蜂蜜と練乳
「バナナにかけるなら蜂蜜と練乳どっちがいい?」
偶然にも休みが重なって、久々に三人そろっての夕食の後。カルスティンがキッチンで淹れてきたコーヒーを手にリビングにやってきた時だった。L字型のソファに仰向けで寝そべりくつろいでいたテオバルトが突然そのようなことを言い出したのは。
「なんだ?いきなり……」
デザートが欲しいのだろうかと首を傾げるカルスティンに対し、同じソファで本を読んでいたエレノアは呆れたとばかりに溜息をついた。
「思春期の子供でもあるまいし……」
「お!意味わかったんだな、エレノア」
エレノアの返答にテオバルトはにやりと口角を持ち上げた。
「これな。この間、夜勤の時に紅玉で話題にあがったんだよ」
「……仕事中に随分くだらない話を……」
「あぁ!そういうことか!」
カルスティンも何か察したように頷く。
「夜勤でテンションがおかしくなるとそんなことを言い出す輩は現れるな。確かに」
「蒼玉でもそんなこと話すのですか!?」
「……練乳は桃がいいって話もあったな……」
信じられないと言わんばかりに目を見開くエレノア。真珠では出てくることのない話題に驚きを隠せないのだろう。
「え?だって女性もいますよね?訴えられませんか?」
「さすがに女性がいたら話題にはしないが……」
「基本男所帯だからなぁ」
少々気まずげに口にするカルスティン。テオバルトは悪びれることなく言うと、にやにやと意地悪げに笑いながらエレノアにと視線を向ける。
「で?意味がわかるお上品な真珠騎士団の騎士様はどちらがお好みだ?」
「……用意する相手によります」
エレノアはちらりとテオバルトに視線を投げてから、手にした本を閉じてローテーブルに置いた。
寝そべるテオバルトに近づいて、伸ばされた長い足の鍛え抜かれた大腿四頭筋の上に手を添えた。それからもうひとつの手で、ツンと唇に人差し指をあてる。それから少しずつ指を下へと下げていく。
「くだらないその辺の輩であれば踏みつぶしますが、貴方達なら……」
さらりと羽織ったシャツの上をエレノアの細くしなやかな指がなぞってっていく。胸骨から張りのある固い大胸筋の間を通って引き締まった腹筋までをなぞり、鼠径部の中心辺りでピタリと止めた。そして……。
「蜂蜜と練乳、どちらでも美味しく頂きますよ?」
息がかかりそうな距離でそう言って、下から見上げるようにして妖艶に笑って見せる。
「ははっ!上等!」
楽しそうに声を上げたテオバルトは近くにある相手の顔をグイっと引き寄せ噛みつくようにキスをする。
「たっぷり食わせてやるよ。どっちもな」
欲の孕んだ獰猛な笑みを口元に刻むテオバルトに、エレノアも楽し気に声を上げる。
「ごちそうになります」
笑いながら、相手の唇に静かに口づけた。
書く気が起こればそのうち続きがムーンに上がるかもしれません。
ネタはある。一応。