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第39話 めざせ北の都!?

『孤独を恐れるならば、飲酒すべきでない』

―劇作家チェーポップ―




夜。

あたし達はニワトリの足が生えた北国の魔女の家に泊る事になったのよさ。

日中、この家は歩いて移動するけど、夜間は視界不良で危ないから止まるのよさ。

だから、安心して寝れるわけなのよ。

あたし達は2階の客室を借りて寝る事になったんだけどさ、ハレルもプロテイウスもメメシアも、寝るのが早い。

あたしはうだうだと、魔法の灯りで本でも読んでいたのよさ。


『マジョリンさん。起きてまつか?』


っと、ヴァシリチカが心に直接話しかけてきたのよさ。


『起きてるのよさ~』


『よかったら1階に降りてきまちぇんか?』


あたしは1階に降りて見ると、バーバもハーハもパーパもお酒を飲んでいたのよさ。


「マジョリンさん。晩酌の時間でつよ」


「マジョリンさんはお酒が好きだって聞いてのう、わしらの自慢の蒸留酒を飲んでもらわにゃならんと思ったのじゃよ」


「ヴァシリチカ、バーバさん、お気遣いに感謝なのよ~!」


小さなグラスに注いでもらった透明の酒、臭いは酒の成分って感じの香りなのよ。

わかる、これはかなり強いお酒だねぇ。


あたしはグイっと飲んだよ。

冷たいのに、喉を通って胃のあたりまで熱く焼けるような感じがわかるのよ。


「っくー!いいねぇ・・・これは、ここまで酒の成分だけを追求した蒸留酒、あたしは初めてだわさ。それでいて、鼻から抜けるように香るほのかな穀物のいい香り・・・そこらのシュナップスよりも洗礼された酒だわさ!」


「これは、わたち達の国ではかかせないヴァダーというお酒、またの名をウォッカと言いまつ」


「いいねぇ・・・これはもう1杯いただくのよさ」


小さなグラスにそそいでもらったのよ。

そしたらハーハがなんか掛け声かけてきたのよさ。


「底まで飲むのですの~」


あたしゃグイっとその1杯を飲み干して、テーブルにコッツーンって置いたのよ。

拍手されちゃったのよさ。


「流石マジョリンさん!飲み方をわかってまつね!」


「嬉しそうに飲んでくれて、わしらもいい気分じゃ。ほれパーパ、踊ってみせなされ」


「パーパ、踊るんだよん」


パーパさんはしゃがむような姿勢で足を出したり引っ込めたりと、独特な踊りを始めたのよさ。

やろうと思っても難しい踊りだねぇ。

ハードなダンスっちまってる。


「この踊りは騎馬族戦闘集団の踊りでつ。足腰を鍛えるのにもいいとされまつ」


「へぇ、騎馬族戦闘集団、凄い強そうだねぇ・・・」


「世界最強でつね!白き軍を名乗って、まさに負け知らずでつよ!」


「魔王討伐にも参戦して欲しいくらいだわさ~」


「確かにそうでつね~。彼等は傭兵集団とちて、南東で勢力を増すスルターンとの戦いを行っていまつ。魔王討伐にも周ってくれたらいいのでつけどね~・・・」


魔王があっても、まだ世界の情勢は複雑なのねぇ・・・


「あ、そうでち。せっかくだから、冷凍魔法で保存している卵もお酒のあてにしてくだちい」


っと、ヴァシリチカ金色の容器をもってきたのよさ。

中には黒いつぶつぶがびっしり詰まっていたのよさ。


「キャビアでち」


なんと、噂で存在だけは聞いた事がある食材が出てきたのよさ。

ヴァシリチカが言うには、ブリーニというパン生地の平べったいものに、キャビアとクリームと包んで食べると言うのだわさ。

これは、正直キャビアと言うのが初めてだったのだけど、海の臭いを感じたのよさ。

塩が濃く、でも、それが一緒に食べたクリームが緩和しているので、とても美味しいと思ったのよさ。


「これがキャビア・・・あたしは海とは無縁な人生を過ごしていたのだけどさ、海を感じたのよさ」


「喜んでもらえてよかったでち~」


っと、ふと横を見ると、ハーハさんはキャビアを親指と人差し指の間にちょこっと乗せて、パクリと食べ、ウォッカをくいっと飲んでいる。

酒飲みの本能がすぐに理解したね。

これはきっと、通のやり方だわさ・・・


あたしも真似してやってみたのよさ。

キャビアをぱくり、ウォッカをぐいっ・・・


「これは、上級者だわさ・・・塩をなめながら酒を飲むような、漬物の汁を飲みながら酒を飲むような、どうしようもない酒飲みの飲み方なのよ・・・あたしゃ~嫌いじゃないねぇ」


いいねぇ。

やはり異国の酒はその国の料理にあうもんだねぇ。

酒が先か、料理が先か、文化は飲む事食う事で育まれるんだねぇ。


「マジョリンさん。これも食べてほちいのでつ!」


そう言って、ヴァシリチカはキャビアよりも大きめの赤いつぶつぶが乗ったスライスバゲットをあたしにくれたのよさ。


「これは何かねぇ・・・?」


「これは鮭の卵、イクラでつ。美味いでつよ!」


どれどれ、1口パクリんちょ・・・


「おお、魚卵が口の中ではじけて、うま味が広がるぅ!!」


「気に入りまちたか?」


「まさに、最強で究極の魚卵だわさ・・・魚卵の生臭さ的な弱点とかまったく見当たらないねぇ・・・一番星とか宿しちゃってるような感じだわさ!」


イクラ、恐るべし・・・


「そんなに喜んでもらえると、こっちもうれちいでちよ~」


その後、あたしもしゃがんで踊る騎馬族の踊りを真似て見たり、ハーハさんとパーパさんはテーブルの上で踊りだしたり、はしゃいで楽しい夜を過ごしたのよ。


ヴァシリチカもお酒を飲んだけど、予想外にあまり強く無く、椅子に座ったまま寝ちゃったのよさ。

ハーハさんはそんなヴァシリチカに軽いひざ掛けをかけてあげたのよさ。


「マジョリンさん。こうしてあなたのような人と出会えて楽しい夜を過ごす。これだけでも旅を続けてよかったと思うのですの。この日の思い出は、ヴァシリチカにとっても永遠の財産となるのですの」


「ハーハさん、あたしにとっても財産だわさ。巡り合えた奇跡に乾杯だねぇ」


その後、あたしも寝室に戻ったのよ。

プロテイウスのいびきがうるさいけど、ハレルはぐっすり寝ているの。

でも、メメシアがベッドの上で座禅を組んで迷走していたのよさ・・・

後頭部のあたりから柔らかい光をほのかに放っているのよ・・・


「・・・戻りましたか」


メメシアは目を開け、あたしはちょいとびびったね・・・


「魔法使い同士、いい交流ができましたか?」


「あ・・・う、うん・・・」


「よかったですね。明日、早めに起きて、家の掃除など手伝いをしましょう。ただで泊めてもらっている身です。感謝せねばですね」


「そうだねぇ。おやすみメメシア」


「はい。おやすみなさいマジョリン」


あんなに騒いでいたからお酒飲んだことがばれたと思ったけど、何も言って来ないからばれてはいないのかねぇって、そういう事にしてさ、あたしはぐっすり寝る事にしたのよさ。


目を閉じて、思ったのよさ。

お酒を飲むなって言われても、お酒でつながる縁もあるし、いい事も多いのよ。

まあ、1人立つ後ろめたさ、1人立つコンプレックス的なものは感じていないわけじゃないけどさ。

それにあたしを呼んでいるのよ。

お酒が、浮き沈みする感情の中で、自分を保つために必要だってね。

あたしの内なる宇宙では、お酒が魂なのだわさ。




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