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野良聖女~鎖が解かれたので自由に生きようと思います~  作者: 三川士ぱりぃ
ミルトランド王国編
30/45

サイラスの企み



「ところで、キタールから王都までの様子はどうでしたか?」


 サイラスが宰相の顔になった。ルードルフ達も真面目に姿勢を正す。


「全く、魔物の影も形も気配すら無かった。静かなものだ」

「魔物が纏う気配がどこからも感じられない。見たのは普通の動物ばかりだ」

「キタールからは何も連絡が無い。北の魔物の氾濫も無いようだ」


 ルードルフは道程の様子に加え、キタールの現状を説明した。

 聖女の()()が終わり、急いで魔物への警戒レベルを厳戒体制に引き上げた。

 幸いキタールでは貴族と平民で居住区を分けていなかった為、騎士たちが転移することも無く混乱は無かった。

 ここ10年ほど、聖女のお陰で魔物の襲来は無いが、皆が鍛錬に励んでいること。加えて魔術師の実用レベルが急速に上がっており、騎士との連携もとれていることなどから、キタールの騎士団だけで先代聖女の魔物戦線レベルなら国王や自分がいなくても何とか対応できること。

 ルードルフから説明を受けて、サイラスは安心したように頷いた。


「貴方のことですから、きちんと対応していると思って呼び寄せましたが、安心しました」

「俺の領地はまだまだ傷跡が残っているからな。むしろ王都の気の緩みが俺には信じられん」

「魔物と戦った貴族など、王都にはいませんからね。これで多少現実が見えてくれれば、こちらも助かるんですがね。───しかし外に魔物はいませんか。予想していましたが、今代聖女は本当に素晴らしいですね」


 感嘆の溜息を洩らすサイラスを、ルードルフ達は訝し気に見た。


「どういうことだ?」

「貴方方も魔物の出来方はご存じでしょう?」

「ああ、瘴気が生物の体内に入り込み汚染されると魔物になるっていう・・・」

「そうです。目が黒く染まり、頭まで汚染されると完全に魔物化するそうです。瘴気があるところで魔物が生まれる訳ですが、ここに来るまで、そういったものは感じなかったのですよね?」

「ああ。俺たちは何千体もの魔物を切り伏せてきたから分かるが、魔物が持つ嫌な気配や臭気は全く無かった」


 納得するようにサイラスは頷いた。


「今代聖女様は、その強い力でミルトランドの全土に聖魔力を注ぎました。私も昨日のうちに『外』を確認しましたが、聖魔力は健在でした。恐らく、ミルトランドで魔物が発生することはありません」


 誰も知らないが、アリアはベルディモードを師匠と仰いでからも、国中の聖石を捏ね回しては魔力を流していた。隅々まで魔力が浸透している現状、向こう10年は瘴気が発生する心配はない。

 この事実はアリアも知らない。


「北から魔物が下りてくる頻度はどうなりましたか」

「4~5年前まではかなりいた。結界が出来てから被害は無くなったが、討伐部隊は出していた。しかし、ここ数年は全く姿を見ないな」

「そうですか。何か環境が変わったのかもしれませんね」


 北の()()()が魔物の発生源だったのだが、既にアリアが潰している。


「鑑みるに、魔物は国外からしか来ない。そして聖魔力を忌避する性質から、空襲しか考えられないということですね」

「昨日、ワイバーンが来たんだろ。ま、そういうこったな」

「先々代と先代の聖女が亡くなった時のことを思うと、考えられないくらい平和だな」

「えぇ・・・我々貴族が聖女と関わらなかった結果がこれなら、貴族とは一体何なのでしょうね・・・」


 先代聖女が謎の死を遂げて今代聖女が生まれた時に、国王は王命を発した。


『貴族は如何なる理由があれ、聖女と関わることを禁ずる。禁を犯した者は国家反逆罪として国外追放に処する。なお、国外追放時には聖石連合諸国に聖女に仇なす行為を行ったと周知することとする』


 貴族たちは、死罪も同然の内容に震え上がった。

 だが、今度の聖女は平民ということもあり、貴族たちは態々関わる必要なしと素直に従った。

 そして聖女は3歳から奇跡を起こし始め、国民と共に国を復興していくことになる。

 そこに貴族の存在は無く─────。


「正直、もう少し魔物が出て襲ってくれても良かったんですが・・・無暗に死人や怪我人を出しても後々面倒です。聖女の加護が残っていて良かったとしましょう」


 ふぅっと息を吐くとサイラスは爽やかに笑った。

 

「さて、それでは私たちも行きましょうか」

「はっ?行くってどこへ?」

「実は、王都でも真面な貴族や、上位貴族に使い潰されそうな下位貴族は離宮に避難させているんですよ」


 悪戯っぽく目を輝かせて、サイラスは告げる。


「ここには手に負えない者や、良からぬことをしている者が集まっています。細君やご子息は巻き込まれる形になりますが、少なからず影響を受けているでしょうし、思い通りにならないという貴重な体験をして頂くのもご自身の為かと」


「「「おー・・・」」」


 ルードルフ達の呆れた視線を受けて、サイラスは生き生きとする。


「この城にあるものは好きに使って良いと言ってありますし、彼らは生きることに貪欲ですから、どうにかするでしょう。魔力持ちですし心配の必要はありません。寧ろ彼らが率先して派閥の者を保護する立場なんですけどねぇ・・・」


 やれやれ、と肩を竦めるサイラスに


(俺、ぜってーサイラスを怒らせないようにするわ)

(色々あったんだろうけど、あんなに楽しそうに・・・若返ってねぇ?)


 メルリンガーとノーヴィスがひそひそする。

 考えることが苦手なルードルフは面倒そうに答えた。


「ま、いいんじゃね?何にしろ、王か聖女がいなけりゃどうにもできねーだろうしよぉ」

「えぇ。この事態を乗り切るために、()()()()()者と()()()()()()()()をしたいのですよ。貴方たちも参加してくれますよね?」


 重い荷物を下ろしたかのように、軽やかにサイラスは立ち上がった。


「こちらから王城の外に出られます。貴方方なら、多少歩くことになっても平気でしょう」

「「「当然だ!」」」


 元気に立ち上がると、老人たちは颯爽と隠し通路に入っていった。




それでいいのか宰相?回でした。ミルトランド王国ヤバイです。。。

先々代と先代の聖女のお話は別で書きたいと思っています。

あまり気分の良い話では無いです。たぶん。



学園時代のアリアは、王命のせいで腫れ物扱いでした。親からは関わっちゃダメ絶対!と厳命されてました。子供なので嫌味は言っちゃいますが、それ以上が無かったのはその所為です。

平民だから~と言っていたのは殿下だけです。


学園に通えたのはアリアの希望と、幼いころから規格外の力を使っていたと聞いた国王が、学びの機会が必要だと判断したからです。

「学園内で教育に関わる範囲で聖女と関わることを許可する」って言われても、受け入れ側は怖かったでしょうね。



それから『王都の貴族』がどうしようもないのであって、キタールのように各地を治める領主たちは、領民たちと力を合わせて領地を守っています。

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