第22話 教え子とのキス
俺は魔法剣を構え、剣を一閃させて敵を薙ぎ払う。
一応、俺は白魔道士ということになっているけれど、剣による攻撃と魔法攻撃の両方を扱える。
上手く使えば、一人でこの量のモンスターでもさばききれるかもしれない。
残念だけれど、実菜たちは戦力としては頼りにできない。実菜たちは女子高生としては強いほうだが、相手のモンスターたちが規格外の強さだ。
女教師のはるかは実菜たちよりも強いだろうが、プテラゴブリン複数を相手にするとあっさりと負けてしまっている。
玲奈やはるかたちはモンスターに襲われたせいで装備どころか衣服も奪われ、一糸まとわぬ姿で俺の後ろで震えている。
俺は実菜の腰を抱いたまま、魔法を使う。
どのみち、俺は他の冒険者と連携して戦うことができない。
それなら、孤立無援で戦っても同じことだ。
プテラゴブリンが廊下から部屋へとなだれ込んでくる。
炎を放射する魔法<フレアレイ>を俺は使い、敵を薙ぎ払う。 この魔法は本当に便利で強力だ。黒魔道士だった愛華から教わった思い出の魔法でもある。
二十体ほどのプテラゴブリンを一瞬で倒すと、腕の中の実菜が「すごい!」と叫ぶ。
「わたしたちだと全然、歯も立たないのに、二十体まとめてすぐに倒せるんだ……!」
「まあな。だが――」
数が多すぎる。倒しても倒してもきりがない。自衛軍の到着まで持つかどうか……。
俺にも体力と魔力の限界がある。
<橋川なら無敵だろ! やっちまえ!>
<いくらなんでも無理があるんじゃないか?>
<橋川さん……無事でいて>
五分、十分、二十分……と時間が経つ。そのあいだ、廊下や窓の外からは女子生徒たちの悲鳴がひっきりなしに聞こえてくる。
このままだと実菜たちも同じ目に遭う。それだけは絶対に避けたい。
だが、俺の体力は落ちてきていた。それよりまずいのが魔力の枯渇だ。十分な威力が維持できない。
せめて魔力が回復できれば……。
突然、新型のモンスターが現れた。見たことがないタイプだが、人型に触手のようなものを生やしている。
俺は目の前のプテラゴブリンを倒すために魔法を使っていて、魔力の枯渇のせいで倒しきれず、一瞬だけ反応が遅れた。
その隙にモンスターが俺に向けて触手で攻撃を繰り出す。
「しまった……!」
このままだと防ぎきれない。俺と実菜もろとも攻撃が直撃する。
けれど、そうはならなかった。
舞依が攻撃を防いでくれた。防御用の大盾を拾い、俺の前に飛び出したのだ。
「あたしでも進一さんのお役に立てるんです!」
<舞依ちゃん勇気あるな!>
<でも、防げても一撃だろ>
そう。舞依の力では防げても一撃のみ。
「舞依、避けろ!」
俺が叫ぶが遅かった。次の瞬間には、舞依は触手に絡め取られ、拘束されてしまった。
「あっ……進一さん! きゃああっ」
裸の舞依の身体に触手が這う。舞依は綺麗な赤い髪を振り乱し抵抗するが、無駄だった。
「いやっ、見ないで……進一さんっ!」
「くそっ。今助ける!」
「あたしのことは気にしないで、戦ってください!」
舞依が懇願するように言う。その姿が、死んだ愛華に重なった。
「見捨てられるわけないだろ!」
舞依は弱々しく微笑んだ。
「最後に進一さんの役に立てて、良かったです」
このままだと舞依は死ぬか、拉致されてモンスターの慰み者になる。
だが、どうすればいい?
せめて魔力さえあれば……。
実菜が俺を見上げる。
「あたしにできること、何かない? あたしも舞依を助けたい、進一の力になりたい!」
俺は考えた。一つだけ実菜が力になれることがある。
だが、それは実菜を道具のように扱うことで、ためらわれる。
けれど、手段は選んでいられない。俺が負ければ、次は実菜の番。
俺は実菜にあることを告げた。
実菜は顔を真っ赤にすると、こくんとうなずく。
「いいよ。進一のためなら、あたし、何だってする」
そう言うと、実菜は目をつぶり、その赤く瑞々しい唇を俺の唇に重ねた。
つまり俺は教え子にキスされたのだ。魔力は相手から奪うことができる。その手段はいろいろあるあが……たとえばキスで行えるのだ。
「ちゅっ……」
実菜が情熱的に俺にキスをした。大胆で濃厚なキスに俺はくらりとする。
少女の魔力が流れこんでくるのを感じた。かなり強力な力だ。
やがて実菜は俺を解放した。魔力を奪われた実菜は荒い息遣いで頬を紅潮させていた。
そして、とても恥ずかしそうに俺を上目遣いに見る。
「ファーストキス、だったんだからね?」
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