表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
野良聖女~鎖が解かれたので自由に生きようと思います~  作者: 三川士ぱりぃ
ミルトランド王国編
27/45

トップ会談5



 国王様の息を飲む音が室内に溶けた。

 そのまま静寂が満ちる。

 師匠は挑むように国王様を見ている。私はそんな二人を黙って見ていた。

 

 正直、師匠の言葉は難しくて良く分からなかったけれど、聖女任せでない国、聖女がいなくても良い国にしないかって言っている?

 できるのかな。でも、師匠ならできる気がする。

 国王様は何て言うのかな。


「・・・それは、いや、しかし、できるのか。そんなことが・・・」


 国王様が呻くように呟いた。


「・・・私とて、聖女一人に負担を押し付けるような、そんな非情な国の在り方を変えたいと、かつては思った。しかし、国の現状を知るほどに、そして国外の状況を知るほどに、無理だと。聖女を失えば国は滅びると。何度も思い知らされた」


 国王様が顔を上げた。

 眉根を寄せ、師匠を見上げる。


「それを出来るというのか?大賢者殿!」


 師匠の視線を真っ向から見返して、国王様は声を上げた。

 一転して、その目は力強く師匠を見据える。

 本当にできるのか。そんな力がお前にあるのか。

 挑戦するように、問い質すように。為政者の迫力を持って師匠に対峙する。

 

 そんな国王様を見て、師匠は満足気に頷いた。


「できる。聖石システムに頼りきりの者共だけでは無理だがな。しかし、ここに王と聖女と俺が集まった。我々が協力し合えばシステムの改変は可能だ」


 ニヤリと師匠が笑った。

 外向きでない笑顔だ。

 国王様を認めたんだ。自分のことを「俺」って言ってるし。

 何だか嬉しくなって笑ったら、人事じゃねぇぞと小突かれた。

 そんな私たちの様子に、国王様は目を丸くしていた。


「お二人は仲がよろしいんですなぁ」


 突然、国王様が近所のおじさん感を出してきた。

 微笑ましいものを見るような笑顔が、何故だろう。いたたまれない。

 師匠がフンと鼻を鳴らした。


「見ての通り、こいつは全く聖女っぽくねぇし、今更俺も大賢者なんて呼ばれたくない。大賢者って色々と面倒くせぇんだよ。だからアンタも俺のことを”大賢者”とか”ベルディモード”呼びするの禁止な」

「面倒くさい、ですか。確かに『名』が付くと面倒事が増えますな。国王という名も実に面倒だ」


 楽し気に笑う国王様。

 すごい!師匠と通じ合ってる!

 驚いていると、師匠が呆れた眼差しを向けてきた。


「それでは、私は貴方のことを何とお呼びすればよろしいですかな?」


 国王様の問いかけに、師匠は顎に指をかけて暫し考え込んだ。

 そうだよね。国王様が師匠のことを師匠って呼ぶのは、ちょっとおかしいよね。

 師匠は直に顔を上げた。


「他国では、俺のことは『ベイル』と呼べ。遥か東の国から来たことにしておこう」

「王国向けは別にあるのですか?」

「国内では『大賢者ベルディモード』で良い」

「・・・宜しいので?」

「貴族共への説明も、その名を使った方がやりやすいだろう。抵抗勢力を潰すのも、その名を使った方が効果が上がるだろうしな。勿論、国外で公言できないように細工はさせて貰うが」


 師匠の悪い笑みに、国王が苦笑う。


「精々お手柔らかにお願いします」

「手荒にはしないさ。システムを維持する大事な要員だからな」


 ふむ、と国王様が思案する。

 師匠には、やることのイメージが出来上がっているのかな。

 首を傾げていたら、師匠が意図を汲んでくれた。


「俺の考えはこれから説明するが、聖石システムは無くさない。あれは有用だ。管理者と実行者を限定せざるを得なかった点を改善する為に、新たなシステムを上に乗っける。現システムと新システムの連携には王の権限が、新システムの詳細を詰めるのに、王と聖女の知識と経験が必要だ。俺はデータでしか国のことを知らないからな」

「『大賢者ベルディモード』殿は国の在り方を変えるつもりは無いとおっしゃるか」

「そうだ。国の在り方は変えない。変えるのは『人の在り方』だ」


 師匠と国王様が真剣な顔で見合う。

 ふっと、国王様の顔が和らいだ。

 目覚めてから、どこか張り詰めた雰囲気が抜けなかった国王様だったけど、今、その緊張感が消えた。

 国王様は静かに目を閉じると頭を下げた。


「願ってもないことです。私は貴方様に全てを委ね、協力いたしましょう」

「一国の王が軽々しくそのようなことを言って大丈夫か」


 揶揄うような師匠に、国王様は柔らかく微笑んだ。


「貴方様だからです。大賢者とは斯くも偉大な者なのかと瞠目しています」

「買い被りだ。『大賢者』なんて大したことない。少し知恵が回って小狡く立ち回れる俗人な連中の蔑称だ」


 『大賢者』を讃えた途端、師匠から表情が消えた。

 冷たい表情で淡々と言い捨てた師匠に、私も国王様も、それ以上は言及しなかった。



◇◇◇



 それから、私達は動き出した。

 国王様は、対外的には私の結界が消えるまでスグナン公国に滞在することに。実際は師匠の館で計画を進める運びとなった。

 

 この計画にはロザリー様が全面的に支援してくれた。

 私がロザリー様を巻き込もうと主張したのだ。

 もう、ミルトランド王国だけで収まる話では無いし、事情に通じている信頼できる人がいた方がいいと思ったから。

 師匠は難色を示したけど、国王様は理解してくれた。

 

 ロザリー様は、細かいことは何も聞かずに私のお願いを聞いてくれた。

 鈴を転がすような声で笑いながら「アリアの言うことなら、仕方ないから聞いてあげる」と。

 あまりにあっさりしていて、師匠も驚いていた。

 

 「それでいいのか」と問う師匠に「アリアのすることを見たいのよ」と素敵な笑顔で返すロザリー様。

 加えて「アリアは危うい所もあるけれど、貴方が野放しにはしないのでしょう?」と言われて、師匠が黙り込んでしまった。

 

 あれ?もしかしてロザリー様は師匠をやり込めたの?すごい!

 

 尊敬の眼差しでロザリー様を見つめていたら、むつっとした師匠にデコピンされた。

 暴力に訴えるのは良くないと思います!

 

 実行前に、他の聖女達にも話すことを約束した。

 これは国に、そして聖女に対する革命だもの。誤解や不安を与えないように、きちんと説明しなくてはいけない。

 皆が穏やかに暮らせる国へ。

 これが正解かは分からないけど、思いを叶えるために精一杯頑張ろうと気合を入れた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ