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第十七章「崇拝子ちゃんの悪魔契約プレゼン」

 ダンサーは熱く語りました。

 まず友人の死にまつわる話を語り、自身の経験を語りました。

 この国には沢山の不正があり、警察も司法も国民を守らない事への憤りを語りました。

 ダンサーはそれら悪とされるものと戦う為に機械の体を求めたのです。

 法で裁かれる事も無く、のうのうと生きる悪を殺して断罪し、悪を見逃す警察や裁判官も殺して、心正しき警察官や裁判官や政治家だけを世に残し、世界を正常化させるのだと言いました。

 一通りの演説を聞き終え、悪魔王様は閉じていた目を静かに開き、ダンサーを見据えて言いました。

「完全にテロリストの発想だな」

 完全にテロリストの発想ですね。

 悪魔王様の容赦なきツッコミに、正義のテロリストを自称するミセスクインも「あっはっはっは。これは耳が痛い」と笑っています。

「しかも自分が法整備などのかじ取りや、政治的交渉をする訳でもなく、そのくせ自身の独断で善悪と正誤を決めて人を殺すのか。テロリストは少なくとも、戦争に勝った後の政治的責任を負う事が大義となるのだが、それも無いのでは客観的にはただの殺人鬼と見分けがつかん。今、汝が言った事を簡単にまとめるとそういう事になるが、何か我に誤解があるだろうか? できれば注釈付きで頼む」

 ダンサーは悪魔王様の言葉を否定しませんでした。というよりも、ダンサーの思想の問題点を、今初めて詳しい事情を聴いた悪魔王様に秒速で指摘されて、ダンサーは恥ずかしい気持ちになっているのですが、機械の体が幸いして顔色を読まれない事に少しだけ安堵していました。

 それでもダンサーの決意は変わりません。

 短絡的な発想だった事については反省しましたが、悪を殺して数を減らさなければ、世の中はいつまでも良くならないという着地点だけは間違っていない筈なので、それを拠り所に話を進めようと考えていました。

 悪魔王様はしばらく思案された後で、崇拝子ちゃんに命じました。

「崇拝子。お前がこの問題を解決しろ」

「にゃ!?」

「……何だと悪魔王。今はオレの機械の体を取り上げるかどうかという話だろう。契約元のお前ではなく、眷属の娘に判断を任せると言うのか」

「すまんなダンサーよ。汝としては不本意に感じるやも知れぬが、崇拝子の勉強、いや、成長の機会だ。少しつきあってくれ」

「あ、悪魔王様―。正直、あちきはこういうのは苦手ですにゃー」

「大丈夫だよ。そんな事は言われんでも分かっとる」

「言われんでも分かっとるんですにゃ!?」

「だがな崇拝子。お前はここ数日で、実に沢山の経験を積んだ。みょうちきりんな思想に偏った集団との戦闘もあったな。そうして得た知見を総動員してみよ。『ダンサーの願いの本質』を看破し、悪魔崇拝に勧誘せよ。失敗してもいい。成功すればボーナスがつくぞ」

「やりますにゃー!」

 ボーナスと聞いて崇拝子ちゃんはやる気を滾らせました。しかも失敗してもいいと上司からのお墨付きです。リスクが無いのなら、思い付きでも何でもいかようにも試せる絶好の機会です。さすがは悪魔王様です。部下の扱いをよく心得ておられます。

 既に忘れている方もいらっしゃるでしょうが、この物語は、崇拝子ちゃんが人々を悪魔崇拝に誘う事が主題です。邪魔をする神を打倒した今、ついに彼女は本来通りの活動をする時なのです。

 崇拝子ちゃんはダンサーに向かい問いました。

「ところでダンサーさん」

「……何だ」

 ダンサーは少し緊張して答えます。事前に得ていた、そしてこれまで行動を共にして観察して得た崇拝子ちゃんに対する正直な感想は「アホの子」でしたが、それ故にどんな突拍子もない質問をしてくるか予想ができません。下手な事を答えて恥の上塗りをする事だけは避けたいという思いが、ダンサーに冷静さを取り戻させました。

「ダンサーさんは、ダンサーさんが思う『悪い人』っていう判断をどうやってするんですにゃ?」

「……何を聞いてくるかと思えば、そんなもの、そいつの仕事ぶりを見て、聞いて、結果を見て判断するに決まっているだろう」

「ではそのやり方で、一人の人間を『悪』だと断定するのに何時間くらいかかりますにゃ?」

「……え。いや、さすがに何時間とはならんな。少なくとも数日だ」

「ドンナーさん。警察や自衛隊ってどれくらいの人数がいるんですにゃ?」

「え? そうだな、合せて51万人といった所か。警察だけで言うなら26万前後だ。あくまで俺様が最後に確認した時の数字だが」

 急に話をふられて驚きつつも、ドンナーは崇拝子ちゃんに答えてくれました。

「一年は365日しかないですにゃ。仮にその判断速度で、月に四人を殺しても、年間48人しか殺せないですにゃ。十年で480人。警察だけでも全国で26万人くらいいるそうだから、十年かけても勢力を一割も削れない計算になりますにゃ。十年で4千8百人殺してもまだ一割に遠いですにゃ。しかも、殺されただけ警官も裁判官も補充されますにゃ。補充しないと国家が機能しなくなるから。場合によっては、裁判はAIによる判断で行われるようになる可能性もありますにゃ」

「な!?」

 ダンサーは度肝を抜かれました。崇拝子ちゃんをアホの子と思っていましたら、具体的な数字を持ってきました。

「ダンサーさんの言う、心の正しい人だけを残して後は殺すって言う考えは尊重しますけど」

 尊重しちゃうのですね。

「その思想は実現不可能なんですにゃ。『無差別に虐殺する』なら、時間はかかっても達成が可能だけど、『選んで殺すのは無理』がありますにゃ。一人を判断するのに何日もかかるんじゃあ拠点も必要だし、そんな事をやっている間に、警察は採用基準を下げて勢力を拡充できますにゃ。ダンサーさんは目的を達成するまでの間、住居の確保や、エネルギーの問題を解決する為に悩み続ける事になりますにゃ。いや、ダンサーさんなら悩みなんかどうでもいいって言いそうですけど、そういう事じゃなくて、そういった自分が生活していく上での最低限の資源を管理できないと、行動そのものが頓挫するって事ですにゃ」

「はかったな悪魔王! さては崇拝子ちゃんにテレパシーか何かで助言しているだろう。そんな事をするくらいなら自分で喋ればいいだろうに!」

 ダンサーはキレました。

「いや。汝がそう思うのも無理はないが、悪魔の王の誇りにかけて、我は崇拝子に助言をしていない」

「な、ん、だ、と……」

 ダンサーは絶句しました。

「これは崇拝子の名誉の為にも付け加えるが、こいつは物覚えが致命的に悪いが、一度覚えてしまった事なら子供にも理解できるように話す事ができるくらいには地頭がいい。家庭教師のアルバイトをしていた事もあるくらいだぞ」

 崇拝子ちゃんはかつてのサバイバル生活を通して、住居の確保や焚火に使う薪や、食料や清潔な水を得る事の大変さを知っており、その経験則を背景とした言葉には自信と説得力がありました。事情を知らないダンサーが悪魔王様の計略と思ったのも無理はありません。

「……続けますにゃ。つまり、ダンサーさんの提示したプランで目的が達成できる場合とは、警察がごく少ない被害しか出していない初期の段階で、自分達のしている非道に気づき、反省して、ダンサーさんに殺されないような品行方正、清廉潔白な警察になる、が実現した時だけですにゃ。でもダンサーさん自身による声明がない状態では、警察が自力でそれに気づくのは難しいですにゃ。さっき悪魔王様が言ったように、ただの殺人鬼がいるって思われるほうが自然ですにゃ。でも声明を出すと、それを足掛かりに所在を特定される危険がありますにゃ。監視カメラのデータや、インターネットを使った痕跡や、利用した郵便局など、いくらでも情報源はありますにゃ。ダンサーさんはやがてゆっくり潜伏場所を取り囲まれて、取り押さえられる未来しかないですにゃ。ダンサーさんなら警察の包囲なんか力づくで突破できそうですけど、もしかしたらその中には正義感を持っているのに命令で動員された警察官も居るかもしれないですにゃ。そして、ダンサーさんはその人たちを瞬時に見分けて判断する事が出来ないですにゃ。もし、そういった場合に限って警察官への無差別攻撃を正当化するなら、その瞬間にダンサーさんの信念は、都合のいい時だけ声高に正しさを主張する政治家や、その辺の民衆と同じレベルになってしまいますにゃ。でも、きっと多分おそらく、ダンサーさんはそんな人たちと同じになる事に我慢できない。ですにゃ?」

 ダンサーは膝から崩れ落ちるように座り込んでしまいました。ガシャアンと音を立てて。機械の体ですから、人間のように放心して脱力するような事は無い筈ですが、もしかしたら人間であった頃の記憶から、無意識に体にそのような命令を発したのかもしれません。

「だ、だが、明らかに悪人だけを殺していけば、その内、それに気づいて反省する者が出てくるかも……」

 ダンサーは言いかけて、既にその論は否定されている事に気づいて口をつぐみました。そのような失態をしてしまうのも、予想外に与えられる情報量が多くて上手く整理できていないのです。

「それにねダンサーさん。世の中には、決められた場所にゴミを捨てるって事すらできない人がいるんですにゃ」

「……え?」

「どんなに生活が苦しくても税金を払える限りは取り立てられる。そうして高い税金を払っても、一向に住みやすくならない。迷惑な人間と戦って解決しようとしても、迷惑を返されるだけで生活の向上に繋がらない。それで仕事を失う事もある。自給自足の生活をすれば全部解決するけど、国内でそれをやろうとしても資金がなくて取り掛かる事が困難。学校は教科書の中身を教えるだけで生徒に本当に必要な事は何も教えないから、社会で必要とされない人が増えていく。さっき言ったような、簡単な決まりも守れない人も居る。もしかしたら迷惑な客にキレすぎて神の力を望んだ小売店の従業員とかいるかもしれないですにゃ。決まりを守っている人の不満はいつまでも解消されないし、国は解決の為に動いてくれない。そんな社会でも生きて行かないといけないのだから、少々の理不尽があってもみんな我慢して、いつしか我慢が過ぎて、慣れてしまって、次には更なる我慢を強いられる……」

「何が言いたい?」

「にゃ。……そんな社会で、警察や裁判官といった一部の人だけを標的に攻撃して、その一部がそれなりに維持していた治安が乱れたら、今度はそういった我慢の限界にきた人たちが暴れ始めますにゃ。というか、さっきまでの神の力を得た人たちの暴動は、つまりそういう事ですにゃ。自分を抑え込んでいた力以上の力を得たから暴れるのなら、抑え込んでいた力が無くなったら、やっぱり暴れますにゃ。中にはそれなりの学歴がある筈なのに大人になってもいつまでも自己肯定感が得られなくてカルトに染まって暴挙に出る人も居たかもしれないですにゃ。ダンサーさんが治安維持組織を攻撃して萎縮させると、また今回みたいな騒ぎになって犠牲者が出るかも知れないですにゃ。それで警察や司法によって生み出される被害者とどっちが多いか、それは起きてみるまで分かんないですけど、そうなる事は、ダンサーさん的にはオッケーなんですにゃ?」

 かくして。トナカイ教団九天使、破壊のダンサーと呼ばれた男の自尊心は、粉々に破壊されてしまったのでした。

 さすがにここまでやられるのかと、なりゆきを見守っていた一同は、ダンサーに同情します。

「でもねダンサーさん」

 なに!? まだ話が続くのか。もうやめてやれよ。ダンサーのライフ的なものはとっくにゼロだよ。おいおい悪魔かこの娘。しまったー。そういえば悪魔だったー。と、元九天使の面々に動揺が広がります。ミーちゃん達も動揺していました。ただ悪魔王様だけが、静かに見つめていました。

「あちきはダンサーさんの本当の願いは、『警察や司法の腐敗を正す事』ではないと思うのですにゃ」

「……どうしてそう思った?」

 ダンサーはもう、さっきから崇拝子ちゃんに疑問を返す事しかできていません。

「だって、それなら神に願うのは『機械の体』じゃなくて『心根の腐った人間を自動で殺してくれるドローン』の筈ですにゃ」

 元九天使の多くが、えげつない事言いだしたぞ。この娘。という感想を抱き、ミーちゃん連合の全員が、凄いわお姉ちゃん。天才。という感想を抱きました。

「ダンサーさんはきっと、無意識に理解していたんですにゃ。見つけた悪い人間を殺す事は簡単だけど、それじゃ悲劇の形が変わるだけで、悲劇を回避する事には繋がらないって。だから滅多な事じゃ殺されない機械の体を望んだんですにゃ」

「いや、だからそれは、悪と戦う為に必要だった訳で……」

「ダンサーさんの友人を死に追いやった警官や、その後の調査で分かった悪徳裁判官などが許せないのなら、その人たちだけ殺せば解決したのに、それをすぐにしなかったのは、それじゃ解決にならないと思ったからの筈ですにゃ。つまり、ダンサーさんは冤罪で人が苦しむようなシステムや、そのシステムに守られて好き勝手に『悪人』がのさばっているのが許せなかったのですにゃ。だから打倒すべき目標は人ではなく、システムですにゃ。暴力を背景に言う事をきかせようと思っていたのなら『悪人』は次から次へと生まれてくるって前提の筈ですにゃ。そうでないなら、今分かっている『悪人』だけでも殺し尽くしている筈。でも理論的に『悪人を殺し尽くす事は出来ない』から、破壊のダンサーという『継続する恐怖』で状態を変えようと思った。ここで間違いに気づければ良かったけど、ここで迷走に入っているんですにゃ。『悪人』をのさばらせているのはシステムなんだから、システムを変える発想が必要だったんですにゃ」

「はははは。段々分かってきたぞ。崇拝子ちゃん。さては、社会を監視するシステムを、例えば、あらゆる場所にカメラを置いたり、顔認証によって行動を監視し、無罪を主張できる社会構築を目指せと、その為の機械の体だと、そう言いたいのだろう? そんな物、とっくに政府が進めているよ。政府が進めているプロジェクトなんだから、どうあってもそれは政府にとって都合のいい物にしかならないさ。どうせ社会に不満を持つ人間を炙り出して、何かしら罪状をつけて犯罪者に仕立て上げ、言論を封じる手段になるだけだ!」

 確かに。昨今は映像の加工技術も向上し、監視カメラの映像記録自体が捏造された物かどうか判断する事が難しいという問題があるようです。ダンサーの言う通り、行き過ぎた監視社会では、「その監視システムは正しいという前提ありきで運用」される為、悪意ある者がシステムを掌握した場合、多くの被害が出る事が予想されます。

 しかし、崇拝子ちゃんは笑顔でこう返しました。

「違いますにゃ。『公務員を厳しく監視するシステム』を作る為に、ダンサーさんが政治家になればいいのですにゃ」

 ダンサーはしばらく、意味が分らないという雰囲気を漂わせました。見守っていた他の者たちも理解する速度に差はあるものの、概ね同様の反応を示し、段々と理解が追い付いて、ざわざわとどよめき始め、悪魔王様は「そうきたか」と言ってにやりと笑いました。

「悪魔王様も言ってましたにゃ。『国民が政治を監視できないのは衆愚政治』だって。だから物理的に監視させるのですにゃ。被告に殆ど選択する自由のない国選弁護人のシステムも、より自由に選べるよう改善し、有罪無罪に関わらず費用を全て税金で解決するようにして、国民の人権が守られるよう最大限配慮した社会を作る政治家になるのですにゃ。普通の人がこれをやると多分暗殺されますにゃ。警察は暗殺した人間の味方になるだろうから、ろくな捜査もされずに、事件にすらならない不審死として扱われて終わりですにゃ。でもダンサーさんなら、滅多な事じゃ殺されないですにゃ。最初の選挙で当選するのは難しいだろうけど、街頭演説で好き勝手絶頂に世の腐敗を民衆に伝え歩くのはきっと気持ちいと思いますにゃ。それで、公務員を監視するシステムのモデルケースとして、まず自分の家や動向を監視するシステムを作って、国民の皆さんに監視してもらうのですにゃ。政府も迂闊な事をダンサーさんに仕掛ける事が出来なくなりますにゃ。そんで、これが上手くいって、最終的には警察も政治家も含めた全ての公務員の就業状況が監視されるようになれば、不正を行えば誰かしらの目に止まるようになってやりにくい世界になりますにゃー。映像の捏造問題は、ライブ映像を見た誰かしらが現場をおさえて証人となる事で解決させますにゃ。今どきは誰もがスマホを持っている時代だから、複数の角度から録画された資料なら信憑性も大きくなりますにゃ」

「ま、まて崇拝子ちゃん。それは沢山の反対が出ると思うぞ。例えば、世をけん引する政治家の動向監視なぞすれば、それこそ暗殺の手引きをするようなものだと」

「そもそも政治家がどこでいつ仕事をしてるかなんて、テレビ局や新聞社は把握してる程度の情報ですにゃ。そうですにゃ? ブリクセンさん」

「そうだね。少し前に、首相の外国訪問が公式発表前に報じられ、SNS等で情報拡散した事をデジタル大臣が悪し様に評していた事があったけど、ぶっちゃけ『そんなに気にするなら本気で情報隠せよ。何でこっちに教えたんだよ』って思ったよ」

「だいたい、世の中では犯罪防止の為に監視カメラを沢山つけろーって声があるみたいだけど、だったらそれこそ政治家の行く所全てに監視カメラが無いと道理に合わないですにゃー」

「た、たしかに」

「でもそれで終わりじゃないですにゃ」

「まだあるのか!?」

「ダンサーさんは『悪人』を懲らしめたいって気持ちをずっと持ち続けているけど、その根底にあるのは『優しい世界で生きていた筈なのに』って裏切られた気持ちなんじゃないですかにゃ?」

「!?」

「だったら、自分で『優しい世界』を作ってしまえばいいのですにゃ。腐敗したお肉は元には戻らないですにゃ。だから切り捨てて、新しいお肉を仕入れるべきですにゃ。さっき『警察や司法の腐敗を正す事ではない』って言ったのはそういう事ですにゃ。沢山の支持者を集めて、集団を作り、世論を引っ張って町へ発展させ、ゆくゆくは新しい国を作る事だって可能ですにゃ。実際に国を作れなくても、巨大な経済圏を構築して物流を掌握できれば国を弱らせるも肥えさせるも自在。もはや国ですにゃ。残念ながら人々を洗脳して国を作るのは悪魔的にダメですけど、政治活動そのものは真っ当で、暴力に訴えて人に言う事を聞かせる訳じゃなく、自分の身や家族を守る為の手段として悪魔の力を使うならオッケーですにゃ。普通の人だと多分まあだいたい出来ない事だけど、悪魔王様とも互角に戦えたダンサーさんならきっとできますにゃー!」

「オレが、政治家に……。破壊しか能が無いと思っていたオレが……」

 こうして、崇拝子ちゃんによる悪魔契約のプレゼンは終了しました。

 契約がなされた事により、ダンサーは継続して機械の体を用いて生きて行けるようになります。

 実は悪魔王様は、最初からダンサーの機械の体を停止させようとは思っていませんでした。もし非道なる目的に使うつもりなら、ドンナーの権能のように制限をかけるつもりでしたが、できればダンサー自身に納得し受け入れて欲しかったのです。

 しかし、崇拝子ちゃんの話を聞いて新たな目標を持ったダンサーには、もうその心配はいらないように見えました。

 ダンサーは機械の体を、その戦闘力と耐久性、それ故の不死性を最大限に活用した政治活動を行う事を決意し、悪魔王様の助言を得て、まずは国会議員となるべく動きます。

 トナカイ教団の人達もこれをバックアップすると約束してくれました。「宗教団体が政治活動を補助するのはどうなんだろう」と言う声もありましたが、日本で一番有名な政党も似たような事をやっていますから文句を言われる筋合いもなかろうと結論しました。

 しかし、この物語はこれで終わりではありません。もう少しだけ続くのです。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 良い!良いですよこのお話!すう子ちゃんがすごく良く動いてる!キャラが生きてるとはこの事ですね! [一言] すう子ちゃんの可能性を感じた良回でした!作者さんがどれだけすう子ちゃんの事を理解し…
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