表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

101/123

第95話 静かなる潜伏者達

『良酒は、ただただ沈黙という形で飲む』

―哲学者パイデッカー―




――――我々、魔王軍の帝国議会妨害部隊は各々潜伏した。

本当に各々潜伏したもので、まったくと言っていい程、連帯なんて取れるわけが無いのだ。


「なんだよ!イキっておきながら潜伏とかみみっちいぜ!」


っと、意気揚々としているのは増援で加わった4人の巨人だった。

彼等は出て来たからには爪痕を残したいようで、無計画にも諸侯の隊列を見て、突撃して行ったのだ。

私はこっそり、彼等の背後を追って、事の始末を見守る事にした。


「おい、待て巨人共!」


っと、4人の巨人の前に現れたのは1人の男だった。

無謀にも程がある・・・


「オレの名前はデイトリー。貴様らちょうどいい相手だ!さあ、まとめてかかって来い!」


デイトリーと名乗る男は剣を抜いた。

巨人たちも各々、武器を構える。

そして、勝負は一方的な攻勢からはじまった。

デイトリーはあっという間に2人の巨人を斬り倒してしまったのだ。

残る巨人は槍を構えた巨人と、二刀流の巨人。

ここから物凄い速さで武器と武器がぶつかり合う激しい打ち合いが続いた。

徐々に槍を手に持つ巨人は全身に切り傷を増やし、ついには地に膝をついた。

その瞬間をデイトリーは逃さず、巨人の首をはねたのだ。

残るは二刀流の巨人のみ・・・


「お前、ずっと守りに徹していて、全然踏み込んできやしねえで、ムカつくんだよ!」


デイトリーは勝手に怒り始めた・・・

そして、大きく息を吸って、真っ赤な炎を噴き出した!

巨人は体が炎に包まれ、それを払おうとするも、その隙にデイトリーは斬り込んでくる!

巨人は深い傷を負って、その場から逃げようとするも、背後から留めの一撃を受け、巨人は地に伏して、動かなくなった。

いや、痙攣してる。


「ふう、こんだけ打ち合っても刃こぼれ一つない、オレの愛剣エッケザックスは最高だぜ!よーしよしよし」


っと、愛剣を布で撫でるデイトリー・・・

これ以上は近寄らない方がよさそうだ・・・


私はこの事を報告しに行こうとした時だった。


「あ!!」


デイトリーが突然大声を上げる!

ばれたか!?


「この巨人の御遺体、どうしよう・・・でけえし重いし・・・」


あ、なんだ。

ただのバカか・・・



☆☆



私は4人の巨人が倒された事をジッヘンハイム様に知らせるも、彼はむしろ邪魔者がいなくなったと言うだけで、そっけない態度で追い出された。

監視役のパイパー軍団長は、事を深刻に受け止めた様子だった。

その後、街の何処かに潜伏しているであろう愚者姫に知らせる為に、私はウォーム市に潜入した。

どんなに厳重な警備でも、私の魔法を使えば余裕で入れるんだけど、そこからが問題だった。

愚者姫のやつがどこにいるのか見当もつかないのだ・・・

そうもしている内に、日は暮れてしまった・・・


「そこの魔法使いさん」


しまった、声をかけられた!

一般人に手を出すのもあれだが、潜伏の為に消えてもらうしか・・・


「やっぱり、テジーナだったのよ」


マジョリンさんだった。


「えっと、お、お久しぶり・・・です」


「まさかこんな所でまた会うなんて、まさに運命だわさ~」


ふう、マジョリンさんは怪しんでいる様子は無い・・・


「せっかくだし、飲みに行こうよ~。あたしゃ、いい店を見つけたんだわさ」


「そうなのですね。せっかくだし、行ってみたいです」


私は怪しまれる事の無いように、いつものようにマジョリンさんに接する事にした。

その店は、見た目は普通の飲み屋だったの。


「ここはねぇ・・・新大陸原産の実験的な野菜料理が出て来る変わったお店なんだわさ!」


「新大陸の・・・?!」


マジョリンは店員さんに話して、何かおすすめを出してくれるように交渉している・・・

店員さんは今日はとっておきのものがあると言って、厨房に走って行った。


しばらくして、グラスに注がれた深い紫色のお酒が出て来た。

店員曰く、


「これは、新大陸のベリー系の果物、ブルーベリーから造ったワインだよ。甘いけど美味しくできたよ」


「ブルーベリー?ラズベリーとか、グースベリ―みたいなやつですかね?」


「面白いじゃん。飲んで見るんだわさ!」


恐る恐る1口・・・


「甘いけど、さっぱりしていて、美味しい・・・」


「確かに、普通のワインとは全然違う味わいなんだわさ。香りも、他のベリーとは何か違う感じなのよ」


「これは面白いですね。マジョリンさん。いいお店、見つけれて羨ましいです」


マジョリンはとっても満足げな顔をしている。


「今日の実験料理はこれです」


っと、店員が持って来たのは、何か赤いぐちゃぐちゃしたものがかかったパスタだった・・・


「この、かかっているのはなんですか?」


「これは、この赤い野菜で作ったソースです」


っと、調理前のその野菜を店員は見せてくれた・・・

真っ赤で、リンゴとも違う変な実であった・・・


「これは・・・確か、トマトって言う名前の野菜ですね。色々試してみて、火にかけて煮詰めてソースにするのが凄く美味しいと思ったから、今回はパスタにかけてみたんですよ」


恐る恐る、私は自分の小皿にそのパスタをよそって、そして、1口・・・


「え?美味しい・・・なにこれ!?」


初めて食べたこの味、酸味が程よくあって、濃厚な味わい、うま味・・・これが、新世界の力!?


「やばいねぇ・・・これは、食文化が変わるんだわさ・・・トマトは食文化を変えるねぇ!間違いないと思うのよ!それこそ、元からそこにあったかのように!」


「納得です。新世界の野菜は・・・世界を変える力を持っています!」


「おや、飲み物が空いちゃったんだわさ。店員さん。次は強いの~」


「あ、私も同じのを」


すると、店員が持って来た酒、それは薄く黄色がかった色をしたお酒で、独特の酒臭さが出ている、飲む前から強い酒だと言うのがわかるお酒だった。


「これは、ラム酒と言って、サトウキビの汁を蒸留して作るお酒です。大海原を航海する船員らは、この酒を飲んでいるそうですよ」


「こんな強い酒を・・・」


「水で割って飲むのが普通みたいですよ」


っと、店員は水の入ったグラスも一緒に置いたの。

でも、マジョリンさんはラム酒をストレートで飲んで、水をチェイサーにしたの。


「ひゃー!キクーっ!強い酒、もう喉の奥から胃のあたりまであっちっちなんだわさ!」


「マジョリンさん、流石、強いですね!」


「まあ、お酒そのものの味を楽しみたい時、あるじゃん?」


ドヤ顔のマジョリンさん。


「ラム酒多飲!」


「なんですかそれ~」


この人を見ていると、私が悩んだり苦労している事も、ちっぽけに感じて、気が楽になるのはなんでだろう・・・

彼女の凄い所は、新世界の野菜とか、そういう新しいものを純粋な気持ちで楽しめる所だ。

彼女から見た世界はどれくらい広いのだろうか。


夜も遅くなったし、彼女とはそこで別れた。

また、会えるのだろう。

とても、うれしい気持ちだ――――




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ