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第22話 ビール宮廷

『酒は友を呼ぶ』

―東の国の経典より―




今日の戦闘で疲れたのか、みんな宿で爆睡。


あたしは晩酌の為に宿を抜け出したのよ。


すると、街のビール醸造所に灯りがついていて、なんだか人が集まっていたのよさ。


近寄ってみると、ビール醸造所がビールを提供する食堂をやっていたのだわさ。


これは興味があると、今夜はここで飲む事に決めたのよ。


お客さんが多くて、相席ってなったのだわさ。


案内されて席につくと、向かいに真っ黒の衣装の見るからに魔法使いの女子が1人でビールを飲んでいたのだわさ。


「へえ、あなたも魔法使いなんだ~。あたしも魔法使い~」


っと、一応あいさつ代わりに声をかけて見たのよ。


「あ、ど、どうも・・・」


あたしはとりあえず、おすすめのビールと、おつまみにオバツダっていうチーズソースと、バケットを注文したのだわさ。


「は~・・・」


っと、向かいの魔法使いはため息をつきながらプレッツェルをちぎって食べている。


「どうしたのさ?なんか、暗いけどさ~」


「実は・・・仕事で上手くいかなくて・・・・」


「あ~、そういう事、あるよね~」


「一生懸命やったんですよ・・上手くいったはずだったんですよ・・・でも、最後の最後で全部台無し・・・」


「ありゃりゃ~、それは残念だわさ~。せっかく重ねた苦労が実らない事ほど辛いもんはないよねぇ~」


ビールとオバツダセットが来たのよ。


「その、ぐちゃぐちゃしたチーズの塊り、なんですか?」


「これはね~、バケットに塗って食べると美味しいんだよ~。試しにそのプレッツェルに塗ってみるかな?」


「え、いいんですか?」


黒い魔法使いちゃんは、ちぎったプレッツェルにオバツダを付けて、食べたのさ。


「あ、美味しい・・・」


「でしょ~。これ、おすすめなんだわさ~」


あたしもスライスされたバケットにオバツダを塗って、そして1口・・・


「おいち~!柔らかいチーズにみじん切りにしたツヴィーベル、これはバラバラに砕いたゆで卵も入ってるね~・・・キャラウェイの種の風味もあって、ビールが進む味だわさ~」


そう、こういうこってりの後のさっぱりしたビール、麦とホップの味と香りで洗礼された味があう!


「っくはぁ~!」


黒い魔法使いはじっとあたしを見ているの・・・


「あ、飲み方、下品すぎたかな~・・・」


「いいえ、とっても美味しそうに飲むもので、なんか見ててとてもいい気分になれます」


「そうかな~?なんか、照れちゃうさ~」


「そういえば・・・お名前、伺ってもよろしいでしょうか?」


「あたし?あたしはマジョリンってんだ~」


「マジョリンさん。私はテジーナ。よろしくです」


その後、2人で色々雑談して、放していると同じ魔法使いだからか、結構気が合うものでさ、とても楽しい会話が出来たんだわさ。


「マジョリンさん。ほら、ビール、空になっちゃいますよ。もう1杯、たのみます?」


「あ~、もう1杯行きたいけど・・・飲みすぎはねぇ、気を付けてるのよ~」


「そうなんですか」


「仲間でさ、禁酒主義のやつがいてさぁ~、酒飲むなってうるさいのさ。でも、特別に飲んでいいって許可される時もあって、その時、必ず飲み過ぎはダメって言うのよさ」


「でも、飲むなって言われてるのに、こっそりと飲みに来てるのにですか?」


「そう、飲むなは守れないけど、飲み過ぎるなだけはちゃんと守ろうって思っているんだわさ」


「へぇ~・・・なんだかんだ、いい仲間なのですね?」


「まあ、堅物だけどね~」


「私も、名残惜しいですが、そろそろおいとましようと思います」


「また会えるといいな~」


「そうですね。またお会いしたいです」


テジーナは席を立つと、小声で呪文を唱えたのよ。


「英知の領域、メンデルゾーン発動」


その瞬間、テジーナの姿が消えたのよ。


テーブルには、自分の勘定分の銀貨が置いてあったのさ。


「へぇ~、こじゃれた別れ方だねぇ~」


テジーナがどんな魔法で姿を消したのか、わからなかったし、気配も無いからもうこの近くにはいないという事だけがわかったのよ。


下手に後ろ髪ひかれるような事の無い、さっぱりとした別れだけど、これも悪く無いと思っちゃったのだわさ。





――――報復兵器第一号こと、キルシェケルンが倒された。


私はこの隕石ドラゴンを召喚する為にどれ程苦労して準備をして来た事か・・・


数名の兵士を倒し、森を焼き払うまでで終わってしまった・・・


破壊しつくすはずだった要塞の街は、何もなかったかのように平穏だった。


私は酒でも飲んでないとやってられない気分になった。


そこで、目についた醸造所で食堂をやっているお店に入った。


ビールを飲んで、プレッツェルをちぎってかじっていた。


でも、相席で気の合う魔法使いとお話しできた。


彼女はマジョリンって言って、とても明るく陽気な魔法使いだった。


でも、きっと、私の作戦が上手く行っていたら、彼女とは会えなかった。


複雑な気持ちでもあって、彼女と別れ際に時を止める魔法を使った。


性格には、自分だけが活動可能な時間を作り出す魔法。


まともなお別れの言葉は言えなかったけど、言わなくてよかった。


もしかしたら、別の所で彼女に被害を与える事もあるかもしれない。


でも、会えるならまた会って、お酒を飲みつつお話しがしたい。


そんな事を思いつつ、私はこの街を後にした――――




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