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一話 仲良くしたいのですっ!!

今回は短めです。

四話目くらいに長くなります。


 ダンスの時間が好きだった。

 だって、婚約者が唯一わたしに触れてくれる時間だったから。



 国益の都合でわたしたちは婚約関係を結んだ。

 わたしリーシア・エルムガング子爵令嬢が6歳、彼エルバート・ヴァルグナー伯爵子息が8歳の時に初めての顔合わせで一切目を合わせてくれなかった彼は、それから今までの10年もの間一度だってまともに会話もしてはくれなかった。

 そんなわたしたちの関係を知っている人たちは「政略結婚の見本」とまで言ってくる。

 たとえ政略結婚でも、もう少し歩み寄る態度を見せるのが通常なのでは?と思ったこともあるけれど、男女の馴れ合いを一切しないわたしたちは確かに「強制された結婚」の見本に見える、のかもしれない。


 もう一つ、彼とは別にわたし個人にも一つの呼び名がつけられている。

 それは「ぼんやり令嬢」だ。

 わたしは昔から目が眠気で微睡んでいるような形をしており、どう頑張って意識してもキリッとした顔つきになれないのだ。

 よく「眠いの?」と聞かれるが、決して眠い訳では無い。これがデフォルトなのだ。

 そんなぼんやりしていそうな見た目のわたしとは違い、婚約者のエルバート様は切れ長の鋭い目つきをしているのが特徴的だ。

 涼やかなお顔にまるで怒っているみたいに釣り上がっているその目は、ぼんやりとしたわたしの目とちょうど釣り合いが取れているのでは、と安心しているのは内緒だ。


 けれど、やはり彼のその切れ長の目がわたしの目と合うことはこの10年間ついぞ無かった。

 仕方のないこと、と納得はしていたけれど、せめて普通の婚約者のように息を合わせて手と手を取り合うダンスの時間だけは譲れなかった。

 ダンスのあるパーティの存在を知れば、わたしはすぐに彼を誘っているのだ。彼は必ず一言目には「忙しい」と言って断ってくるのだが、わたしが「どうしても」と食い下がれば彼は嫌々な態度で応じてくれた。

 こんなところで彼の優しさを享受するわたしは、それが嬉しくてたまらないのだ。



 話は変わって、16歳の誕生日を迎えたわたしは貴族の子息子女が通う貴族学園への入学が義務付けられた。

 すでに2年前から学園に通っている彼は「大して面白みのないつまらない場所だ」と言ってはいたが、わたしは楽しみで仕方がなかった。

 新しいお友達ができるのはもちろん、わたしの知らない彼の新しい一面が知れると思ったからだ。

 わたしがそう素直に彼に告白すれば、彼はきっと顔を背けたまま顰めっ面をするに違いない。

 容易に想像できる彼の姿に少し頬を緩ませながら、わたしはまだ見ぬ学園へと思いを馳せるのだった。



「リーシア様って子爵令嬢なんですかっ? 全然そうは見えないです! お姫様とか王女様とかそこら辺に見えますよっ!」

「……ありがとう」


 褒め言葉?を告げられてわたしは素直にお礼を言った。いくら初対面とはいえ、言葉が砕け過ぎじゃないか、って心配してくれる幼馴染のユーリエはあからさまに不機嫌な態度を彼女に取った。


「貴女、突然話しかけてきたと思えば失礼じゃない?」


 もし本当にお姫様や王女様がいても「そこら辺」という言葉遣いは良くない。

 彼女は相手のためにもそう言って反省を促そうとしているのだ。結構分かりづらいが彼女はとても優しい心の持ち主なのだ。


「ユーリエは本当に優しいのね」

「…………今そんな感想を言うのはアンタくらいよ」


 彼女は照れてしまったのかそう言ってプイッと顔を背けた。

(うん、優しい上に可愛いのよね)


「あっ、あのっ!アタシ全然そんなつもりじゃなくてっ!!」

「…………貴女まだいたの」


 幼馴染は人見知なのかつっけんどんとした態度でそう言い放った。失礼な相手には失礼で返す。きっとそれは「他人の振り見て我が振り直せ」という先人の格言に基づいた行動なのだろう。

(わたしの幼馴染は本当に優しいのね)


「アタシっ、リーシア様と仲良くしたいのですっ!!」

「あら」

「うぇ」


 突然のお友達候補宣言に驚いて目を丸く……、はなっているかはわからないけれど、とにかくわたしが驚いていると隣から嘆くように唸る声が聞こえてきた。


「ユーリエ?」

「……何でもない」


 気になって彼女に聞いてみるが、彼女自身はただ首を横に振って誤魔化した。

 それに納得しようと思って、彼女から視線をそらし、今もなお目の前で小ウサギのように震える少女を見る。

 ピンクブロンドの髪をフワフワと靡かせ、まるで昼空を思わせるライトブルーの瞳を潤ませてこちらに嘆願してくる少女は、とても愛くるしい見た目をしていた。

(なんだか妹みたいね)

 生まれてこの方妹どころか姉兄弟もいたことはないが、もし妹がいたらこんな感じだろうか、と勝手に妄想をしながらわたしはにこやかに少女に答えた。


「そう言ってくれて嬉しいわ。学園に通ったらお友達が欲しいとは思っていたもの」

「……っ!ありがとうございます!アタシも嬉しいです」


 こうして、わたしと彼女はお友達になった。

 隣で未だに苦虫を噛み潰したような顔をしている幼馴染が、その会話を聞いていたことをわたしは知らなかった。


始まっちゃいましたね。

相変わらずタグがわからない。

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