トップ会談2
「アリア!」
「ロザリー様!」
私がミルトランドの国境を越えてスグナン公国に入ったのを見て、ロザリー様は目を見張っていた。
頭で分かっていても、どこか信じられなかったんだろう。私だってドキドキしたもの。
でも、すぐに優しい笑みを浮かべると私を抱擁してくれた。
私もロザリー様をぎゅっと抱きしめる。
「すごいわ。本当に鎖が外れたのね」
「今でも夢かな?って思うくらい、自分でも不思議ですよ」
「どんな感じなの?羨ましい・・・なんて言ったら大問題ね。ここだけの秘密にしておいてね」
悪戯っぽく笑むロザリー様は”妖精のよう”という形容がぴったりの、可愛らしくて美しい女性だった。
小柄で華奢な身体を純白のローブで包み、緩く波打った銀髪が日の光に煌めいて揺れる。
エメラルドグリーンの瞳はキラキラと強い輝きを放ち、吸い込まれそうなほどに魅力的。
何だか良い匂いがするし、同性の私でも見惚れてしまうほどの美しさだ。
ロザリー様の視線は師匠に向いた。
「こちらの方が」
「はい。私の師匠です」
私の紹介に、師匠が頷く。
ロザリー様は師匠に向き合うと、見事なカーテシーを披露した。
「アリアをありがとうございました」
「弟子の不出来は師匠の不徳だからな」
不遜な態度のベルディモードにロザリーは笑みを深める。
「国王との会談もご一緒致しますか?」
「当然だ。こいつを野放しにしていたら危険極まりない」
「まぁ。その通りですわね」
コロコロと笑うロザリー様に私は身を縮こませた。
「あらあら、そんな顔をしないで?アリアはそこが良い所なのよ?」
くすくすと笑いを零しながら、ロザリー様は私の手を握った。
「是非お二人と一緒にお茶をしたい所ですが、ミルトランド国王が一刻も早い面会を望んでいます。申し訳ありませんが、すぐに移動してもよろしいかしら?」
「ええ。勿論」
「それから、スグナン大公もあなたとの面会を望んでいるの。ミルトランド国王の後に予定を入れさせて貰っても良いかしら」
申し訳なさそうに眉を下げるロザリー様。
正直、国のトップと立て続けに会見するのは気が重い。しかし、便宜を図って貰った以上断る訳にもいくまい。
「はい。大丈夫です」
気合を入れて了承した。
恐らく聖女の解放を案じているのだろう。聖石は聖女を必要としている。聖女達が国を出てしまったら聖石連合国は崩壊してしまうだろう。
「大公様には聖石の血族に王太子殿下のような方が現れなければ大丈夫、とお伝えすれば安心して頂けるでしょうか」
ロザリー様に相談すると、微妙な顔で苦笑された。
師匠にも溜息を吐かれた。何で?
納得いかない私に、さて!とロザリー様が空気を切り替える。
「いつまでも立ち話もいけませんわね。参りましょうか」
ロザリー様に促され、私たちはロザリー様の前に立った。すぐに転移陣が展開される。
「聖女宮に行きますわね」
ロザリー様の声とともに景色が切り替わる。
綺麗に整えられ様々な花が咲き乱れる庭園、その背後には瀟洒な宮殿が見える。
「ようこそ聖女宮に。お二人を歓迎いたしますわ」
そう言うと、ロザリーは艶やかに微笑んだ。




