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2.冒険者ギルド

 ハウザーさんに案内され、冒険者ギルドにたどり着いた。僕よりもはるかに大きな両扉が開いていてそのまま中に入る。


「少し待っててくれ」


 そう言われたので暇つぶしがてら周りを見渡す。どうやら二階があるみたいだ。一階には机や椅子が置いてあり、受付や掲示板のようなものには人がたくさんいた。

 ふと、受付のほうからハウザーさんに手招きされた。


「冒険者ギルドにようこそ。ハウザーさんから話は聞きました、冒険者登録をしたいんですね?」


「あ、はい」


 受付の女性の言葉を聞きながらも僕の意識は別のところに向いていた。


「どうしましたか?」


「いえ、その」


「あぁ、この耳ですか?」


 そう、彼女の耳は人間の物じゃなかった。創作物でよく見るエルフ耳だったのだ。


「なんだ、ヒノくんはエルフを初めて見たのか?」


 当たり前だ。エルフなんて日本、いや地球に存在しないんだから。


「そう、ですね。噂には聞いていましたが……」


「そうなのか。もしかして、エルフは駄目だったか?」


「だ、大丈夫です」


「そうか。俺はギルドマスターに用事があるから、また後でな。宿を教えてやる。それじゃリナアルア、頼む」


「わかりました」


 彼女は頷き、ハウザーさんは二階へと上がって行った。


「よろしくお願いします。日野です」


「申し遅れました。私、エルフのリナアルアと申します。それでは、冒険者ギルドについて説明しますね」


「はい」


 彼女の話を要約すると、冒険者ギルドというのは依頼者と冒険者をつなぐ互助組織らしい。冒険者ギルドにはランクがあり、登録すると最初は一番下のEランクから始まり依頼を受けていくとランクが上がっていくというシステムだと。


「一番上はSランクですね。S、A、B、Cのランクに上がるにはそれぞれ試験があります。そのため、Dランクで止まってしまう冒険者が非常に多いです」


「なるほど」


「聞きそびれたのですが、ヒノ様はギフトをお持ちですか?」


「はい、持ってます」


「ふむ。ギフト持ちならばDランクから始められますが、どうしますか?」


「Dランクから、ですか?」


「ええ、ギフト持ちは希少ですからね」


 ギフト持ちが希少? ってことはギフトをいくつも持っている僕は目立ちかねないな……。女神のお願いをするにあたって目立つのはよくないかも。


「いえ、Eランクからコツコツ頑張ってみようかと思います」


 まずは情報を集めないと。怪しまれたらおしまいだ。


「そうですか、わかりました。では、こちらに名前を書いてください。契約書です。代筆は必要ですか?」


「大丈夫です」


 なんか思ってたのと違うな。よくある創作物だと血を垂らしたら冒険者登録が出来たり、チンピラが現れてそいつを倒したりするけど……。やっぱり現実は違うんだね。

 ちなみに契約書には人に迷惑を掛けないだとか依頼を失敗したら評価が下がるとか、あとは問題があれば冒険者ギルドの判断で冒険者登録を取り消すことがあるみたいだ。まあそりゃそうだよね。


「書きましたか?」


「はい」


「ありがとうございます。それでは冒険者カードを用意するので少々お待ちください」


 そう言って奥に行くリナアルアさんの銀髪に見惚れているとハウザーさんが戻ってきた。


「惚れたのか?」


「え!? そんなのじゃないですよ!」


「冗談だ」


 なんなんだろう、この人。


「お待たせしました。あら、ハウザーさん。もう用事は終わったんですか?」


「あぁ、まあな。カードの発行は終わったのか?」


「ええ。こちら、冒険者カードです。お渡ししますね。冒険者カードについて説明は要りますか?」


「念のため、お願いします。」


「わかりました」


 冒険者カードとは冒険者であるということを証明するもの。カードにはランクが書かれており、依頼を受ける際にはカードを見せないといけないらしい。依頼にも推奨ランクがあるので、依頼を選ぶときには気を付けろとのこと。


「今の僕にできる依頼ってありますか?」


「そうですねぇ……常設依頼の薬草の採取や今の時期なら孤児院からの依頼で子守りがありますね。あとは冒険者の皆様があまりしたがらない下水道の掃除などがありますが」


「なるほど。常設依頼とは?」


「その名の通り、常にある依頼のことです。薬草はいくつあっても足りませんからね」


「そうなんですね」


「薬草依頼を受けるのなら、二階にある資料室で正しい薬草の取り方や薬草の特徴が載った本を読んでみてください。評価や依頼達成時の報酬が上がったりしますから」


「何から何までありがとうございます」


「リナアルア、話は終わったか?」


「ハウザーさん。はい、終わりましたよ」


「そうか。じゃあ行くぞ、ヒノ君。もうすぐ夕暮れだ。おすすめの宿を教えよう」


「もうそんなに時間が? 分かりました。ありがとうございます」


 外に出ると空が赤く染まっていた。そのままハウザーさんの後ろについて行くと二階建ての建物が見えてくる。看板にはドワーフの土塊亭つちくれていと書かれていた。ドワーフ?


「おやっさん、いるか?」


 奥から出てきたのはガタイのいい立派な髭を生やしたおっさんだった。これがドワーフ? ドワーフって言ったら鍛冶屋をしてるイメージしかないんだけど。


「おう、なんだ? あぁ、アンタか。どうしたんだ、久しぶりじゃねえか。元気だったか? 近況報告がてら酒盛りでもしようや」


「酒盛りは今度な。今日は宿の紹介に来たんだ」


「宿の紹介? あぁそうか。分かったぜ。お前さん、名前は?」


「日野です」


「ヒノか。うし、ハウザーさんの頼みだ。今日は無料にしてやるよ」


「え! それは悪いですよ!」


「いいからいいから! どうせアンタお金持ってないだろう?」


「え?」


「見た目でわかるっての。ほら、鍵。二階に上がって一番奥の部屋だ。晩飯は一階のここで食べられるからな!」


「あ、ありがとうございます」


 強引だなぁ、この人。



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[気になる点] なんで薬草は栽培によって安定化できていないのですか?
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