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第13話 真夜中のラウテ

『時よ止まれ、酒はいかに美味しい』

―ゲゲテの戯曲、セカンドより―




あたし達は、サビス卿領の片隅の小さな村を訪れたのさ。

その村の教会の神父さんからの依頼で、村の周辺に潜伏している怪物を討伐する事になったのだわさ。


村に到着すると歓迎されて、意気揚々と怪物を倒しに行ったはいいものの、怪物が潜伏している場所を特定できなくてさ、村の教会を拠点に捜し歩いてるけれども、手掛かりがないの。


村の人達に聞き取り調査をしてみても、大きな怪物を目撃したという話しは聞けても、何処へ逃げたのかはわからずじまい。


森の中を捜し歩いても手掛かりが無いのだわさ・・・


「こんなに手掛かりが無いとさ、本当に怪物はいるのかわらなんだわさ」


「マジョリン。確かにそう思えますけど、被害者が出ている以上、やはりどこかに潜伏していると思います。それに、やはり村の人達は怪物を恐れています。早く解決してあげないと・・・」


「ハレルは真面目だぜ。正々堂々とかかって来る度胸のねぇ野郎の相手をするのは無駄に疲れちまうぜ・・・」


「皆様、静かに・・・音がします」


「え?音?メメシア、なんの音が聞こえるのよさ。」


「水の音です。森の地面の下を流れる水の音です」


「水の音?しれがどうしたってんだぜ?」


「わたくしは僧侶として、様々な山で修行を行いました。山籠りの修行で大事なのは水源の確保です。怪物とは言え生き物である以上、潜伏するには水が必要です。水源を見つければ、近くに怪物が潜伏している可能性があります」


「え?僧侶って山籠りするの?」


「マジョリン・・・世の中はひ弱な聖職者に溢れてます。わたくしは違います。偉大なる神の子が人々の罪を背負う手助けを出来るように、心身を鍛えるのは当然です。・・・わたくしの話しはおいて、この先を進みますよ」


あたし達はメメシアの後を付いて森の中を歩いたのさ。


「水の臭いがします。この近くです」


かすかに何かが動く気配がしたの。


あたし達は身構えて、飛び出して行くと、恐ろしい光景が広がっていたのさ。


「いやーーん!」


「ばかーーん!」


「あほーーん!」


なんと、水たまりで水浴びをしていた髭面の男が3人いたのだったのさ。


男達に服を着させて、事情を説明したのさ。

彼等は木こりで、ひと働きした後に、汗を洗い流していた所だったのよ。

でも、結局、怪物の手掛かりがは一切なく、日も傾いてきたので、あたし達は虚しく拠点としている教会へ戻ったのさ。



☆☆



みんな疲れたのか、夕食をとった後、教会から借りている寝所へ到着するとすぐに寝てしまったのさ。


あたしはみんなが寝静まったのを確認して、教会を出て、酒場へ向かおうとした時だったのさ・・・


「あっ!」


なんと、神父さんと鉢合わせ。


「もしかして、神父さんも?」


「てへっ」


神父さんもこっそり酒場へ向かう所だったのだよ。

あたしと神父さんは意気投合し、2人で酒場へ向かったのだわさ。


「いらっしゃい。神父さん、またお忍びですか?」


「忍んでも、村にいる人はみんな知ってるけどな」


酒場は笑い声で満たされた。

大変な事件が起きているけれど、村人達も息抜きが必要なのさ。

ずっと警戒し続けていたら、体を壊しちゃうのよ。

メメシアみたいに強い人なんて、滅多にいないのだわさ。


あたしは神父さんと席に着くと、村の人達が寄って来た。


「魔法使いさんも大変だよ。今日はオレ達のおごりで飲んでくださいよ」


っと、村の人達があたしにビールを御馳走してくれたのだわさ。


「もうしわけないねぇ~。ありがたく頂戴しますのよさ~」


この村のビール、しかもただ酒。

1口・・・

お・・・これは・・・


「ライ麦のビールかねぇ?」


「お、流石は魔法使いさん!大正解ですよ」


「なんかね、香りが違うんよ。ライ麦らしさを感じるのよさ。そして、独特なとろみを感じるのよさ。なんていうんだろ・・・ライ麦畑に捕まえられた気分なのよ。気分なのさ」


「おーい!マスター!魔法使いさんが褒めてくれてるぞ~!」


「バカ。恥ずかしいだろ。大声で言うな」


厨房から顔を出したシャイなマスター。

あたしの顔を見て、ひょっこり厨房に隠れてしまったのよさ。


「ここのマスター、いつもあんな感じだから、気にしないでくださいね」


ここの村人達は妙に人懐っこい。

いや、昼間に見かけた時はみんなうつむいて、仕事に集中しているって感じだったなぁ・・・

きっと、仕事をする時とはめを外す時の切り替えが大きいんだろうねぇ。

ビールがライ麦であるように、多分、ここの土地は小麦がそこまでよく育たないのかもしれないのよ。

だから、一生懸命に働いて、夜に酒場で思いっきりはっちゃけるのかもしれないねぇ。


「魔法使いさん、これ、オレからのサービス・・・ビール、褒めてくれてありがとう」


店のマスターが、料理を御馳走してくれたのよさ。

葉っぱ野菜、コォルの酢漬けや、オーブンで焼いた肉団子、リンゼボーネという豆と切った豚肉の腸詰めのブルストと色々な野菜を煮込んで作ったシチューが出て来てさ、ビールにあういい肴だよ。


多くてさ、1人じゃ食べきれないから、みんなで分け合ったのよ。

美味しい食べ物を、幸せな気分を分かち合うみたいで、なんか妙なうれしさを感じたんだわさ。


特に、オーブンで焼いた肉団子、豚肉のミンチに刻んだツヴィーベルと、ハーブを混ぜ、丸くしたものをじっくりとオーブンで焼いたやつ。これが肉汁がぎゅっと詰まってて、とっても美味しく、ビールにあうんだな。


気分を良くした神父さんは、弦楽器のラウテを弾き始め、自作の歌を歌いだしたんだ。

村の人達は多分、朝の礼拝の説話を聞く時よりも熱心に聞いていただろうね。


人と人の距離が近い、田舎らしい人付き合いのいい所だけを体感しちゃったんだわさ。


あたしはこうやって、村の人達と触れ合って、早く事件を解決してあげなくちゃなって思ったのさ。




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