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第九章「残虐超神(ざんぎゃくちょうしん)ツエラ」

 崇拝子ちゃんに対するミーちゃんの誤解は解けました。

 崇拝子ちゃんはミーちゃんを家に招き、炒めたもやしに少量のキムチをあえる事で、辛みが丁度よく中和されたカサ増しキムチを作成する技術を披露し、もやしとキムチの炒め、もやしとキムチに水と塩ひとさじを加えたピリ辛スープ、刻んだもやしとキムチのゴマ和えを作成しました。それらをおかずに晩御飯を楽しみます。

「お姉ちゃんは普段こんなものを食べているの!? 栄養価とか全然足りてないじゃない。悪魔王。あなたお姉ちゃんにちゃんと給料払ってないんじゃないの。やはり悪魔ね。信用ならないわ」

 そのように怒りをぶつけるミーちゃん。

(そうは言っても、我らの給与は完全出来高制でな。何一つ成果が上がらなくても「職場にいるだけで収入が発生する政治家や神」と一緒にされても困る。しかも崇拝子の稼ぎの殆どは汝と、汝の家族の生活費の補填に回されておったから、むしろよく節約してやりくりしている程であるぞ。ちなみにこのもやしを使ったキムチ増殖法は我が教えたものだ。我も貧しかった時代はよく作ったものよ)

 そのように答える悪魔王様。

「え、あんたって貧乏な時代とかあったの? 王として生まれたんじゃないの?」

(よく誤解されるが、我は元々、色欲担当の平悪魔であった)

「ひらあくま? 悪魔にも平とかいるのね」

(それが部署移動になってな。強欲に回された。そこで色欲時代のノウハウを活かしてイノベーションをおこし、悪魔界の発展に大きく貢献したと表彰され、王として認められたのだ。わっはっはっは)

 といったやりとりを眺めつつ、崇拝子ちゃんはニコニコと御飯を口に運びます。

 その風景は、想像していたのとは少しだけ違いましたが、ずっと崇拝子ちゃんが思い描いていた食卓の風景でした。もう二度とミーちゃんとは一緒に御飯は食べられないと思っていましたので感動もひとしおです。

 そして姉妹は夜遅くまで語らいました。ミーちゃんの学校生活や、崇拝子ちゃんの仕事で大変だった体験など、姉妹であれば普通に出来たはずの事を、ようやく出来るようになったのです。


 さて、一方その頃。

 トナカイ九天使の一人、知恵のプランサーは教団本部にて神の声を聞いておりました。

 その神の名はツエラ。残虐超神と呼ばれております。

 その名がどこの国の言葉なのかは分かりません。それもそのはず。悪魔王様と同じ高次元存在であるこの神の名は、三次元の生命体には発音できないものなのです。しかし便宜上は呼び名が必要であった為に適当に用意したのが、この名前なのです。

 ツエラは、本来であればトナカイ教団とは関係ない神ですが、ミーちゃんの身柄をおさえるために聖獣トナカイと繋がりを持ち、幹部であるプランサーを使って教団を意のままに操ってきたのです。

 聖獣トナカイとしても、新参の神である故に、より多くの信者を集める事を目的にツエラの指示に従う事が得策だと判断しました。

(プランサーよ。崇拝子と悪魔王の暗殺には失敗したようだな)

「申し訳ありませんツエラ様。教団最強の精鋭部隊を向かわせたのですが、まさか悪魔王が瞬時に受肉して戦える程に悪魔力を蓄えていたとは予想外でした」

(憎き悪魔王め。あれはいつもそうなのだ。もしもの時の為の保険をいつも用意している。保険の支払いでいつもカツカツの生活をしているように見えて、追い詰められた時の反撃の勢いが凄い。我も何度も苦しめられた)

 うん? いつも反撃の為の保険を用意しているのが経験的に分かっているのなら、それをあらかじめ伝えてくれていれば、九天使はもっと準備してから戦いにいけたのではないかしら? と、プランサーは心の中だけで言いました。しかし決してそのような反論は神に対してはしません。戦っても絶対に勝てない相手には従順に尽くすのが現代風の生き方であり、プランサーはそれを徹底します。例え相手が、部下に対して報告、連絡、相談の「仕事のホウレンソウ」が全くできていないような、格下の生き物にさえ馬鹿にされるような、一切の尊敬できる要素の無いような存在だったとしても、戦えば必ず殺されるのだけは確実なのだから、逆らったりしません。「ははー。肝に銘じます」などと、それっぽい返事をしてお茶を濁します。

 もし彼女が神に対して逆らうようなそぶりを見せる時があるとすれば、それは確実に勝てる算段がついた時だけでしょう。

 それに、プランサーとしても甘い汁を吸える場面はあるのです。それ故に、なるべくなら神と不要な衝突はしたくありません。

 残虐超神の名に偽りなく、ツエラという神は残虐な託宣を多くプランサーに与えました。

 例えば2021年東京オリンピックの負債、約4兆円にまつわる情報です。

 事前に多くの方が反対したにも関わらず行われた大会ですが、日本はこの経費を入場料や物販などで回収できていません。時節の事情で無観客開催が前提であった大会ですので当然と言えましょう。テレビや新聞では大成功と報じられましたが、この負債解消の為には税金が使われますので、その負担は当然、納税者に強いられます。新型感染症を警戒していた時期と重なった事もあり、経済振興策としては完全に失敗したオリンピックでしたが、その記憶も薄れぬうちに政府から発表された新型感染症対策予算、約80兆円こそが本当に厄介な物でした。病気の検査や、ワクチンの接種費用として税金が使われるのですが、これらを無料で提供する為にと増税が予定されております。当然、経済弱者は苦しい生活を強いられることになり、市場は委縮する事が予想され、従来通りの方法論では利益を捻出するのが難しい時代でした。しかしトナカイ教団は需要の増したデリバリー事業や、通信販売事業、輸送事業を前もって拡大し、大手からシェアを奪う事に成功しておりました。また、人件費のかからない無人販売所も多く展開しました。スタッフの誰かが感染症にかかったら、即、店を閉めなければならないといった事が「正義」とされる世の中に変わりましたが、店舗に商品を運び入れる人員については殆どの国民が無関心であるので、事前に確保できた運営資金を惜しみなく投入し成功をおさめております。

 更に、政府が推し進めた感染症対策として、人と人との距離を一定以上に保つソーシャルディスタンスや、換気装置の設置などにも素早く対応しました。換気装置の工場を確保し、運送から設置まで一括管理し、小売店の床に貼り付ける足のマークのステッカーや、レジの天井からぶら下がっている飛沫防止シートに至るまで、感染症対策としてこれまで一切必要とされなかったこれらを、世の中がそれを必要とする前からすでに準備しており、教団は大きな利益を上げたのです。残虐超神の託宣を企業に伝え、上がってきた収益の一部を教団への寄付として受け取るような事もしていました。宗教法人への寄付は無課税ですので、まさに坊主丸儲けなのですね。まるで事前に知っていなければ出来ないだろうと誰もが思ったその手腕の秘密とは、まさに事前に知っていたからなのです。

 プランサーはツエラよりもたらされた託宣を、特に政治関係者、報道関係者に伝えました。彼らは快く協力してくれたので、お互いに金銭的に潤い、仲の良い関係を築く事が出来ました。これをウィンウィンの関係と言います。

 多くの事業主が収入を失い、雇用されていた人たちが路頭に迷う事を事前に知っていたので、その弱みにつけこんで教団へ誘導するような事もしていました。何せ失業者の皆さんにしてみれば、再就職先を探そうにも雇用先の数そのものが減っているのですから焦りは尋常なものではありません。まともな判断力を失う人も出てきて当然。ワラにもすがる思いだったでしょう。正に残虐の極みです。人が苦しむ事を先に知っていながら、苦しみの根を断つのではなく、それを利用して自らの利益に変えるのですから。

 知恵のプランサーに与えられた武器とは、残虐超神ツエラより託宣という形でもたらされる知恵だったのです。その知恵とは、不老不死である崇拝子ちゃんを殺す事さえ可能とします。

 プランサーは、神ではないが、神の如き万能感を得る機会がある今の立場をとても気に入っていました。教団に入る前まではスーパーやコンビニでやる気のない様子の店員を見つけてはクレームをつけて注目を浴び、気持ちよく家に帰る事が趣味でしたが、それとは比べ物にならないくらい愉快で、しかも収入が得られるのです。人を馬鹿にするだけでお金を稼げる動画配信者のマネをしてみようかと思った時期もありましたが、今に繋がる選択をした事を、まさに天啓であったと思っています。

 ツエラが重々しい雰囲気を出す声音で言いました。

(さて、プランサーよ。次なる指示を伝える)

「何なりと。ツエラ様」

(お前達、トナカイ九天使の信仰が、……揺らいでおる。これに対応せねばならない)

「なんと!?」

(恐らく先程の戦いで、汝と巫女を通して伝えた、崇拝子と悪魔王についての情報に疑いが生じた事がきっかけであろう。これはなかなか修正が難しい)

「ツエラ様でも難しいと?」

(うむ。これが不特定多数を相手にした偽装であれば、例えば、子供がいる家庭に10万円のクーポンを配るのは正しくて当然だとSNSに投稿し、それに同調する人間を何人か用意し複数のアカウントを作らせれば、多くの人間がその政策に賛成しているという演出が可能だが、今回のように少人数で情報を共有している場合は面倒だ)

「……では、どうすれば」

(消せ)

「!?」

(ふふふ。戦力が減るのが気になるか。まさか他の九天使に隠れて私腹を肥やしてきた汝が、今さら仲間意識でもあるまい)

 やはり神は人間とは感覚が違っているようです。確かにプランサーは、他のメンバーとは違い、神の言葉を聞けるという立場を利用して金銭を稼いできましたが、それはそれとして、これまで行動を共にしてきた同族の死を忌避するのは一般的で普通の感覚と言えましょう。戦力の低下など考えてもいませんでした。しかし、彼女は知能が優れている故に、この神が信者の死を、何かの数字としか思っておらず、死に対して悲しみのような感情を持たず、自分の意に反した者をあっさりと殺す判断を下す存在であり、そしてそれは「もしかしたら自分も同様に判断されて殺される時がくるのでは」という連想につなげてしまいました。

 彼女は心の中だけで神への感想を述べます。馬鹿なのか。この神は本当に馬鹿なのか。実際に信者の死を何とも思っていないにしても、対外的には命を大切にするスタンスを見せておかないと部下になめられると想像もできないのか。なぜなら、どんな部下も感情や都合で殺すような上司に対して、部下がどのような感情を抱いてどのように判断しどのように行動するのかという事さえ想像も出来ないような馬鹿だと周知しているのと同じなのだぞ。ああ。なるほど。確かにお前は神だ。だから人間ごときがどんな感情を持ったとしても、自分にとっては脅威ではないと、そういう感覚なのだろう。政治家だってそうだもんな。国民がどんな感情を持ったとしても、結局、命の奪い合いには発展する事はないとタカをくくっている。国民にとっては、殺して得られる名声よりも、殺した事による不利益が大きいからだ。誰もすすんで殺人犯罪者として余生を送りたいとは考えない。だから強い正義感を持った人間でも、デモをおこしたり、ネットで広く呼び掛けたりといった手段をとるのだ。それが分かっているから、どんな悪い政治家も平気で悪い事が出来る。それで自分が殺されるとは思っていないし、殺しに来るような短絡的な人間では訓練されたボディーガードや警察には勝てない。組織力で圧倒的に勝てないし、組織力で勝てないから取れる戦略が少ないし、何より準備資金が足りないからだ。悪い政治家を殺害する事は出来ても、その後に逃走する事が極めて困難で、およそ現実的ではない。だが、この神はとんでもない勘違いを一つしている。トナカイ九天使は神魔戦争に参加した戦士であり、九天使のリーダーであるキューピッドは、悪魔王と連絡先の交換をしているのだ。それを踏まえて、他の九天使を殺せと言っている。知恵のプランサーは絶対に裏切らないと思っているのか。それほどの信頼を寄せているのか。九天使が全員、殺されるくらいならと悪魔側に亡命するとは考えないのか。知恵のプランサーは、もしかしたら自分も同じように殺されるかもしれないと、そういう連想までしているのだぞ。まともな判断力を持っていれば、プランサーを含めた九天使全員が悪魔軍として神と戦う選択をするかもしれないと分かるはずだ。だがこの神はそれが分らないらしい。とんでもない馬鹿だ。

 しかしながら一つだけ神を評価できる部分がありますね。それは、九天使の信仰が揺らいでいるというのは、本当に正しい認識だったという事です。

(くくく。プランサーよ。そう不安にならずともよい。後ろを見よ)

「は? 後ろですか。はて、……な!?」

 言われるままに振り返ったプランサーは、信じられない光景を見ました。

 そこには、プランサーもよく見た事のある人たちが揃って立っていたのです。

 彼らはそれぞれポーズを取りながら名乗ります。

「黒煙のルドルフ!」

「筋肉のコメット!」

「人形のドンナー!」

「狂言のブリクセン!」

「悦楽のヴィクセン!」

「夢想のダッシャー!」

「破壊のダンサー!」

「知恵のプランサー!」

「奇跡のキューピッド!」

 と、「プランサーが振り返った先にいた九人は」そのように名乗りました。

「こ、これはいったい!?」

(なに。驚くほどの事ではない。別次元のトナカイ教団より彼らを転移させた。これを戦力の補充にあてるのだ)

 ツエラは暗に、こう伝えているのです。「お前たちのすげ替えや代替なぞいくらでもきく。いつでも首を切って人員交代ができる。そのようにされたくなければ、殺されたくなければ、これからもこの残虐超神を称え、熱心に働くのだ」と。

 プランサーは思いました。この神は真剣に馬鹿なのか、と。

 いつでも首を切れるんだぞと脅しをかけて部下を働かせる上司に対して、部下が何を考え、どうように行動し、その結果がどうなるのか想像もできないのかと思いました。

 しかし、プランサーは努めて冷静に言葉を発します。

「さすがはツエラ様。そのお力をもってすれば戦力は無限なのですね」

(そうだ。そこには「向こうの」プランサーも居るが、引き続き天使の誘導は「こっち」のプランサーである汝に任せる。今度こそ悪魔を滅ぼし、神の絶対支配を成し遂げるのだ!)

「ははー! 全ては悪魔を滅ぼすために!」

 ツエラが別次元より召喚した九天使も、うやうやしく礼をします。どうやら会話の全部ではないでしょうが、神の声は彼らにも聞こえていたようです。

 プランサーは改めて九天使に向き直り挨拶をします。

「知恵のプランサーだ。…ええと、そちらにもプランサーが居るんだったな。どうしよう、名乗りを変えたほうがいいだろうか?」

「いや、今回あたいは裏方に徹しろと言われていて、単独行動する事が多いだろうから、引き続き知恵のプランサーはあんたが名乗っていていいよ」

「そうか。わかった。では九天使の諸君、共に悪魔を打倒する為、力を合わせていこう。宜しく頼む」

 こうして、知恵のプランサーは仲間である九天使を殺害する使命をおび、新たなる九天使のリーダー的存在となったのです。


 さて、一方その頃。

 夜遅くまで姉妹の語らいは続いていました。

「ええ!? それじゃお姉ちゃんが転移した先にもトナカイ教団がいたの」

「あの時はやばかったですにゃ。筋肉のコメットに森の中で追いかけまわされて殺されるところだったですにゃ」

 どうやら以前に崇拝子ちゃんがサバイバル生活を強いられた異世界でのお話をしているようです。

 海岸からスタートして、まず打製石器を作成する所から始まり、樹皮を削って叩いてほぐしてよって縄を作り、それを使って弓のような道具を作成し、火おこし棒を効率よく回転させる工夫をし、やっとの思いでおこした火が消えないように薪を常に確保しつつ、炭を作り、炭を手に入れた事で作成できる水のろ過機を始めて自作した事や、夜は寝てはいけないといった、サバイバルの基礎知識を得意満面で崇拝子ちゃんは語ります。

「なんで夜に寝ちゃだめなの」

「肉食獣を警戒するためですにゃ。常に火が無いと、とっても危険なのですにゃ。だから夜は火の番をしながらおきて、日が昇って明るくなってから昼まで寝て、夕方まで行動するのですにゃ」

「肉食獣なら昼間にも出ると思うけど、昼に寝ていい理由は何なの?」

「う!? それは……」

 あらあら崇拝子ちゃん。せっかく悪魔王様に教えていただいた知識を忘れてしまったようです。

(我が答えよう。確かに汝が言うように、肉食獣は昼にも出る。そして夜に火を焚いておれば、その明りに引かれて動物が寄ってくる事もある)

「……それはむしろ危険なんじゃ?」

(そうだな。だがそれでも火を消さないように番をする意味があるのだ)

「それは?」

(人間は暗闇の中では殆ど何もできないからだ)

「……あー」

 ミーちゃんは得心がいったようです。

(夜に火の番をするのは武器として使う為ではない。光源を確保していなければ、外敵に襲われた時の対処能力に著しい差が出るからだ。対して、夜行性の肉食獣は夜が主戦場である。寝所の近くの地面に溝を掘ったり、ロープを周囲に張り巡らして外敵が侵入しにくく、また、侵入したとしても早期に察知できるようにしたり工夫するのは当然だが、それで戦うにしろ逃げるにしろ、明りはどうしても必要になるのだ。朝方に寝るようにすれば、光源を確保しなければという手間が一つ消えるのだよ。もちろん、悪魔力を使えばそれらの問題は全て解決するが、悪魔力を消耗するという事は、ミーちゃん、汝の為の稼ぎを消耗するという事だ。さっきも言ったが、我らの給与は出来高制である。せめて人里に出るまでは、うかつに力を使えなかったのだな)

「そうして少しずつ川を上って移動して、やっと村を見つけたと思ったら、トナカイ教団を信仰する村だったのですにゃ。そこで住んでた異世界のミーちゃんは、あちきを『向こうの』あちきと勘違いして、お祭りに誘ってくれたのですにゃ」

「うんうん。そっちでもお姉ちゃんは愛されてるんだね」

「でもトナカイ教団のお祭りだったから、そこでミーちゃんに破邪の舞いを披露されてあちきは聖なる波動で吹っ飛ばされたのですにゃ」

「……お、おおう」

「その後、筋肉のコメットに存在がばれて、なんとか逃げてぶっ殺したにゃ」

「殺しちゃったの!?」

(まて崇拝子。罠にはめて転ばしたり攻撃したのは事実だが殺してはいないぞ。奴はあの後、復帰して村に戻っている。もっとも、宗教家としての奴は死に、今では世の為人の為に活動しているだろうがな)

「それでも結構えぐい事してるのね」

 ミーちゃんは自身が崇拝子ちゃんを殺そうと神剣で襲った事を忘れたように言いました。

 この時の彼女たちは、久しぶりの再会という事でうかれておりました。

 悪魔王様でさえ、その陽気にあてられてうかれていたようです。

 せめて悪魔王様だけでも冷静でいられたなら、ミーちゃんという主戦力を失い、そして九天使の戦意がそがれた事で、残虐超神が異世界転移で戦力を拡充するかもしれないと思えたかもしれません。そして、そう、破邪の舞いを踊れる程の敬虔な信者である「異世界のミーちゃん」が召喚されるかもしれないと発想できたかもしれないのですが、ついに就寝するまでその考えには至れず、朝には、仕事に行かなければならない忙しさからその余裕を持てなかったのであります。

 そういえば、当初は決め台詞的な使い方をしようと思っていた「さあ明日も元気に悪魔崇拝にゃー」ですが、ここに至るまでついにそんな使い方が出来なかったですね。小説を書くと言うのは実に難しいものです。せっかくなのでここで使いましょう。一組しかない布団で仲良く眠る姉妹を想像してください。その内の片方、頭に猫耳がついている女の子が、寝言でこのように言いました。

「さあ、明日も元気に悪魔崇拝にゃー」

 それを聞いた金髪の妹は、まどろみの中で思ったのです。まったく。お姉ちゃんは変な寝言を言うんだな、と。でもリズムというかテンポというか、何となくアニメなんかに出てきそうな言葉だなと。そう思ったのです。


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