第96話 愚か者の末路
『深酒は愚か者共の美徳である』
―神学者ビーコン―
議会へ出席する諸侯もそろい、そして、神聖帝国皇帝カロリンガー5世もウォーム市に到着したんだわさ。
帝国の未来を大きく左右する帝国議会はようやく開かれたんだわさ。
まあ、あたし達はその議会会場周辺を警備していて、中で何が話されているのかなんてわかりゃしないんだけどねぇ~・・・
ちょこっと耳に挟んだ程度の話では、神聖帝国内の軍事力を整備するような話しが行われるみたいなんだわさ。
トケツスタンとの決戦に備えてとも、帝国を不在になりがちな皇帝が神聖帝国の治安維持の為とも言われているみたいなのよさ。
諸侯がこうもごちゃごちゃと権力を持っていて、それぞれの統治を行ってるのをまとめるなんて、無理難題なんだろうねぇ~。
もしかして、未来の学者は神聖帝国を神聖でもなければ帝国でもないなんて言うかもしれないねぇ~・・・
「マジョリン。何か、不穏な空気を感じます」
「どうしたんだいメメシア。あたしゃオナラなんかしていないんだわさ」
「そういう空気じゃありません」
メメシアは立ち止ったんだわさ。
「この広場、普段は多くの人が行き交うのですが、今日は人1人としていませんね・・・」
そう言われると、確かに人っ子一人いないんだわさ。
まっすぐな広場でさみしいんだわさ。
「それは、イッヒがズィー達をここで始末する為に、外界と遮断したからなんだよぉ~」
それは、いつぞやの魔女だったんだわさ!
「あんた!逆恨みしてあたしらを狙っていたってわけなのかねぇ!?」
悪しき魔女は不気味な笑みを浮かべているんだわさ。
「イッヒは愚者姫と言うんだよぉ~~!!覚えてね!!まあ、覚えた所で今日、死ぬんだけどさ!!」
それは、負けるやつのセリフだわさ。
これは、勝ったね!
「今日はイッヒの特別な友達も連れてきているんだよぉ~!イッヒはボッチじゃないのさ!」
こいつ、一方通行の友達関係作りそうなのよ。
相手は友達って思ってない的なやつさ。
「さっきから、心の声でチクチクと攻めるなよぉ~~!!」
「あらら、聞こえてたのねぇ~」
「もういい!やっちゃって!!」
愚者姫の声に52人の武装した男達が姿を現したのよ。
「あたしの魔法で姿を隠していた魔人達なんだよぉ~!普通の人間よりも強いのだ!ズィー達は今日、ここで死ぬ!」
そして、52人とは別にもう1人、真っ黒な鎧を身にまとった大男が現れた。
プロテイウスが反応したんだわさ。
「おいおい、嘘だろ?・・・あいつが魔王軍に下ったのか?!」
「プロテイウス。あの鎧の男を知ってるのかねぇ?」
「ああ。あいつは狂暴な騎士、鉄腕ダッツと呼ばれている野郎だぜ」
鉄腕ダッツ?
なんか、村でも作りそうな名前なんだわさ。
「そこにいるのは鋼鉄巨人と呼ばれたランツクネヒトの中でも2倍手取り、ドッペルゾルドナーで名をはせたダルベルトでは無いか?」
ダッツの声に、プロテイウスは剣を抜いて構えたのよ。
「あいつはオレが仕留める・・・」
「よいだろう。かかってくるがいい」
ダッツは黒い布に包まれていた大剣を披露させたのよ。
それは剣というにはあまりにも大きくて、まるで鉄塊って感じだったんだわさ!
プロテイウスはダッツに斬りかかりに行くも、ダッツは大剣を振り回し、プロテイウスはなかなか踏み込めないようなんだわさ。
「ズィー達はイッヒと遊ぶのよ!死ぬまで止まぬ最後の遊戯を!」
愚者姫が魔法を使ったようで、空から翼の生えた化け物たちが舞い降りて来たんだわさ!
あたしとハレルで空から舞い降りて来る化け物達を攻撃するのだわさ!
その間に、メメシアが52人の魔人達に囲まれてしまったんだわさ!
危ないって思った時、メメシアはメイスを手に、次々と魔人の頭をカチ割って行ったんだわさ!
「いかに強力な力であろうとも、身の鍛錬で得たものに比べればはるかに劣る!卑屈な手段で得た力など実力にあらず!かりそめの力に酔いしれた罪を抱えて裁かれろ愚か者共め!アーメン!」
メメシアは強いんだわさ・・・
魔人共は次々とメメシアのメイスに打たれ、倒れて行くんだわさ・・・
すると、愚者姫が弓を手にしたんだわさ!
そして、魔力の塊りを放ったのよ!
魔力の塊りは矢の形状をし、メメシアに刺さった!
「メメシア!!」
「イッヒの勝だ!!」
愚者姫は次々に魔力の矢を放ち、メメシアに突き刺さるんだわさ!!
「浅いですね。あなたの曲った心では、わたくしの体を完全に射抜く事は出来ないでしょう」
メメシアは気合いで刺さった魔力の矢をかき消したのだわさ!
「あなたを倒すのに、神の力は不要!」
メメシアは左手2本指を立て、右手の握りこぶしの人差し指を少し浮かせる感じの構えをしたのよ。
そして、術を唱え始めたのだわさ!
「オン!!アラキシャ サジハタヤ ソワカ!」
メメシアの背後に燃え盛る光輪が出現するのよ!
愚者姫は魔力の矢を連続で放つも、メメシアの目の前にたどり着く事無く、かき消されて行くのよさ!
「ランバ!ビランバ!キョクシ!ケシ!コクシ!タハツ!ムエンゾク!ジョウラク!コウタイ!ダツイッサイノシュギョウショウゲ!」
次々とルーン文字とも違う文字が宙に浮いて出現するのよ!
愚者姫は見えない力に切り刻まれ続け、真っ赤な霧を吹き上げているのさ!
「オン!ドドマリ ギャキテイ ソワカ!!」
愚者姫は人の声とは思えない金切り声を張り上げ、そして木端微塵に弾け飛んだ!
大空の雲を突き抜けて、一筋の強い光が広場を照らしたのよ!
すると、大空を舞う怪物達は燃え尽きるように姿を消し、倒れた魔人達も、愚者姫だった残骸も、焼けて跡形も無く消えてしまったんだわさ・・・
「土は土に、灰は灰に、クズはクズに。アーメン」
愚者姫の髪の毛1本すらこの世に残さなかったメメシアは、とんでもないやつなんだわさ・・・
「どうやら、引き際のようだな」
プロテイウスと激しく剣を打ち合っていたダッツは、プロテイウスを大剣で払いのけると、足から炎を吹き出し、そのまま空に飛んで行ったんだわさ!
「に、逃げ方のクセが凄いんだわさ・・・」
プロテイウスは息切れぎれだったんだわさ!
「大丈夫?」
「っく、くやしいが・・・あと少し長引いていたら、オレはだめだったかもしれねえ・・・」
プロテイウスが打ち負けそうになるなんて、ダッツはとんでもないやつなんだわさ・・・




