第98話 主よ人が望まぬ絶望よ
『酒は国家なり』
―太陽王ウル14世―
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ルザーの議会2日目の議会出席も議会は平行線を辿って、決着はつかなかった。
そして最終日、議会に立たされたルザーに、判決が言い渡された。
「この2日間の議会に置いて、ルザー氏、あなたの言動は異端者と認定されました。ここにて、神聖帝国皇帝より、ルザー氏に下される判決を述べます」
議会はシーンと静まり返った。
「ルザー氏、あなたには、帝国アハト刑を言い渡します!」
議会席からは判決に対する罵声と賞賛、判決のやり直し要求など、様々などなり声が響いた。
小槌が激しく打ち付けられ、静粛にとの張り裂けるような声がしても、この怒号は止まる事を知らず、まさに大荒れとなった。
「所で、帝国アハト刑って・・・」
ルザーはこっそりと弁護士のジョナスに伺った。
「村八分の帝国版だよ。帝国八分と言った所だな。君はこの国から追放されるんだよ」
訪ねてみたのだが、ルザーは帝国アハト刑がなんだか元から知っていた。
ただ、この判決が下された事、覚悟はしていたが、実際にそうなった時に、理解が追い付かなかったのだろう。
「だが、これが試練に立ち向かう事なのだろ?」
ルザーは議会を去り、宿舎に戻った。
そこで、国外に出るまでの期間などが詳しく言い渡されるのを待つ事になった。
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愚者姫を倒した後、魔王軍の主だった行動は無かったんだわさ。
せっかく集まった勇者連隊も、デイトリーが巨人を倒したぐらいで、目立った活動は無かったのよ。
でも、ケーフィルヒルトは約束通りに、功績を上げたデイトリーに褒美を与えたんだわさ。
「デイトリーよ。魔王軍配下の巨人を4人、よくぞ倒してくれた。褒美をやるぞ」
薔薇の冠を4つ、デイトリーの頭に乗せて、そして頬に4回キスをした。
「まあ、せっかくの褒美だもんな。ありがたく受け取ったぜ」
っと、デイトリーは美女のキスを受けたのに、あまりうれしそうじゃ無かったのよ。
彼もまた、よくわからないやつなんだわさ・・・
続いて、メメシア・・・
「・・・えっと」
「・・・約束なのですよね?」
ケーフィルヒルトは妙な顔をしているんだわさ。
「・・・キス、いる?」
「正直、いりませんが、約束は守らねばなりません。さあ、わたくしに接吻をするのです」
ケーフィルヒルトは恐る恐るメメシアの頬に唇をよせた・・・
「その・・・女同士でよろしいのでしょうか?」
「これは約束を守るだけの事、問題は無いです」
ケーフィルヒルトは意を決したんだわさ。
大きく息を吸って・・・
ぶちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅ!!
メメシアの頬に53回キスをしまくった!
そして、薔薇の冠53個がメメシアの頭の上に乗った!
まさに、薔薇の塔だった!
「これで、約束は果たせましたね」
ケーフィルヒルトは顔を真っ赤にしているのよ・・・
「もう、お嫁に行けない・・・」
「いいえ、嫁ぐときは胸を張って嫁いで下さい。神のご加護があらんことを。アーメン」
なんか凄い事が起こっているのに、顔色一つ変えないメメシア・・・
「とりあえず、まだ議会は閉幕していません。引き続き街の警備を行いましょう」
っと、メメシアは建物の外に出ようとするも、頭に乗った53個の薔薇の冠が突っかかって外に出れない・・・
でも、メメシアはのけぞって、無理やり外に出たのよ!
よく、冠が落ちないと、感心したんだわさ・・・
外では、ちょうど聖歌隊が歌っていて、メメシアはその聖歌に感動したのか、薔薇の冠を聖歌隊の頭に1ずつ乗せて行ったんだわさ・・・
聖歌隊の人達は薔薇の冠を思いっきり頭に押し付けられたもので、痛そうだったのよ。
4、5人程、頭から少し出血したのだわさ・・・
「まるで、これから十字架を背負わされるような気持ちです」
「喜んでもらえたなら幸いです」
それは、喜んでいるのかねぇ~・・・
突然の行為に恐怖しているようにしか見えないのだわさ・・・
メメシアの頭に1つの冠が残ったんだわさ・・・
「その薔薇の冠、頭につけていて痛くないのかねぇ?」
「この痛みが祝福です」
マゾだわさ・・・
まあ、宿に戻って、薔薇の冠は取って、壁に勝手に飾ったんだけどねぇ・・・
メメシアはフリーダムだわさ・・・
今日も、これと言って、何も無く過ぎたのよねぇ~。
夜になって、あたしゃこの街の行きつけの店に行ったんだわさ。
今日はどんな新大陸の野菜の料理をあてにお酒が飲めるかと、わくわくしながら店に入ると、店の隅っこにテジーナの姿があったんだわさ。
「やっほ~、テジーナじゃ~ん!また会ったんだわさ」
「マジョリンさん・・・」
テジーナはなんだか、いつもより元気が無かったんだわさ・・・
「おやおや、どうしたんだい?しょんぼりメランコリックしちゃって~」
「マジョリンさん。あの・・・」
「店員さん。とりあえずビールだわさ」
「は~い」
「あっ・・・」
「ごめんごめん。それで、どうしたのだわさ?」
「えっと、はい・・・その・・・知り合いで、そんなに仲がいい人じゃないし、むしろ嫌いな部類に入る人だったんですが、その人が亡くなった・・・みたいなんですよ・・・」
「ありゃ、それはそれは・・・ん?仲は良く無かったのかねぇ?」
「はい。ですが、その人が亡くなって、なんか、色々考えてしまって、それで勝手に落ち込んでます・・・その人がいなくなった事が悲しいんじゃなく、自分が、なんというか・・・自分にその人を当てはめて考えて、自分がこの世から消えたらどうなるのかなんて考えてしまって・・・最低ですよね?」
「う~ん・・・それは~」
「はい。ビールお待ち!」
「ありがとだわさ!」
「あっ・・・」
「失礼だわさ。そうねぇ~、まあ、それで自身を見つめ直すような事になって、ネガティブな感情になる事自体に罪悪感を覚える必要は無いと思うんだわさ。お亡くなりになった方とどんな関係だったかはわからないけど、少なからず影響を与えている事、それはその人が生きていた証拠でもあるんじゃないかな?」
「生きていた証拠ですか・・・」
「それと、テジーナは優しいんだわさ。優しいから、嫌いな人が亡くなっても苦しい思いをするのよさ。相手の事を無意識に自分の状況に照らし合わせている点、相手に寄り添おうとしているんだわさ。それは思いやる気持ち、優しさなんだわさ」
「優しさですか・・・自己中心的な考えかと思っていました・・・」
「大丈夫。自己中心的なやつ程、自己中心的であると思っていないのさ。今は複雑な感情で満たされているだろうけど、全ての複雑は単純の積み重ねだから、1つ1つの気持ちをほどくように考えれば気持ちが少し、楽になると思うのよね。不安は明らかで無い所に抱くものだからねぇ」
「そうですね・・・マジョリンさん。ありがとうございます」
「まあ、あたしゃ人の相談に乗るのが苦手で、変な思いさせちゃったらごめんだわさ」
「いいえ。変に考え込んでしまう私の悪い癖なんだと思いました。それと、大事な事、忘れていました」
テジーナはグラスを手に持ったんだわさ。
「故人の魂の安らぎを祈って」
あたしも軽くグラスを上げて、
「テジーナが嫌いと言いつつ嫌いになりきれなかった故人の魂の祝福を祈って」
その時、ふと愚者姫の姿が脳裏に浮かんだんだけど、なんでここであいつを思い出したんだろうねぇ~・・・
もしかして、あんな変わったやつが、例の知り合いだったのかもねぇ~・・・




