小麦の生地をちっちゃくちぎったような、パスタ的なもの。

それをチーズにあえ、上にスライスしたウヴィーベルが乗せてある。


「それはシュペッツレという、パスタの一種じゃ。この街の名物じゃ」


おお、それは美味しそうだわさ・・・


「この、スープに浸してある袋みたいなのは?」


「それはマウルタッシェという、燻製肉や野菜を練り込んでパスタの生地で包んで茹でた料理じゃ。うまいぞ」


そして、あたしには赤いワインがそそがれたグラスが持ってこられたのよさ。

いやぁ、綺麗なガラスのグラス・・・

これはお高そう・・・


「そのグラスは南の海洋国家の職人が作ったやつじゃ。まあ、グラスなど気にするな」


気にするなといいつつ、さりげなく自慢しているのよねぇ・・・


「ワインの葡萄はトロリンガーと言う品種でのう、とにかく味わってみるとよい。わらわも愛するこの土地の、森の恵みの味がするぞ」


っと、あたしだけワインを出されて、なんか注目されつつ、しかもメメシアは白い目で見ている中で飲むのは木がひけるけどさ・・・

このワインのベリーの香りだけはあたしの味方のようで、優しく飲んで飲んでって誘ってくれているのよさ。

まあ、1口・・・


「お、これは、色を見た感じ、もっと熟成した味かと思ったけど、若々しさ、みずみずしさが全面に出ているのよ。ベリーの果汁の感じは薄く、ワインらしいの感じの味・・・酸味が強いけど、とげとげしさは無く、渋みも無く、すーっと軽く飲めて、とても美味しい・・・」


「おお!流石は魔法使いであるな!酒で語れる、これが例の魔法か!?」


あ、そういう事にしておいてもらっていいかねぇ?

まあ、そうもいかないんだろうけどねぇ・・・


美味しい食事をとって、あたしは3杯飲んだ所でメメシアに止められてしまったんだけどさぁ、まあ、これで約束の見せる魔法をしなくちゃならんのよねぇ・・・


また、広間にみんなで集まって、あたしは思いつく限りの見せる魔法をやってみたのよさ。

宙に火の輪を描き、その火の色を青、赤、黄、緑と色を変え、指パッチンで花輪に変え、最後は手を叩き白い雪のように舞い散って消えて行く感じさ。


辺境伯もメルセデスお嬢様も大喜び。

拍手をしてくれたのよさ。


「流石は勇者に仕える魔法使いじゃ!あっぱれあっぱれ!」


まあ、この程度で喜んでもらえるならよかったのよさ。


「その程度・・・期待して損した・・・」


突然、悪態が聞こえるのよさ。

何処にいるのかあたりを見回すけど、悪態ついてきたやつの姿が見えないのよ。


「ここだ。ここ・・・」


広間に敷かれた絨毯が盛り上がり、ねじり上がり、分離し、人の姿に代わる・・・


「我はメルセデスお嬢様に仕える魔法使いだ。勇者に仕える者よ。我と勝負しろ!」


魔女の帽子、鉄の仮面をかぶって、黒いマントを羽織った騎馬族のような服装の魔法使いが現れたのさ。

これは、厄介な事になったみたいなんだわさ・・・




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