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第十五章「その名は唯一必死祈願(ゆいいつひっしきがん)

 トナカイ教団本部は閑静な住宅街の一角にありました。

 そのエリアは最寄り駅から徒歩10分程度というアクセスの便利さをウリにしているのですが、その最寄り駅というのがモノレールの事であり、路線を変えて移動しようとするなら必ず一度駅を出て別の駅まで移動しなければならない上に料金が割高に設定されているので、老人や子供連れなど移動に難儀する方には積極的に利用されるのですが、若い方は自転車で大型の駅まで移動した方が便利だという印象を持たれ、だったらそもそも大型の駅の近くに住んだほうが良いと判断されるという、そういう訳でいまひとつ人を集める事が出来ない。そういう事情を抱えている為に格安で売りに出されていた物件の一つを改修した物を本部として使っているのだそうです。

「う、うう、やっとたどり着いたですにゃー」

「はははは。体力が殆ど人間のお前には、これまでの道中は辛かったやもしれぬな」

 そのような呑気な事を言いつつも、一行は建物の奥へと急ぎます。

 緊張を抱きながらも力みを持たぬよう、適度にほぐし、ミセスクインの先導に従って移動し、ついに神の居室「聖獣の間」へと至りました。

(ついにここまで来たか悪魔王)

 その場にいた全員の頭の中に直接響く声は、残虐超神ツエラのものでした。

 三十平方メートル程度の広さを持った空間の奥から、目には見えませんが超常的な気配のようなものを感じる事が出来ます。

 二人のミセスクインは袖から銃を取り出し構え、崇拝子ちゃんも悪魔シールドを出現させて防御姿勢を取ります。

 さて悪魔王様はと言いますと、腕を組み直立。威風堂々たるたたずまいをもって神と相対します。

 声が聞こえました。それは空気を振るわせない、頭の中に直接聞こえるような声です。

(我が名は残虐超神ツエラ。聖獣トナカイと共に人々を導き、全ての信仰を統一し、世界に平和をもたらものなり!)

「残虐超神ツエラよ。汝に伝える事がある」

(何だ? 今さら命乞いでもするつもりか。悪魔王。ふはははははははは。無駄だ。我ら神と悪魔はどちらかが滅びるまで戦うさだめ。こうして相対したからには、殺し合い以外に道は無い。かくなる上は……)

神魔戦時国際法(しんませんじこくさいほう)、第一条、二項、戦闘員は戦闘行為を行う場合、遠方より認識できる、事前に届け出た、所属を証明する事の出来る印、制服等の特徴を有していなければならない!」

「……にゃ?」

(……は?)

 崇拝子ちゃんは「何だか思っていたのと違う展開だぞ」と表情に出し、神は声音だけでそれを表現しました。

「三項、戦闘員は、病気等の理由で戦闘員として働けぬ者、同じ空間内で非戦闘行為に従事する看護師、料理人等その他の一般人と自己とを明確に区別する義務を負い、非戦闘員の地位を装う事は許されない!」

「………にゃ―?」

(…………はあ? おいおい何を言っているんだ悪魔王)

「うむ。まだまだあるが、いや、我としても残念だ、残虐超神よ。汝はこれまでに、いくつもの神魔戦時国際法に抵触している。名乗りを上げた上で、共通してトナカイの仮面を被って戦う九天使や、神剣を携帯していたミーちゃんはともかくとして、ただの一般人と区別する事の出来ない者に神力を与えてそのまま攻撃をさせるなぞ許される事ではない。黒煙のルドルフは暗殺の時にすらシンボルを表示していたぞ。汝も見習うがいい」

「トナカイの着ぐるみは制服扱いだったのですにゃ!?」

「本当は改造し過ぎてダメなんだが、まあむしろ目立つようになっているから我が許可した。目立たないように改造するのはダメだぞ」

(馬鹿な事を言うな! 神と悪魔の戦いは非情なる殺し合い。それが遥かなる太古からの決まりだ。国際法なぞ知った事か!)

「おいおい最近の日本人みたいな事を言うのだな。そういった、先に沢山ぶっ殺したもん勝ちみたいなやり方だと、戦争が終わっても双方に大きな負担を残すから、国際的にルールを定めて可能な限り損害が発生しないように努めて、落としどころを用意して戦争しようぜって主旨で決まった法律だろうが。神が率先して破るなよ。まるで皆殺しをやりたいみたいに聞こえるぞ」

「え、ちょっと待ってくださいにゃ悪魔王様。最近の神魔戦争ってそんな感じなんですにゃ?」

「お前は本当に座学が駄目だな崇拝子。まあ知らんでも生きていけるし、常に我が傍にいたから、知っていなければ困るという事も無かったからな。うむ。これは我も配慮が欠けていたな。今後はもっと細かく指導していこう」

「ぐあ。藪蛇(やぶへび)だったですにゃー」

(ぐぬぬぬ。ええい、かくなる上は悪魔王。ここで貴様を殺せば証拠も残るまい。死ねえ!)

「だから。『最近の日本人みたいな事を言うなよ』残虐超神。この世界でも国際法に違反すれば国連から攻撃を受ける等のペナルティがある。神魔戦時国際法なのだから、当然、神魔の両陣営は『この神ないし悪魔に対しては独自の判断で制裁を下す事ができる』のだ。知らなくても生きていけるが、知らないと殺される事があるから勉強しておく事を勧めるぞ」

 その時でした。上空から飛来した「何者か」が、建物の屋根を破壊し、天井を突き破ってその場に現れました。轟音と共に強い衝撃が生まれ、落下地点の床はクレーター状にえぐれ、もうもうと土煙や埃が舞い、一同はしばらくこれを注視しておりました。やがて、視界が晴れて、その場に一人の幼女が出現した事を認識するのです。彼女は腕を組み、声高らかに名乗ります。

(わらわ)こそ! 位階序列第三位(いかいじょれつだいさんい)! 唯一必死祈願(ゆいいつひっしきがん)である!」

 説明しましょう。唯一必死祈願とは、人の身に生まれながら修業の果てに神に並び立ち、並び立った事で神を殺し、世界を破壊する事が可能となった存在の事です。神と世界を同列首位とする序列三位。現在は悪魔王様とも共闘関係にある人外にございます。

「汝が来たか。必死の」

「久しぶりじゃのー悪魔王」

(なあにぃ!?唯一必死祈願だと。神殺し。世界の破壊者。嫌われ者の代表。本物の人類の敵ではないか!)

「妾だけだと思うか?」

(なに!?)

「先程から『なに』だとか『はあ』だとか、神のくせに随分と日本人よりな思考なんじゃのー。もう少し神らしい威厳を意識してはいかがかの」

(余計なお世話だ。そんなものは我の自由ぎゃあああああああああああああああああ!?)

 神は話の途中で、突然何者かによる攻撃を受けて痛みのあまり絶叫します。

 姿を見せてすらおらず、受肉もしていない、神域と呼ばれる異空間に居て、意思をテレパシーのように伝えているだけの神に対し、そのような事ができるのは一体誰なのでしょう。悪魔王様も唯一必死祈願もその場に立ったまま。ミセスクインも構えているだけで、崇拝子ちゃんも盾の陰に隠れています。ええそうです。それをしたのは唯一必死祈願の言った援軍でした。「妾だけだと思うのか」と言った以上、「神魔戦時国際法違反の神に制裁を下すべく現れた」のは、唯一必死祈願だけではないのです。

 その援軍とは、少女の姿をしていました。

 遠くからでもよくわかる、とても美しい金髪を持った少女です。

「あ、あの子は」

 本来ならば「ですにゃ」と語尾を続けなければいけない筈の崇拝子ちゃんが、思わず素で呟いてしまいました。

 その少女は手に神剣を携えおりました。なるほど。神剣は神が与えし物。言うなれば神と同じ定義で存在する物。「神がそこに居る」のであれば、振るって当たらぬ道理が無いという事なのでしょう。そうです。その神剣を神に向かって適当に振るったのはミーちゃんでした。

「どういう事ですにゃ。ミーちゃんは神官戦士ではなくなった筈では、ですにゃ」

「『やっと会えたね』お姉ちゃん」

「にゃ?」

 崇拝子ちゃんがミーちゃんの言葉を理解できないで一瞬だけ思考が止まった時、更に驚くべき事態がおきました。空中に点々と、人間大の発光がおきたかと思うと、その光の向こうから何人もの「ミーちゃん」が現れたのです。

「……うえええええええええええええええええええええええええ!?ですにゃあ!」

「なるほど。そうなったか」

 悪魔王様は全てを理解したように頷きました。

「うむ。援軍は妾だけではない。最寄りの次元をそれぞれ統括する神魔両陣営より、優秀な戦力を借り受けておる。戦地に相応しく、全て日本人で統一するとは聞いておったが、全員を別次元の同一人物でまとめてくるとは洒落(しゃれ)がきいておる。妾も最初は虚をつかれたわい」

 別次元のミセスクインが共闘したり、別次元のトナカイ教団の戦士が争ったりするのですから、別次元のミーちゃんが大量に現れても、確かにおかしい事は無いですね。別次元の神々や悪魔も、なかなか遊び心があるようです。

 その沢山のミーちゃんの中には、神ではなく別次元の悪魔王様と共に戦うミーちゃんや、崇拝子ちゃんがサバイバルをする事になった次元のミーちゃん、崇拝子ちゃんと共に惑星を危機から救うために戦うミーちゃんや、神にも悪魔にもつかず中立の存在として和平を提唱するが崇拝子ちゃんを困らせる者は全員ぶっ殺すミーちゃん等々、とても個性豊かなミーちゃんがいました。

 その内の一人が崇拝子ちゃんに近寄ってきます。

 彼女は崇拝子ちゃんがサバイバルした次元のミーちゃんでした。きちんとしたお別れが出来なかったので、せめて一言伝えようと崇拝子ちゃんを追いかけ、その道中で世界を支配しかけていたトナカイ教団をなりゆきで壊滅させ、その褒賞として次元を超えるバイクを手に入れ、様々な世界を旅している所を神にスカウトされたのだそうです。

「あ、あちきの知らない所でそんな事が」

 崇拝子ちゃんが戸惑うのも無理はありません。

「もう安心だからね。お姉ちゃんを困らせる奴らは、この即席ミーちゃん大連合軍がぶっ殺すから」

 今や数十人という数になったミーちゃん大連合軍。聖獣の間には入りきれなくなったので、唯一必死祈願がぶち抜いた天井の上にまで勢力を広げております。崇拝子ちゃんの位置からは把握できませんが、もしかしたら建物自体を包囲出来ているのかもしれません。

 しかし、この状況で神が放った言葉は意外なものでした。

(ふ、ふはははははは!かくなる上は仕方ない。どうやら我も切り札を使う時が来たようだな)

「なんだと」

「まだ手札を残していたとは」

「腐っても神ですか」

「であるな。油断できんのー」

「あ、もしかしてこの流れって……」

(いでよ!我が最後のしもべ。最強の戦士よ!)

 呼ばれて部屋の奥、暗がりより現れたのは二人の男女でした。

 男は崇拝子ちゃんが助けた迷子の少女の父親です。何というめぐり合わせでしょうか。男にとって、崇拝子ちゃんは娘の恩人ですが、当然そのような事は知らぬまま戦う事になるのです。

 そして女はと言いますと「とても美しい金髪」の少女でした。

「ミーちゃんですにゃ!?あれ、でもどうして神の味方みたいな雰囲気で出てくるですにゃ?」

(別次元からの援軍を呼べるのはお前達だけではない!)

 まあそれはそうでしょう。というか先にそれをしたのは残虐超神ですからね。

(さあ行くがいい。神官戦士ミーちゃん。そして澁谷(しぶたに)よ!願いを叶える対価として、にっくき悪魔王と、その一味を根絶やしにするのだ!)

 ここでようやく迷子の少女の名字が判明しました。澁谷と言うようです。

 澁谷は神剣を構え、歩き出しながら言います。

「承知しました。残虐超神ツエラさまぎゃああああああああああああああああああ!?」

 そして歩きながら後ろから神剣で切られてあまりの痛みに倒れました。

 もちろん切ったのはミーちゃんです。

 神はうろたえて言いました。

(な、なぜだ!?汝は別次元で「正式に我と契約した」はず。反故にするつもりか。悪魔王に最愛の姉が取り込まれ、凌辱の限りを尽くされるやも知れんのだぞ)

「……なんだと?」

 悪魔王様が神の言葉に眉をひそめます。

(あの町一つを巻き込んだ騒動で、汝と姉を救ったのは我だ!まさか、ただ一度の撃退で終わると思っていたのではあるまいな。そんな事はないぞ。汝はこれから何度でも神と悪魔の間で争いがおこる度に戦わねばならんのだ!)

「悪魔王様。あの神は何を言っているのですにゃ?」

「……ふむ。恐らくだが、どこかの我が敗北した次元から召喚されたミーちゃんなのかもしれん」

「悪魔王様が負ける事ってあるんですにゃ!? というか悪魔王様って何人もいるんですにゃ?」

「勝負は時の運とも言う。何か僅かな差で勝敗が分かれるのは珍しい事ではない。正確には同一の存在が複数の界隈で同時に活動している。分かりやすく言うと、パソコンでゲームをしながらSNSで会話し、ラーメンを食いながら漫画を読む感じかな。リソースの割り振りによってはどれかが疎かになり、失敗する。敗北した我は、敗北した事すら悟れぬうちに負けていたらしいな」

「寝落ちみたいなものですにゃ?」

「絶妙に違う」

(その通りだ悪魔王!だが我は一つの勝利で満足しない。この次元も、その他の次元も支配し、いずれはあらゆる神の頂点に君臨するのだあ!)

 この神。話を聞けば聞く程に俗っぽい印象が強くなっていきますね。

「もう嫌だよ。助けてお姉ちゃん」

「ミーちゃん!?」

 澁谷を切ったミーちゃんは涙ながらに訴えます。崇拝子ちゃんは思わず近づこうとしますが、神からの攻撃があるかもしれませんので悪魔王様が手で制しました。

「助けてお姉ちゃん。騙されたの。お姉ちゃんが危ないって思って。よくわかんないまま契約しちゃったの。その時は、お姉ちゃんはちゃんと助かったけど、その後何度も戦わされるとか、お姉ちゃんと戦う事になるとか、知らなかったの!」

「残虐超神の名の通りに、随分と酷い事をする」

(死んだ後に天国に行けるなどと言うよりは良心的だろうに。我はちゃんと一度はこの娘の願いを叶えた。死んだ後でなければ確認できんような内容ではなく、きちんと武器という対価を用意しての契約だ。部外者にどうこう言われる筋合いはない!)

 ここで唯一必死祈願が会話に加わります。

「とはいえ残虐超神よ。自信満々に出してきた戦力なのじゃから、この娘とその男はかなりの手練れであったのは間違いなかろうが、そのような有様では、どの道使い物になるまい。契約の内容はともかくとして、このまま戦ってもこちら側に分があると思うが?」

 確かに。どうみても澁谷を切ったミーちゃんの精神状態は戦える状態とは言えません。

(かくなる上は仕方ない。この手だけは使いたくなかったが…)

 なんと。残虐超神ですら躊躇するような手段がまだあると言うのですか。

(くらえええええあああああ!)

「むう!?」

「く!?」

「小癪な!?」

「この光は!?」

 突然の発光でした。一同は咄嗟に目をつむったり、手で光を遮ったりして対処しました。

「む? このシチュエーション。確かどこかで……?」

 それは奇しくも、トナカイ九天使とミーちゃんに襲われたあの夜、悪魔王様が受肉して戦った時の状況とよく似ていたのです。

 ここで崇拝子ちゃんの意識は一度途切れました。

 次に崇拝子ちゃんが目を開けた時には、あたりには何も無く。ただ真っ白な空間が広がっているだけでした。どこまでも続いていそうな。まっ平らな地面が続く空間にいたのです。


「にゃあ。ここはどこですにゃ?」

「気が付いたか崇拝子」

 うつぶせで倒れていた崇拝子ちゃんは身を起こしながら呟きました。声をかけられた方に目を向け、それから辺りを見回しましたが、悪魔王様の姿以外の誰の姿も見えません。

「……これはどういった状況なんですにゃ?」

「うむ。あの発光の後、ツエラが受肉し、圧倒的な戦闘能力で戦場を蹂躙した。唯一必死祈願もミーちゃん連合も皆殺しにされたよ」

「そんな!? ですにゃ」

 崇拝子ちゃんは驚きました。神殺しや悪魔王様、元トナカイ九天使のリーダーや、神官戦士の集まりをまとめて倒せる程の力を、残虐超神は持っていたというのですから無理もありません。

「ここは我が一時的に構築した避難の為の空間だ。かくなる上は、崇拝子。我と汝の契約を新たに結びなおし、魂の力を全て使い切って対処するしかない」

「……なんですって? にゃ?」

「戸惑うのも無理はないが仕方ない。我と汝の契約は神と直接戦う事を想定していない。契約を更新しなければ、このままなぶり殺しにあうぞ」

「そうじゃないですにゃ」

「そうじゃない?」

「……お前、誰ですにゃ」

「……どうした崇拝子」

「悪魔王様はあちきの事を『お前』って呼ぶんですにゃ。『汝』ではないですにゃ」

 悪魔王様の姿をした何者かは黙りました。

 双方がしばらく沈黙し、風の音すら聞こえない静寂の中、崇拝子ちゃんはこれまでの人生の中で一番、心臓の音を実感しました。鼓動がどんどん早く、強くなっていきます。緊張感が高まり過ぎて吐き気をもよおします。しかし吐くわけにはいきません。そんな隙を見せたら、目の前の敵に何をされるか知れたものではありません。

 とにかく時間を稼がなければ、敵から情報を得なければいけない。そう思って勇気を振り絞り、悪魔王様の姿をした敵を睨み、会話を試みます。

「悪魔王様とあちきは、それはもうとんでもない時間を一緒に過ごしましたにゃ。もうその辺の人間の夫婦なんか目じゃないくらいの時間ですにゃ。あちきの目はごまかせない。お前は悪魔王様じゃないですにゃ!」

「……ちい。悪魔王の姿をしていれば簡単に騙せると踏んだが、なかなかどうして、頭が回る娘ではないか」

 誤魔化す事をやめた悪魔王様の姿をした者、残虐超神ツエラは、その美貌を醜く歪めて笑います。

 この場所が一時的に構築された避難の為の場所だと言うのは本当でした。ツエラは発光によって悪魔王様一同の行動を阻害し、その隙に崇拝子ちゃんを拉致したのです。悪魔王様の姿を借りて崇拝子ちゃんの契約先を自分に乗り換えさせようという魂胆だったのです。

「かくなる上は仕方ない。せめて汝だけでも殺しておくぞ。崇拝子おおおおおおお!」

 この神は何度「かくなる上」と言うのでしょう。喋れば喋る程に底が知れる。しかし、それでも神である事に変わり有りません。崇拝子ちゃん一人では、その攻撃をしのぐ事は難しいでしょう。

「死ぃねぇええええええええええ!」

 崇拝子ちゃんが殺されるかと思われる、その時でした。突如、神のすぐ横の空間に亀裂のようなものが現れ、それを突き破って出現した金髪の少女が神を殴りつけ、崇拝子ちゃんから引き離します。

「お姉ちゃんを! いじめるなああああああああああああああああああああ!!」

「ええええええええ!? ぎゃああああああああああああああああああああ!!」

 少女に続いて幼女が現れました。唯一必死祈願です。ミーちゃんに殴られまくる神に笑顔を向けつつ言いました。

「愚かな事をしたの。残虐超神よ。これでおぬしは捕虜虐待の現行犯も追加じゃ」

「ばあかああなあああああああああああああああああああああああああああああ」

 ばかな。ではありません。はははは。女の子にボコボコに殴られながらもジョークが言えるとは。さすがは神ですね。

 唯一必死祈願は神殺し。神が住まう神域への移動は本領とする所。彼女が姿を隠した神を索敵し、崇拝子ちゃんが拉致された空間までのナビゲートをしたのです。

 続々と現れるミーちゃん連合による連続攻撃が始まりました。

「ゴッドスライス!」

「デビルハンマー!」

「神魔銀河光闇剣!」

「超永続苦痛地獄!」

 などなど。様々な次元で、様々な戦いを経験した彼女たちの猛攻は、さすがの残虐超神でも無傷とはなりません。そして、弱った神が逃げられないように周りを取り囲み、とどめの攻撃を唯一必死祈願が放ちます。

「見よ! これぞ魔術の極みにして神をも殴る拳! 神殴拳(しんおうけん)!」

 本当はかなり凄い技なのですが、神や悪魔の眷属が神をタコ殴りにした後だと、いまひとつ映えないなあと、唯一必死祈願は思いました。


 ついに残虐超神は倒されました。この後、神は裁判にて罰が決定します。しかしまだ終わりではありません。神の教えを世に広めようとする者がいる限り、対となる悪魔もまた不滅なのです。次回は知恵のプランサーが追い詰められます。


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