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野良聖女~鎖が解かれたので自由に生きようと思います~  作者: 三川士ぱりぃ
ミルトランド王国編
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旅立ち

本日2回目の投稿です。



 気持ちの良い朝だ。

 窓を開ければ爽やかな風が髪を揺らす。頭上を仰げばステンドグラスのような結界が柔らかな光を注いでいる。

 世は押し並べて平和。

 こんな日こそ、出立に相応しいんじゃないだろうか?




 国替えの式典が終わった後も様々な式典が続き、アリアはその全てに出席した。

 王の招待というのもあったが、アリアも変わる国を見届けたかったから、喜んで出席した。

 聖女のローブを脱ぎ、初めてドレスに袖を通したときはドキドキした。

 柔らかな薄ピンクのプリンセスラインのドレス。首元と肩回りはレースで肌の露出を抑え、腰には大きなリボンが可愛さを引き立てている。

 まるでお姫様が着るようなドレスに気後れしたが、折角だしと勇気を振り絞って着せてもらった。

 鏡に映る自分が自分じゃないようで、無性に恥ずかしくも嬉しかった。

 

 ちなみにベルディモードは式典には一切参加しなかった。

 面倒くさいと一蹴したからだが、貴族の心の平安には良かったのかもしれない。




 式典ラッシュも終え、お祭り状態だった国も徐々に落ち着きを取り戻し、穏やかな日常が戻ってきた。

 街は朝から活気にあふれ、人々は生き生きと働いている。

 聖女がいなくても、この国は大丈夫。

 そう思える光景に、アリアは嬉しさと寂しさが綯い交ぜになり、そっと胸を押さえた。

 

 

 よし!今日出発しよう!思い立ったが吉日だ!!

 

 

 荷物は既に纏めてある。

 後はアリアの気持ち一つだった。

 ずっとアリアを娘のように慈しんでくれた孤児院の院長に旅立ちを告げる。

 院長は瞳に涙を浮かべながらも、アリアの決断を了承してくれた。


「寂しいわ。娘が独り立ちする時は、こんな心境なのでしょうね」


 そっと目尻を拭う院長に、アリアの胸も熱くなる。

 ずっと母のように慕ってきたのだ。思わずアリアは院長に抱き着いた。院長も優しくアリアを受け止める。


「アリア、ずっと頑張ってきたあなたが自由に生きるのを止められる人はいないわ。でも、旅立つ前に騎士団長には挨拶していってくれるかしら」


 騎士団長も父親のようにアリアを守り、支えてくれた人だ。

 孤児院も騎士団も、アリアにとって家族のようなもの。彼らがいてくれたから聖女になれたと胸を張って言える。


「うん!家族だもん。行ってきますの挨拶をしていくよ!」


 元気よく答えるアリアに、院長は目を細めた。




 孤児院の皆とは涙ながらのお別れになってしまった。

 騎士団でも男たちに号泣された。

 騎士団長にはきつく抱擁され、父さんが生きていたら、こんな風に心配してくれるのかな。そう思ったら、胸がきゅっと詰まった。

 別に永遠のお別れじゃない。

 ちょっと外の世界を見に行くだけだ。

 ミルトランドは私の故郷で、家族はこんなにもたくさんいる。

 だから、笑顔で行ってきますって言って、また、ただいまって言って帰るんだ。

 

 一生懸命伝えて、最後は笑顔で行ってらしゃいって見送ってもらえた。

 王都の大通りをゆっくり歩いた。ちょっとした荷物を持つ私に「遠出でもするのかい」なんて、街の人は気さくに声をかけてくれる。「暗くなるまでに帰っておいで」なんて声に笑顔で手を振り、外門をくぐった。

 

 王都の外は静かだ。

 暫く散歩を楽しんだが、歩いていたら国境を超えるまで何日もかかってしまう。さっくりと転移した。

 前は北に北に突き進んで、師匠に出会った。

 今度は西に進もう。

 ニーシェン国の向こうには何があるんだろう。

 わくわくするような冒険をしたいな。

 

 期待に胸を躍らせて歩くアリアに声がかかった。

 

「漸く出てきたか」


 その声は紛れもなく。


「師匠?なんでこんなところにいるんですか?」


 ここのところ館に引きこもっていたベルディモードがいた。


「お前、国を出るんだろう」

「うん。あ、師匠も行ってきますの挨拶が欲しかったですか?」


 一番お世話になった人に一言も無いのは不義理だったかと思い至る。

 師匠は、そういう人間らしい交流は煩わしく思うかなと勝手に思っていたけど違ったのかも。

 しかし、ベルディモードは軽く肩を竦めた。


「そんなものはいらん。俺はお前と一緒に行くからな」

「はい!?」


 ベルディモードは、驚くアリアを楽しそうに眺めた。


「えっ、師匠も一緒に来るんですか?」

「お前と一緒だと、面白いことが起きそうだからな」

「何ですかそれ・・・私は師匠のおもちゃじゃないですよ?」

「そうだな。お前はただのおもちゃじゃない。非常に出来の良いおもちゃだ」


 くくっと笑うベルディモードに、アリアはため息を吐いた。

 これはあれだ。何を言ってもついてくるパターンだ。


「そういえば師匠、髪を切ったんですね」

「冒険に長髪は邪魔だからな。中々楽で良い」


 身長ほどもあった黒髪は襟足もすっきりの短さにカットされている。

 黒いマントを羽織ったベルディモードは、すっかり旅慣れた冒険者風だった。


「まぁ・・・いいですけど。でもノープランですよ?とりあえず西に行くことしか決めてませんけど?」

「それでいい」


 満足そうなベルディモードに首を傾げるが、ま、いっかと気持ちを切り替えた。


「それでは師匠、よろしくお願いしますね! 師匠がいてくれると心強いです!」

「そうだな。俺にあまり迷惑をかけないようにな」

「なにそれ!」


 賑やかに掛け合いながら、アリアとベルディモードは肩を並べて歩き出した。

 キラキラと煌めく新しい結界が、木々に遮られて見えなくなっていく。

 アリアは真に解放され、本当の自由を手に入れた。





初めて書いた、小説ともいえないような思い付きのお話を最後まで読んで下さってありがとうございました。

何とか「完結」を付けられてほっとしています。


断罪・追放・ざまぁ

そんなお話のつもりが、すっかり行方不明になりました・・・(;´・ω・)


アリアにとってはプロローグ

ミルトランドにとっては革命

ベルディモードにとっては暇つぶし?


一つの時間軸の中の一部を切り取ったような、そんなお話になったような気がします。


本編は終わりましたが、裏話や過去話など、番外編をいくつか書こうと思っています。

そちらも見て頂けると、とても嬉しいです。


評価や感想もありがとうございました!本当に本当に嬉しかったです!

あまりに先行き不安定で、お返事を書く手が止まっていましたが(;^ω^) これから安心してゆっくり書こうと思いますw

ここまでお付き合い下さり、誠にありがとうございました!!


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