国王の厄日
「あいつは何をやっているんだ!」
息子の愚かな行為を目の当たりに「視せられ」荒い言葉が口を吐いた。
それでも、私はどこか余裕を持っていたのだろう。
聖女は国外に「出られない」。
聖女の奇跡と共に、聖石の繋がりを王太子である息子に見せ、偽聖女発言の撤回と謝罪をさせる。
国王である私からも謝罪をすれば収まるだろう。
そんな算段を頭に巡らせながらも、苦い顔を隠せない
聖女の常識を知らないような振る舞いに、今まで何を学んでいたのかと頭が痛くなる。
息子を甘やかしすぎたかもしれない。
妻である王妃は第一子のレオパルドを産んだが、産後の肥立ちが悪く、今後子を成すことは無理だと侍医団に告げられた。
臣下からは、側妃を娶ることを幾度も勧められたが、妻を愛していた私は一蹴した。
跡継ぎは産まれたのだから、立派な王となるように育て上げれば良いと。
優秀な家庭教師を何人も付け、万一何事も起きないよう、王宮から出さず信頼のおける者を周りに固めて育てた。
・・・私に近い者たちは、王子に対して甘くもなろう。
それに、よくよく考えれば、次期国王が決まっている息子に苦言を呈せる者がいるとは思えない。なのに、王子は優秀だ、何の問題もない、そんな報告を鵜呑みにしてしまっていた。
あぁ、昔の自分を殴りたい。
反省と後悔に胸を塞がれていると、有りえない感覚に身が震えた。
「いや、ちょっと待て、どういうことだ!」
鎖が、外れた、感覚が、した。
隣国にいるせいだろう。途切れ途切れに伝わる感覚は、聖女が解放されたことを伝えてくる。
「なぜだ!管理者である私以外に、聖女の鎖に触れられる者などいないはずだ!」
満面の笑みを浮かべているだろう、聖女の喜びが伝わってくる。
聖女は、生まれながらに聖女だが、王族は違う。
立太子して初めて聖石に「監視者」と認められ、聖石に触れて情報を視る権利を得ることができる。
王に即位すると「管理者」の権限も得て、聖女を聖石に繋げることができる。
ただ、「管理者」といっても聖女を繋げることができるようになるだけだ。
実際には「行使者」である聖女が、聖石の力を国に対して振るい、強大な力を災いとして行使しないか、王族が「監視・管理」する。
レオパルドは立太子していない。私は隣国で、鎖を外すわけがない。
(何故だ)
混乱した頭で、転移陣を展開する。
今すぐ聖女に謝罪して待遇改善を、望むなら貴族位も授けて、国に留まるよう説得しなくては。
しかし、発動した転移陣はすぐに崩れ、魔力の残滓が指から零れていく。
(何故だ!!)
続け様に転移陣を放つが、道が繋がることなく、陣は崩れてしまう。
こんなことは初めてだ。
(早く聖女の元に行かねばならぬのに!)
過去幾度となく行使してきた転移陣を、何度も、何度も、魔力が尽きるまで放つ。
国内なら、聖石の加護もあって無限に実行できるが、ここは隣国だ。
いくら魔力量の多い王といえど、サポートもなしに使用魔力量の大きい陣を何度も放てば、魔力は枯渇する。
魔力不足で青白くなった王は、聖女達との会話に加え、アリアが構築する複雑な陣を見て、更に血の気が引く。
「ま、待ってくれ!聖女!!」
自分にはまるで理解できない、複雑で力を秘めた魔法陣が、次々と描かれていくのが「視える」。
聖女の周りは多数の陣で囲まれ、起動を待つだけになった。
あぁ、何故私は、息子が愚行に及んだ時、すぐに諫めにいかなかったのか。
陣の説明を強制的に「聞かされ」自分へのメッセージを「聞かされ」、もはや私は絶望するしかなかった・・・。
立場が違えば、見えるものも違うよね。
と思って、色々書いてみたけれど、王様以外は全部平民視点でした。
貴族さんたちは大丈夫でしょうか・・・
そして王様の製造責任は如何に・・・
さて、これで王国関連のシステム概要設計は何となく終わった感じです。
次は転移先のシステム概要ですね!(アレ?)
適当なシステムっぽいものをでっちあげるのがすっごく楽しくてごめんなさい。
ヤバイ。ファンタジー最高(笑)
とはいえ、詳細設計始めたら終わらないので、概要だけに留めます。
変なこと書いてあっても、読み飛ばして頂ければ幸いです。。。