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野良聖女~鎖が解かれたので自由に生きようと思います~  作者: 三川士ぱりぃ
ミルトランド王国編
20/45

呪いの正体



「呪いの元は館の中にある。邸内を自由に歩けるように道を作る」

「はい」

「『力のある形』というものがある。形により効果は違うが、今回は少ない資源を有効活用する方法を教える」


 ベルディモードは、館までの道上に模様を描いた。


「やってみれば理解しやすいだろう。この模様通りに聖石を置け。形と線の太さに注意しろ」

「六角形?」


 ベルディモードが描いた形は、正六角形が隙間なく一面に敷き詰められた画だった。


「今まで通りだ。やってみろ」

「はい」


 既に絵があるのでやりやすい。見たままを聖石に伝えて動いてもらう。すぐに、線に沿って配置が成された。

 でも、線は細すぎるし、穴は大きすぎるし、歩けるようには思えない。

 足を出してみるが、やはり線の上に踏み出すことはできない。


「師匠。進めません」

「では、魔力を流してみろ」

「?」


 言われるままに、聖石に魔力を流す。すると、線から魔力が漏れ出し、じんわりと広がった。そして各々の線から滲み出た魔力と繋がっていく。見る間に道が魔力の膜で覆われた。


「すごい」


 アリアは思わず呟いた。


「歩いてみろ」


 言われて足を出すと、今度は阻まれることなく足を踏み出せた。


「師匠!歩けました!!」


 喜ぶアリアにベルディモードが頷く。


「素材により適正な形は異なるが、今回はこれで問題なかろう。館にも同様の模様を刻め。自由に歩けるようになる」

「はいっ!」


 ベルディモードが描いた形を、白亜の館が建つ大地へ展開するよう指示を出す。

 心得たとばかりに、残りの聖石が動き、瞬く間に配置された。

 アリアが魔力を流すと、ぽぅ、と淡い光が館を一瞬包みこむ。


「では、行くぞ」

「あっ師匠!」


 さっさと歩きだす師匠の背中を、アリアは急いで追いかけた。



◇◇◇



 案内されたのは、巨大な倉庫のような部屋。そこに、巨大な山が幾つも聳え立っていた。

 唖然とするアリアの前に、何かが落ちてくる。

 カツンと硬質な音を立てて転がったのは、真っ赤な石があしらわれた指輪だった。

 拾ってみると、指輪から嫌な波動が伝わってくる。

 弱いけれど、間違いない。瘴気だ。


「呪いの指輪・・・」


 アリアは呪いを解呪した。

 この程度の弱いものなら、自分の中の聖魔力だけで祓うことができる。


「師匠」


 見上げると、ベルディモードも呆れたように連なる山を眺めて嘆息した。

 夥しい数の武具や武器、装身具。それらが雑に山と積まれている。


「これが『元』だ」


 これら全てに呪いが付与されていたの?

 あまりの量に唖然とする。

 たしかに、これだけの呪いグッズが纏めて置かれていたら、融合して煮凝り状になるかもしれないけど・・・。


 ガシャンと何かが派手な音を立てた。

 慌てて振り返ると、巨大な盾が転がっている。

 そこからも立ち上る瘴気。


「・・・呪いグッズを集めているんですか?」


 この趣味は無いと思う。そう思って師匠を見ると、心外とばかりに頭を振った。


「集めてない。つか、あいつらはまだ作り続けてんのか」


 呆れたように呟くベルディモードにアリアは首を傾げた。


「昔、魔王をやっていた時、魔王軍に錬金部隊がいた」

「魔王軍」


 ベルディモードが説明を始めた。状況を解説してくれるようだ。というか魔王軍って何それ気になる!

 そわそわし始めたアリアを、ベルディモードは完全に無視した。


「錬金部隊は後方支援部隊で、実働部隊に供給する魔具の武器や防具、装身具を作るのが任務だ。魔具は作成に失敗すると、呪いの魔具になる」

「これが全部失敗作・・・魔具作りって難しいんですね」


 素直な感想に、ベルディモードは片眉を上げた。


「伝説の宝具でも作るならそうも言えるが、その指輪や盾を見る限り腕が落ちたな。レベルが低すぎる」


 ベルディモードによると、様々な物質を配合して新しい物質を作り出したり、特殊な物質を媒介にして物質と魔法を融合させたり、そんな技術を錬金と呼ぶのだそうだ。高度な魔法や高威力の魔法を物質に定着させるのは、それなりに難しいようだが、先ほどの指輪と盾は”しょぼすぎる”らしい。

 ちなみに、呪いの威力は、付与しようとした魔法に比例するそうだ。


「まあ、そいつらが『失敗作』の処分に困って泣きついてきたから、この場所を提供してやったのだ。昔の話で、魔王軍を解散した時にここも封鎖したと思っていたが、未だに失敗作を送り込んでいるとは思わなかった」


 やれやれ、と肩を竦める師匠を見てアリアは思う。

 

(絶対、忘れてたよね!)


 だが、敢えて言わない。


「師匠はここを閉じないんですか?」

「別に構わんだろう。弟子が浄化するからな」


 楽し気に言われ、アリアは頷いた。師匠がやれと言うのに否やは無い。


「それに、聖石を利用せずに魔法を使う練習にもなるだろう。ここには『紐付き』のお前用に、システムとの繋がりを保つだけの聖石しか残していない。サポートは期待できないぞ」


 にやりと笑うベルディモードの意図を察し、アリアは気持ちを引き締めた。


 私は師匠の弟子として、これから色々と学ぶんだ。ここも鍛錬の場なんだ。

 よし!頑張るぞ!!


◇◇◇


 アリアの気合が斜め上に暴走したり、ベルディモードの想定外の事態が起きたり、師弟が(館の中で)様々な問題を巻き起こすのはまた別のお話。

 ───そして、師匠に呆れられ、面白がられ、二人の間に絆のようなものが育っていくのも、また別の・・・。





ようやく回想会が終わりました。


さて次は、殿下 WITH 貴族たちの近況です。

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