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野良聖女~鎖が解かれたので自由に生きようと思います~  作者: 三川士ぱりぃ
ミルトランド王国編
19/45

事後処理



「それでは、師匠から弟子に最初の課題だ」

「はいっ!」


 わくわくキラキラ、目を輝かせて返事をするアリアに、ベルディモードは言った。

 

「撤収」



◇◇◇



 密集した聖石に声をかけるアリアに、ベルディモードは軽い眩暈を覚えた。

 どうして指示が「国に戻るよ」だの「あっちだよ」なんだ。


「そんな曖昧な指示では、聖石も迷子になる。お前は引率して回る気か?」

「はいぃ」

「そもそも聖石のある場所が国だと理解しているか?『国に戻る』という表現は不適切だ」

「ふえぇ」

「お前が集めたんだろう。なら元に戻せるはずだな」

「そこまで考えていませんでしたぁ・・・」


 ベルディモードの眉が、ひくりと上がる。


「これだけの量、どうやって集めた」

「『集まれ』と『あっち行って』です・・・はぅっ」


 額を抑える師匠の圧に、アリアは悲鳴を飲み込んだ。


「・・・お前の『異常』の認識が甘かったようだ。『最上級の異常』だな。この非常識にどう教えるか・・・」


 眉を寄せる師匠に、蒼褪める

 

(・・・師匠を辞めるなんて言わないよね?)

 

 不安に心臓を逸らせていると、ベルディモードはアリアを手招いた。

 

「お前、イメージはできるか」

「イメージ?」

「そうだ。頭の中で具体的で詳細な絵は描けるか?」

「ある程度は?」

「では、手を出せ」


 差し出した手を、ベルディモードの右手が握りこんだ。

 大きくて少し筋張った、体温が低めのとても綺麗な手。

 驚くアリアに、ベルディモードは淡々と指示をした。

 

「聖石に行かせたい場所をイメージしろ」

「っ!はい」


 東の穀倉地帯。これから穀物が大きく成長する時期だから、大地が痩せぬよう早く戻って貰いたい。

 先日、聖石集めに駆け回った時の光景を思い出す。

 見渡す限りの平原に、青々と広がる小麦畑。吹き渡る風に煽られ、緑色の波が幾重にも流れていく。

 穏やかな光景を、ベルディモードの左手が作り出した鏡のようなものが映し出していた。


「これ・・・」


 まさに思い描いた光景だ。師匠を見上げると、頷いた。


「お前がイメージしたものを可視化した。中々イメージできている。ここに、足りないものを加えていくぞ」


 ベルディモードが指示を出す。

 

「どのように配置したいか言え。全体的か部分的か。どの程度必要か」

「えっと、全体的です。大地が痩せないように薄く、均一がいいです」

「お前の聖石に色を付けろ。イメージしやすい色。分かりやすい色。聖石を置きたい場所、置きたい量をイメージして色を重ねろ」


 聖石の色・・・白・・・分かりやすい色・・・清浄の青・・・。

 言われる通り、大地に聖石を薄く乗せる。


「範囲も具体的にイメージしろ」


 範囲・・・。

 余裕を持って、小麦畑をぐるりと囲う道まで。

 そう思ったら、映像の縮尺が変わった。広大な小麦畑と取り囲む道までが一望でき、その範囲がうっすらと青く色づいている。

 

「よし。これを聖石に伝えろ」

「?」

「このイメージを共有すればいい。共有は分かるか?」

「うん」


 イメージ共有を聖石にするなんて考えたことも無かった。

 他国の聖女のように、具体的な存在が無いため戸惑ったが、王城にあるという聖石にイメージを繋げた。

 頭脳なんだから、皆に周知してくれるよね?と思ったのだが。


「アリア。聖石は『一にして全、全にして一』だ。そこにいるのに伝えれば、全てに伝わる」

「へっ?」


 足元を指差すベルディモードに変な声が漏れた。

 聖石が見たこと、全部に伝わっちゃうの?じゃあ、地面を掘り返してドロドロになったのとか、毎日色々な聖石を捏ね回していたのとか、皆知ってるの?結構アホなことしてるし、ちょっと恥ずかしいかも・・・。

 

 顔を赤くするアリアを不思議そうに眺めると、ベルディモードは聖石道に視線を向けた。

 

「魔法を使う上で、結果を明確にイメージをするのが重要だ。同じ魔法陣、同じ術式を使おうとも、イメージを乗せた魔力を放てるかどうかで、結果は天と地ほどに変ってくる。見ろ。あそこが反応している。移動したそうだから指示をしてやれ」


 言われて見ると、一部分がほんのりと光っている。


「聖石はシステムとして一つだが、全てが同一というわけではない。多少だが向き不向きもある。あの辺は豊穣の加護が得意なのだろう。得意なものを送る方が効率的だ」

「はい」


 頷いて、立候補組に許可を出すと、その部分から聖石が消えた。


「後は勝手に指示されたとおりに動くはずだ。心配なら、後で見回ってみればいい。自分の目で確認するのも大事だ」

「はい!師匠はとても詳しいんですね!!」


 聖石についても、驚くほど知っている。

 尊敬の念を込めて見上げれば、何故かベルディモードの表情が曇った。


「師匠?」

「いや、何でもない。今の要領でこいつらに指示を出せ。あぁ、この館への道は糸でいいから繋げておけ。移動は転移陣を使えばいい。あと、館の分だけは残しておけよ」


 すっと、ベルディモードが手を振ると、地面に四角く線がかかれた。

 

「密度からいって、これだけ残せば十分だ。残りはさっさと撤去しろ」

「はい!師匠!!」


 そうして、人の生活拠点に次々と聖石を返していった。

 町や村、街道や畑、農場に狩場。そして残りは魔物の発生を抑えるため、国中に広く散らばって貰う。

 たぶん、これで元通りの筈だ。後で一応確認に行こう。


「上出来だ」

「っ!師匠が褒めてくれた!!」

「頭は大丈夫か」


 額に手を当てられ、アリアは飛び上がった。

 ひんやりとした手がとても気持ちいい。


「慣れない者がイメージを乗せた魔力を何度も放つと、脳が疲労して発熱するものだが・・・お前の頭は丈夫だな」

「その言い方、微妙に嬉しくないです」

「そうか」


 くくっと笑うベルディモードに、アリアも嬉しくなった。

 今まで称賛や嫌味の言葉は何度も受けてきたけど、真っすぐな評価と純粋な心配は初めてのことで、何だかくすぐったい。


「今日はこれで帰っても良いが、気になるなら見ていくか?呪いの元」

「!!!見たいです!!!」


 魔王すら取り込んだ呪いとは一体なんだったのか。すごく気になる。

 

「それではもう一仕事だな」


 ベルディモードはにやりと笑った。




あー終わらなかった・・・orz

意外とベルディモードさんが師匠してました。

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