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その情(こころ)  作者: シーラ
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1-2タクマ(2024.9.12修正)

ピクシブにて、タクマの妄想を年齢制限付きで記載しています。


凄く良い気持ち。何かが自分の上でうごめいている。重みがあって、体が上手く動かない。


生暖かくぬるりとしたものが頬に当たる。吐息を感じるので舌のようだ。

下半身に柔らかい刺激を受け、まさかレイクが襲いに来てくれたのかと期待で目を開けると。


「‥‥ワフッ」


大きい毛玉のような茶色の犬が腹の上に乗っていた。驚き過ぎて声が出ない。重い。なんだコイツ。


「ワンワン!」


「ん‥どうしたロン。」


レイクが寝ているはずのベッドに、男性が一人寝ていた。俺は部屋を間違えたのか。

ベッドから身を起こすとかなり体格が良いのがわかった。強そうだ。スキンヘッドにタンクトップから筋肉の塊りが見えるこの大男は、ニカっと白い歯を見せて笑う。


「俺は施術師をしてるゴロウだ。宜しくな!

昨日、レイクちゃんからここで泊まってくれるように頼まれたからロンと一緒に来たんだが‥‥君、彼女が好きなんだな。ロンが一晩中相手していたが。寝言が随分と激しかったぞ。」


ちゃん付けするって事は親しい関係なんだな。仲良くしておこう。


「あはは……どうもっす。」


「心配するな、男同士の秘密にしてやる。そんな年頃だってあるさ。」


ゴロウさんは優しく笑う。絶対に良い人だ!


レイクに色々大人の遊びをしてもらったけど、夢だったのか?シーツを捲ってみると服は着ていたが、股の部分が凄く気持ち悪い。

つまり?俺はこのボケっとして頬っぺたが垂れたイヌと一夜を共にしたのか!イヌと!?

どうしよう。立ち直れないかもしれない。


「だがな、恋焦がれるのは自由だけど彼女を口説くのはやめときな。君が不幸になる。」


「他の人からも言われたけど、レイクさんに何かあるんですか?」


「白族は王の客人で、特権階級だぞ。言動に気をつけないと、不敬罪で家族諸共罰を受けるからな。

レイクちゃんは人が良いから誰にも優しいが、君みたいに付け上がる奴が増えると困るから、こうして釘をさしてんの。」


ニコニコ笑いながらも刺のある言葉が、胸に突き刺さる。付け上がっているつもりはない。純愛なのになぁ。


「一般人はまず無理だな。王国戦士長クラスになれば可能性はあるかもな。まぁ、簡単になれないけど‥」


「わかりました!俺、戦士長になります!そして、レイクさんを幸せなお嫁さんにしますっ!」


「おいおい。まぁ、精々頑張ってみるんだな。」 


呆れて肩を竦めるゴロウ。俺はめげない!願いは口に出して行動していかないと、叶わないんだ!  


「では、俺は治療院の開店準備があるから。」


ゴロウは近くで治療院を経営していて、レイクは患者用ベッドで寝ているそうだ。

疲れが溜まったらいつでも揉んでやるからなと、背中を叩かれた。ジンジンとした痛みのようなものが全身にくる。気持ち良いかも。


夢の残骸をシャワーで諸々流してから、食事処に向かうと。窓際のテーブルでレイクがキッシュを食べていた。美味しそうにしている姿が可愛い

挨拶をすると、一緒に座りませんかと言ってくれた。幸せだぁ。


「頼まれ事は終わったので、朝食が済み次第王都に向かう予定です。

タクマ君はどうなさいますか?他の志願者達に頼めば一緒に向かってくれると思いますが。」


「よかったら、一緒に行ってくれませんか?」


「急がなくてはいけないので早足になりますが、貴方が望むなら良いですよ。」


ほっと一息つき、給仕の人から出されたホットサンドを口にほう張る。

カリカリのパンの間から半熟卵の黄身がトロリとトロけて、一緒に入っているベーコンと黄色の甘酸っぱいソースと合って、とても美味しい。


姉の作ったえげつない朝食以来何も食べてなかったんだった。

どんどんお腹が空いてくる。おかわりをお願いした。


「こちらも、よかったらどうぞ。」


レイクのクマキッシュも取り分けて貰った。

臭みの無い旨味の塊りのような野性味溢れる肉に、チーズとトマトが絡み合い、キッシュのサクサク生地が全てを纏めてくれる。


こんな美味しいもの食べた事がない。都会って凄いな!気がつけば、5人前は食べていた。お腹いっぱいで、このまま二度寝したい。


ーーー


「おはよう。昨夜はお楽しみのようだったね。ロンがタクマ君を気に入ったみたいだ。」  


この言い方だと女将も昨日の事を知っているんだろう。弱みを握られてしまった。


あの大量の荷物でレイクについて行くのは無理だから、女将の好意で宿で預かってくれる事になった。試験が終わったら、美味しい料理を食べるついでに取りに行こう。

なんだかんだで、荷物の押しつけがなかったらレイクと出会えてなかった。少しだけ姉に感謝しておいた。


顔を両手でパシッと叩いて気合いを入れ、軽装になり受付に行くと、レイクと女将が楽しそうに話をしていた。


「次は、こういう配合で作ってみれば良いんじゃないかな?もっと濃厚になると思うの。」


「確かに良さそうだね。次来た時、味見頼んだよ。」


「楽しみにしてるね。」


あんな笑顔を見せるんだな。俺にも向けてほしいな。頭も撫でて欲しい。


「お待たせしました。用意ができました!」


「気をつけて行ってらっしゃいね。合格できる事を祈ってるよ。」


「はいっ!」


女将に見送られ宿を出ると、何人かこちらをチラチラと見てくる。茶色や黒色の髪が殆どの地族の中に、白いレイクはとても目立つ。全員同じ方向を目指しているので、志願者達だろう。コイツらを蹴散らせば、俺は騎士になれるんだ。頑張ろう!


「私の背後にいれば風よけになりますから、なるべく側に居るようにして下さい。」


街を出ると、レイクが走り始めた。俺より小柄な女性の後ろをついて走る。とても恥ずかしい。

走り始めて暫くして。ゴロウの気合いのおかげか、凄く調子が良いのに気がつく。全く疲れを感じない。それどころか、俺ってこんなに速く走れたんだ。全身が羽根のように軽い!足がドンドン進む!これ、才能開花しちゃったか?


姉から渡されたメモによると。街から王都まで徒歩で4時間、乗り合いの馬車では休憩ありで2時間の距離。途中ゆるやかな坂が続くけど、関係なく同じ速さで走った。


ずっと前を走るレイクの、揺れる長い乳白色の髪に見惚れる。とても綺麗で宝物みたい。触ってみたくなり、そっと手を伸ばしてみると。


「見えてきましたよ」


息を乱さずレイクが声をかけてきた。坂の上に大きな城と街が見える。でっかいなぁ。  


せっかく好きになったのに、もうお別れか。嫌だな。離れたくないな。





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