呪いの館
これはヤバイ。
思わず顔を顰めた。
これほどに大量で強い呪いを見るのは初めてだった。
長い時を経て、どれほどの「仲間」を呼び込み力をつけたのか。
いくつもの呪いが融合し、癒着し、より大きな悪意を育て、何か別のモノに進化を遂げようとしている。
それは紛れもなく、生まれてはならない災厄。
─────これは、とてもじゃないけど手に負えない。
直感が危険を告げる。
急いで逃げた方がいい。
でも、足が動かない。
ここで私が逃げて、どうなる?
私以上に聖魔法を使える人がいる?
これを何とかできる人はいる?
今までに出会った人々を思い出す。
騎士達は勇敢だが、物理で呪いは倒せない。
魔術師達は、聖魔法どころか、通常の攻撃魔法すら使えない。
貴族は・・・戦いを知らない彼らは、恐れ、慄き、コレに力を与えて取り込まれる姿しか見えない。
このまま放置したら、きっと災厄が国を襲う。
自国だけじゃない。
仲間の、聖女達の国も、次々と災厄に飲み込まれるだろう。
そうなったとき、聖女達が力を合わせても抗えられるだろうか・・・。
抗う・・・そう考えて、アリアはぱちりと瞬きをした。
そうだ。
やっぱり、『今』何とかしなきゃダメだ。
一度に浄化できなくてもいい。
力を削いで、時間を稼ぐだけでもいい。
改めて視線を向ける。
大地も大気も瘴気に汚染されて黒く染め上げられている。
どこもかしこも、ぐずりと溶けかけて異臭を放ち、以前の様を伺うことすらできない。
その中で、館だけが威容を誇っていた。
黒い要塞のような出立は、それだけで見る者を威圧する。
あの館に本体がいるのだろうか。
近付いてみたいが、これ以上『国』を広げられない。
随分と、故郷から遠くまで来てしまった。
聖石本体には総量があるらしく、自分の幅分の細い道を作るだけで、国からかなりの聖石を移動させていた。
これ以上の融通は簡単ではないし、これほどに呪いの抵抗が強いとなれば、この先に道を通すのは無理だろう。
アリアは腕を組んで館を睨み付けた。
どうしたら効果的にダメージを与えられるだろう。
思考する視界の端で、もぞりと何かが蠢いた。
「何!?」
魔物?
敵?
警戒して、アリアは自分に結界を張った。
魔や、闇、不浄の者に大ダメージを与える聖結界だ。
そう簡単に侵入できないはず。
保険として、幾つかの聖魔法と属性魔法、さらに転移魔法を起動し、待機状態にする。
ぞわりぞわりと、穢れを周囲に撒き散らしながら、ソレは近付いてきた。




