第105話 最後の騎士
『泥酔を知らぬ者は真の酒飲みにあらず』
―作家シェイクステア―
明朝、日が昇ると同時に大空を割るかの勢いで大きな声が鳴り響いたのよ。
あたし達は慌てて壁の上に上がって、街を包囲する魔王軍を見渡したんだわさ。
やつらは攻める気満々のようだわさ。
あちこちでブイジーネやクラリオンが吹き鳴らされている。
包囲する魔王軍が隊列を組み、前進してきたのだわさ。
トレビレンシス市中の鐘が鳴らされ、防衛側も戦闘態勢を整えるのよ。
弓矢、鉄砲の射程内に魔王軍が入った瞬間、防衛側の兵士達が一世に矢を放ち、銃が火を吹いたのよ!
魔王軍の先頭に立つ兵士達が倒れるも、魔王軍はひるまず、雄叫びをあげ、屍を踏み越えて駆け出したのよさ!
バリケードの前に盾を持った魔王軍の兵士達が集まり、人の上に人が乗り、人間階段を作り出し、その上を兵士達が昇ってバリケードを越えて来たの!
防衛の兵士達は槍を手に、侵入する兵士達に立ち向かうんだわさ!
オークの兵士は矢を身に受けながらも、バリケードを撤去し、兵士達を進ませるのよ!
「俺達も行くぞ!」
あたし達は戦線に向かったんだわさ!
そしたら、バリケードを飛び越えて、鎧を身にまとった騎士達があたし達に向かって突撃してきたんだわさ!
「メッサーヴィントホーゼ!」
あたしは魔法で刃の竜巻を巻き起こし、騎士達を吹き飛ばそうとするも、騎士達はその竜巻を突き抜けて来たのよ!
ハレルが神の雷を放つも、騎士達は雷を身に浴びながらも雄叫びをあげて突き進んでくる!
プロテイウスが大剣を抜き、突き進んでくる騎士達に向かって行ったんだわさ!
激しくぶつかる金属音!
プロテイウスは馬上の騎士を鎧ごと切り裂いた!
プロテイウスの脇を通過した騎士は、メメシアが握ったメイスの大きな一撃を頭に受け、鎧の隙間から赤い液体を巻き散らしながら、馬が迷走するのよ!
「すげえ・・・魔法より強い2人だわさ・・・」
「マジョリン!ぼさっとしてないで、なんとかしなさい!」
怒られちゃったんだわさ・・・
あたしは幻覚魔法を使って、歩兵達が存在しないバリケードを見て、退却させるように仕向けたんだわさ。
攻撃じゃないけど、効果的なんだわさ!
すると、空から妙な音がするのよさ。
見上げると、黒い何かが空を飛んでいたのよ。
「え?砲弾?」
その黒い何かは急にあたしらの目の前に落ちて来たんだわさ!
ドガンと大きな音を立て黒い何かは大地に足を踏みしめ、石作りの道の石が衝撃で少し浮かんだのよ!
それは、鉄腕ダッツだったのよさ!
「魔法による妨害、阻止させてもらう!」
鉄腕ダッツは、大剣を手にしたんだわさ!
その大剣は、プロテイウスの剣よりも遥かに大きい、それはまさに鉄塊なんだわさ!
「出やがったな!決着を付けさせてもらうぜ!」
プロテイウスはダッツに斬りかかる!
物凄い速さで剣と剣がぶつかり合う!
もはや、人間の領域を遥かに超えた戦いなんだわさ!
プロテイウスとダッツが斬り合う中、オークの兵士達が入り込んできたのよ!
防衛に当たる兵士達の一部は退却をはじめるし、あたし達はオークと戦うしかなかったんだわさ!
すると、激しい激突音の後、血まみれのプロテイウスが吹き飛ばされて民家の屋根に突き刺さったんだわさ!
「プロテイウスが・・・負けた!?」
これは不味いと思った時、ダッツの前にメメシアが立ちふさがったんだわさ!
「勝負など、遊びのような戦いはここまでです。わたくしがあなたを滅します」
ダッツは大剣を振りかざす!
「っは!?生意気にほざきやがって!オレのケツをなめろ!」
メメシアはメイスを投げ捨て、精神統一をはじめたんだわさ・・・
そして・・・
「アド・マイオレム・デイ・グロリアム・インクェ・ホミヌム・サルテム!」
メメシアの背後にAMDGの文字が浮かび上がり、後光を放つ光輪が頭上に出現した!
「汝の罪、悔い改めたまへ」
ダッツの大剣がメメシアに向かって振り下ろされたのよ!
でも、メメシアはそれを拳で受け止めたんだわさ!
メメシアの拳を中心に、光の輪と十字架が出現し、強い光を放った瞬間、ダッツは吹き飛ばされたんだわさ!
しかし、ダッツは素早く起き上がる!
そして、背中から火を吹きだし、その推進力を使って猛突進!
メメシアは避ける素振りなんてせず、受け止める姿勢を見せるのよ!
激しくぶつかって来るダッツを両手で受け止めるメメシア!
地面をえぐりながら後方へ押し下げられるも、メメシアはダッツの体を持ち上げ、そのまま体をのけぞらせ、ダッツを地面に激突させたのよ!
地面に突き刺さったダッツをメメシアは握り拳の一撃を与えたの!
拳が激突した瞬間、白く輝き、ダッツの体は宙に浮いたんだわさ!
ダッツは体制を立て直し、大剣で斬りつけまくるも、メメシアは素手でそれを受け流して行く!
そして、ダッツの剣が地面に深くめり込んだ瞬間だったの!
「これでお終いです!」
メメシアは激しくダッツを殴りまくる!
ダッツの鎧に拳の跡が無数について、時間差で拳のめり込みが十字架の形に変わる!
その衝撃でダッツの体は崩れて行ったんだわさ!
「あなたの肉体は頭と胴体の一部のみ・・・それでも黒魔術を使ってアーティファクトで身を固め、戦う為に生きている。まさに戦いに魂を穢された魔獣のような人間です」
ダッツはもはや戦闘不能。
「まさか・・・聖職者に負けるとは・・・」
「いいえ。あなたはこの世の掟を破った為に掟に従って滅ぶまでです」
ダッツはバラバラに砕け散ってしまったのよ。
それを見たオーク達は慌てて逃げ出したんだわさ。
「逃がすわけがありません」
目にも止まらぬ速さで、逃げるオーク達の前に先回りするメメシア!
その聖拳で次々とオーク達を殴り殺したんだわさ!
「土は土に、灰は灰に、塵は塵に。アーメン」
オークの屍の山が築き上げられていたんだわさ・・・
メメシア、怖すぎる・・・




