プレゼン
ジャンルを異世界〔恋愛〕からハイファンタジーに変えました。
まったく恋愛に行きそうもないので。。。女子力ください。。。
魔王に考えを伝え、幾つか助言を貰ったアリアは、急いでミルトランド王国に戻った。
そして、聖女達に協力を申し込む。
《それって本当なの?》
「はいっ。北の外れの誰も近付かない場所に、呪いの武具や装身具が捨てられていて、それが災厄レベルにまで力を付けていたのを見つけたの」
《そんなものがあるなんて・・・》
「今まで北の外れに結界を張ることなんて無かったから、誰も気づかなかったと思います。私、国に張った結界を確認するために回ってて、偶々見つけちゃって」
《アリアちゃん、お手柄ね》
「いえ・・・国全体を結界で覆うなんて普通じゃないって言われて心配になっただけで・・・でも見に行って良かったです!」
嘘を吐くなら堂々と。そして、嘘の中に真実を織り交ぜろ。
詳細は語らず、嘘を塗り重ねるな。さっさと躱すか、分からないと逃げるべし。
魔王の教えを胸に、アリアは頑張った。
北の外れに災厄レベルの呪い。全部本当だ。
呪いの元は、呪いの武具や装身具と魔王が言っていたから、これも本当。
言ってないのは、そこが本来は国外の、遥か北の場所だってこと。
国全体を結界で覆うなんて普通じゃないって言われたのは本当。
今回のことにはまるで関係ないけど。
色々突っ込まれる前に、アリアは聖女達に協力をお願いした。
「この呪いは強力で、私だけで浄化するのは無理なの。だから、皆の力を借りたいんです。お願いします」
アリアのお願いに、聖女達は息を飲んだ。
《アリアちゃんが無理っていうほどなの?》
《そんなのに私たちが力を貸した所で、役に立つの?》
アリアの力は聖女から見ても規格外。
微々たる力を貸した所で・・・戸惑う聖女達に、アリアは力強く頷いた。
「うん。大丈夫。私に考えがあるの」
《考え?》
アリアはもう一度強く頷くと、説明を始めた。
「今回の相手はとても強力だから、何枚もの浄化術式を重ねて、強化して使いたいの」
《どういうこと?》
「うん。2つの浄化陣の間に増幅の強化陣を挟むの。そうやって、どんどん増幅していこうと思ったんだけど、自分の陣だけだと、込めた魔力が同じ所為か、計算よりも増幅しなくって。それに、たくさん陣を作ったら、それだけ魔力が分散しちゃうから、結局強化した浄化魔法を打つのと余り変わらなかったの。だから、皆にできるだけ魔力を込めた浄化陣を作って、送って欲しいの」
アリアのイメージが、ネットワーク越しに届けられる。
陣を通過する毎に、魔力が重なってどんどん増加する力のイメージ。なるほどこれなら力になれるかも。
「アレが形を持って襲ってきたら、ミルトランドだけじゃなくて、皆の国も被害にあうと思う。そうなってからだと、対抗できるか分からない」
アリアは煮凝り魔王の塊と、瘴気によって染められた大地と穢れた大気を聖女達に見せた。
怯えたような悲鳴が次々に上がる。
《なにこれ酷い!》
《よく無事だったわね・・・》
「うん・・・でも、何もできなかった」
悔しさが滲んだアリアの言葉に、聖女達は静かに首を振る。
《仕方ないですわ。あんなもの、誰も対処できるはずもありません。でも、アリア。あなたには策があるのでしょう?先ほど話してくれた計画。協力させて頂きますわ。何をしたら良いの?詳しく教えてくださる?》
一人の聖女を皮切りに、次々と協力の受託が成された。
「ありがとう!皆、ありがとう!!」
アリアは礼を述べ、浄化術式を伝えた。
魔王が教えてくれた、かなりの魔力を内包できるものだ。
《これはいつまでに用意すれば良いの?》
「私も色々準備するから、1週間後に決行しようと思ってる」
《意外と早いのね》
「ゆっくり準備して、今以上に力を付けられたら困るから」
《それもそうね。では、その間にできる限りの魔力を陣に込めておくわ》
「うん。ありがとう!お願い!!」
短期決戦の理由は他にもあるのだが、それは秘密。
《このこと、国王に報告したの?」
「してない」
《良いの?》
「うん、うちの国は平民に興味ないから」
アリアの言い様に、聖女達は苦笑する。
ミルトランド王国では、平民と貴族の間に超えられない壁がある。
それは、聖女として生まれたアリアも同様だ。
国王への謁見などありえないし、貴族を通さなければ訴状を上げることもできない。そもそも、平民のアリアの言葉を取り上げる貴族なんていないし、仮に聞いて貰えたとしても、結局問題は平民に丸投げだ。
「呪いが相手では、騎士の物理攻撃は効かないし、術式を使えない魔術師は戦力にならない。貴族は出てくる訳ないし、国王命令で派遣されたところで、戦ったこともない貴族がアレを見たら・・・」
聖女達は、先ほどの呪いの塊を思い出した。
幾つもの呪いが融合し、様々な負の感情を飲み込んで大きく育った災厄。
アレにとって、貴族などただの餌にすぎないだろう。
《そうね。私たちが対処するのが一番ね。下手な横やりを入れられる方が厄介だわ》
《そもそもアリアが対処できないなら、もう誰にも無理だもの》
自嘲気味に笑う聖女達に、アリアは眉を下げた。
自分は魔力はあるけど、それだけだ。
なまじ色々できてしまう所為で、根回しとか、協力を取り付けたりとか、そういうのが苦手だ。
お国柄もあるけれど、貴族にも王族にも伝手がないから、自分一人で解決できない事柄には途方に暮れるしかない。
自分が相談したり、頼ったりできるのは、仲間の聖女達だけ。
「そんなことないよ。皆にはいつも、凄く助けてもらってる」
ぽつりと零された言葉に、聖女達は微笑んだ。
《アリア、またあなたに負担をかけてしまうけど、私達も協力するから頑張りましょう》
《国の皆を守りましょう》
「うん!」
国の皆を守るのは当たり前だけど、仲間の聖女達も守るんだと思ったら、無限に力が湧いてくる気がした。
聖女というものは、守りたい人がいることで力が出せるのかも。
だとしたら、今の私は無敵の力を出せるはず!
聖女達の温かな後押しを受けて、アリアは改めて力を込めた。
「大丈夫。絶対に浄化してみせる!」
サブタイトルが思いつかなくて、アリアさんプレゼンしてるって思ってそのまま付けました。
脳内イメージを共有できるって便利ですね!




