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第20話 女教師に迫られる??

 無事に実菜と玲奈も仲直りしたようだ。


 まあ舞依とアリサという残り二人がどう思っているかはわからないが、少なくとも表面的にはかなり彼女たちのチームの雰囲気は良くなりそうだ。


 一限目からダンジョン探索関連の授業らしく、俺の出番はあるのだが……その前に実菜たちは朝礼がある。

 そのあいだ教師に俺は挨拶をしておくことになる。


 実菜は俺を職員室に案内してくれた。そして俺と腕を絡めて、上目遣いにこちらを見る。


「もっと一緒にいたかったのに」


「すぐ会えるだろ?」


「でも……」


 実菜は名残惜しそうにする。その実菜を、舞依と玲奈が両脇から抱えて連れ去る。


「はい。そこまでだからね、実菜?


「勝手にイチャイチャするのはダメです」


 実菜が「そんな~」と言いながら引きずられていく。

 その様子がおかしくて、俺は思わず笑ってしまった。


 さて、気を取り直して職員室だ。といっても、通常の職員室ではなく、ダンジョン科の教員が集まる準備室のようなところだ。旧校舎の二階にある、狭そうな部屋だ。


 俺が入ると、すぐにダンジョン科の教員が出迎えてくれた。一人しかいない。


 女子校だということもあるし、そもそも女性比率の高い社会になったからか、女性の教員だ。

 

「お待ちしていました」


 彼女は立ち上がると、満面の笑みを浮かべた。

 かなり目を引く美人だ。しかも、若い。夏菜子よりたぶん少し年上で大人な美人だが、20代前半だろう。


 だが、派手すぎる。髪は金色に染めていて、タイトスカートの丈はかなり短い。

 しかも、ブラウスの胸元が大胆に開いていて、大きな胸を露出させている。


 どうして女子校にこんなエロエロな教師がいるのか……? いや、男子校にいたらもっと問題だが。


<えっろ!>


<こんな先生がいたらやる気がみなぎる!>


<ハレンチ過ぎてダメだと思います!>


 配信を再開しているので、コメント欄も大盛り上がり。

 うふふっ、と女教師は微笑んだ。


「私は曽我はるかと申します」


 俺が椅子に腰掛けて自己紹介をする。そして、「曽我先生は……」と言いかけると、彼女は指を横に振った。


「私が歳下ですから、はるか先生とお呼びくださいな」


「いや、歳下でも同僚を名前で呼んだりしませんよ?」


「可愛い後輩の夏菜子さんとか美人の女上司の佐緖さんとか名前で呼んでいるんでしょう?」


「呼んでません。というか、なんで彼女たちのことを知っているんですか?」


「そうですね。私は橋川先生の大ファンなんです」


「は?」


「これまでの配信は全部見ていますよ。情報もいろいろ調べました。出身地から家族構成まで何でも存じています」


 俺は愕然とした。

 まさか高校の教師に俺の動画を見ている人間がいるとは……。


<ストーカーじゃん>


<でも、もう橋川は芸能人みたいなもんだから>


<登録者数も五百万人になっているしな>


 その五百万の登録者数のチャンネルで、この謎のやり取りが配信されているんだが……。

 はるか先生は目をきらきらと輝かせる。


「サインをいただけませんか……?」


「そ、そのぐらいいいですが……」


「やった! 先生をこの学校にお招きしたのも、私なんですよ? 佐緖さんと話をつけました」


 そういうことか……。道理で話が進むのが早いと思った。はるか、上戸、そして実菜の三人が結託していたわけだ。


 はるかは俺に胸の谷間を見せつけるように、前かがみになる。俺を誘惑しているのか……?

 自意識過剰かとその瞬間は思った。

 

 だが――。


「私、強い男の人が好きなんです」


「は、はぁ。そうですか」


「そして、いま、この世界に橋川先生ほど強い人はいません」


「そうでもないと思いますけど……?」


「いえ、間違いありません。つまり、橋川先生。私と結婚を前提にお付き合いを……してください……!」


 突然の告白に俺はぎょっとする。

 この妖艶な美女がいきなりとんでもないことを言い出した。


「冗談はやめてください」


「これが冗談だと思いますか……?」


 はるかは俺にしなだれかかり、その豊かな胸を押し付ける。

 そして、俺の耳元で「私を食べてくださって良いのですよ?」なんてささやく。


<うはあああああ!>


<据え膳食わぬは男の恥!>


<というかBANされないのか……?>


<NicoチューブはR18もOKだし>


 とはいえ、さすがにまずい。

 俺は遠隔操作で配信を切った。


 だが、それははるかの思うつぼだった。


「ふふっ。これで誰にも邪魔されませんね」

 

 はるかは顔を赤くして、ブラウスを脱ぎ始める。

 赤い大胆なブラが露わにになる。


「曽我先生、やめてください。クビになりますよ?」


「ダンジョン科の教師は人手不足ですし、モラルの崩壊したこの時代では簡単には解雇されませんよ」


 まあ、ダンジョン崩壊後の世界ではこのぐらい目くじらを立てることではないのかもしれない。女性冒険者を襲って奴隷にするような奴もいたしな……。


「橋川先生は婚約者の方を失っているのですよね?」


「……それが?」


「それ以来、恋人もいらっしゃらなかったようですし……私が慰めて差し上げます」


 そして、はるかは俺の膝のうえに乗ろうとした。

 けれど、俺はそれをやんわりと手で押し戻す。


「そんなことで俺の傷は癒えませんよ」


 はるかは「ふうん」とつぶやいた。


「それなら、あの子たちならあなたを救えますか?」


 それが実菜たちのことを言っていると俺はわかった。

 実菜たちは俺の弟子だ。もちろん、手を出すつもりはない。


 だが――俺はたしかに愛華のことを引きずっている。それを解決する方法なんて思いつかない。

 はるかは何かを言いかける。


 だが、そのとき部屋の扉が勢いよく開かれた。


「橋川さん!」


 顔を真っ赤にした実菜と、その仲間の玲奈、舞依、アリサがそこには立っていた。








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