守りたいもの
仲間の騎士たちが魔物の相手を引き受けてくれている間に、俺は半壊の建物の中に駆け込んでいた。
「ソフィー!ソフィー!!いたら返事をしてくれ!!」
ソフィーは男爵令嬢だが、平民を蔑視しない、心優しいお嬢様だ。
そして、平民の俺の・・・・・・恋人だ。
今日は卒業パーティに行くと言っていた。
夕方には終わるから、夜は身内でお祝いしようと言われて、俺は楽しみにしていたんだ。
男爵様も凄く良い人で、俺のことを認めてくれていた。
この国で貴族と平民なんて、天と地ほどに身分の差があるのに。
俺が貴族籍に入れないなら平民になるとソフィーは言ってくれ、男爵もどういう形であれ応援すると過分な言葉を下さった。
いざとなったら他国に移住するか。
何とか幸せになる方法を探そうとしていたのに・・・この騒ぎだ。
アリア様の映像にソフィーはいた。
隅の方で蒼褪めている彼女を見つけた時、俺は心配で胸が痛んだ。
アリア様が加護から貴族を外すとおっしゃった時は嫌な予感がした。それはすぐに的中した。
先輩に誘われて、王都外で訓練をしている時、断罪が始まり王都が光に包まれた。それから暫くして、魔物化したワイバーンが王都に飛んでいくのを見つけた。
これってヤバイんじゃないか?
居ても立っても居られず、俺は仲間に頼んで王城に駆け付けた。
皆も、殿下には憤っていたが、ソフィーを守りたいという俺の思いを後押ししてくれた。
ソフィーは良く差し入れをしてくれていたから、それもあったんだと思う。
そうして駆けつけてみれば、パーティ会場は半壊。魔物に今にも襲われそうな貴族たちは、誰一人、戦おうともしていなかった。
魔法を使える筈なのに、何をやっているんだ?
魔物は、あっさりと隊長がやっつけた。
元々滅茶苦茶強い人だったけど、アリア様から魔剣を頂いてからは人を超えたように思う。
魔術師との連携も良好。
アリア様のおかげで、俺たちは信じられないほど強くなったと思う。
魔物を瞬殺した隊長に見惚れていたが、それどころじゃないと思い直す。
「ソフィー!」
何度も呼びかけながら、建物の奥まで進むと、弱々しい声が聞こえた。
「・・・ディーンなの?」
「っ!ソフィー!!無事で良かった!!」
泣いていたのか、化粧が崩れて酷い顔になっていたけど、どこもケガをしていない。俺はほっとして強く抱きしめた。
「ディーン・・・ディーン!!」
「ソフィー、もう大丈夫だよ」
震える彼女を抱きしめて、何度も大丈夫だと囁いた。ゆったりと背中を撫でて、落ち着くように促す。
「おーい、見つかったかぁ」
隊長の声が聞こえる。
ソフィーにも聞こえたのか、ようやく顔を上げて笑顔を見せてくれた。
「行こう、ソフィー。君は俺が守るよ」
不思議そうな顔をするソフィーに、俺は違和感を覚える。
「いや、だって、もうここには聖女様の結界はないんだ。今みたいに魔物が襲ってきてもおかしくないよ。俺たちなら魔物の対処も慣れてるから・・・」
「えっ?結界が無いってどういうこと?」
「えっ?アリア様の・・・見てないの?」
話が噛み合わないけど、今説明してる余裕は無い。
「とにかく行こう?ソフィーのお父さんも心配だし」
そう言うと、ソフィーも頷いた。
ソフィーの身体に隊服を掛け、エスコートする。
仲間と合流すると、皆、無事を祝福してくれた。そのままその場を後にする。
「ま、待て!貴様ら、何処に行くつもりだ!」
座り込んでいる王子様が俺たちを呼び止めた。
でも、誰一人、それに答える気はない。
「どこでもいいだろう?俺らは守りたいものを守る。それだけだ。その中にアンタは入ってない」
剣を突き付け、隊長が傲然と言い放った。
それを見て俺は理解した。
王子様が引き金を引いて、アリア様が世界を変えた。これはもう止まらない。
どんな未来がやってくるのか見当もつかない。
でも、何があっても、この腕の中の大切な人を守りたい。
そう、俺は強く思った。
王子様が断罪してからここまで2~3時間といった所でしょうか。
もしかしたら、時系列で最速のざまぁかもしれません(笑)
ちなみに彼らは王都のお外で連携訓練をしていたので、集団転移に巻き込まれませんでした。
ソフィーちゃん、良かったね(;´Д⊂)
非番や用事で王都に居た騎士たちも残っているので、国民の安全は守られてます。




