プロローグ
寝ている時に思い浮かんだ作品を書いてみました。
拙い物語かも知れませんが、そこは温かい目で見て頂けたら幸いです。
とある夏の日。祖父の家に遊びに来ていた少年がいた。
「爺ちゃん。これって………本物?」
「ん? ああ、それは本物じゃぞ。その刀はな、山城家に伝わる代々家宝として崇められてきた刀じゃ」
祖父の言葉に興味が沸いた少年は、徐にその刀を手に取った。
その瞬間、少年を中心に眩いほどの光が迸り、少年を包み込んでしまった。
「ここって………」
僕は爺ちゃんが言っていた家宝の刀を手にしたら、真っ暗な空間に一人で立ってた。
「爺ちゃん‼ 爺ちゃん‼」
僕は頻りに爺ちゃんの名を呼ぶ。だけど、返って来るのは聞きなれた爺ちゃんの声じゃなく、若い女性の声だった。
「なんじゃ、五月蠅いのう………ん? なんじゃ、おぬしは」
その女性は所謂、大和撫子を体現したかの様な美人だった。
僕はその女性に見惚れてしまった。これが、一目惚れってやつだった。
「なんじゃ、童の顔に何か付いてるのか?」
「うわぁぁぁぁっ⁉」
いきなり僕の顔の前に女性の顔があったら、誰でも驚くと思う。
僕は驚いた拍子に、尻餅を付いてしまう。
「アハハハハ‼ おぬしは面白いのう………童に惚れたか?」
「ッ⁉ そ、そんなんじゃないよ‼ お、驚いただけだもん‼」
僕の言葉に女性は少し残念そうな表情をするけど、僕の思っていたことを当てられてしまい、逆の言葉を放ってしまった。
「そ、それで、ここはどこなの‼ 僕を元の場所に返してよ‼」
「………おぬしがここに来たのには理由がるようじゃのう……ちと調べさせてもらうぞ」
「ぼ、僕に何をする気だ‼ ま、まさか………同人誌の様に(ピー)なんてすることないだろうな‼」
「なっ⁉ わ、童はそんな事をする気はない‼ と言うか、おぬし………なぜ、そのような言葉を知っておるのじゃ?」
「……………」
女性の言葉に僕は顔を背けた。だって、僕だって男の子だもん。それぐらいの知識を持ってるのは当たり前じゃないか………多分。あれ? 僕が可笑しいのかな?
「なんじゃ、いきなり項垂れ始めよってからに………今の内じゃ、えい‼」
「えっ? あれ? 何も起きない?」
女性は僕の頭に手を置いた。僕は体を強張らせてしまうが、何も痛みを感じなかった。
「フムフム、そういう事か………おぬし、童の体を触ったな?」
「ふぇっ⁉ 女性の体を触ってないよ‼」
「ククク、違う違う。童の体と言うのは、刀の事じゃ。どうじゃ? 触ったか?」
僕は女性の言う通り、ここに来る前に刀を触っていた。
「うん、爺ちゃんが家宝として大切に保管されていた刀を触って、ここに来たんだけど………」
「そうか……」
女性はそう言うと、手を顎に乗せて何かを考え始めた。あれ、僕の事は放置なんですね………
「おっと、そうじゃった。おぬしに良い知らせと悪い知らせがある。どちらから聞きたいのじゃ?」
僕としてはどちらも悪い知らせとしか思い浮かばないのだけど………ここは良い知らせを聞いてからどん底に落ちるよりも、悪し知らせから聞いて這い上がろうと思った。
「悪い知らせからで……」
「おぬし、ここから出たら霊が見える様になる。霊と言っても、悪霊ばかりじゃない。守護霊と言う物がおる。それすらも見える様になる」
あれ、そこまで悪い知らせのように感じないけど………
「そして、ここからが悪い知らせじゃ………おぬしには童を使って悪霊を退治してほしい」
「は?」
え、待って。この人は今なんて言った? 自分を使って悪霊を退治してほしい? 僕に霊媒師になれと?
「僕は何と戦うの?」
「だから、言っておるじゃろう。悪霊を退治してほしいと」
聞き違いじゃなかった‼ 嘘だ‼
「僕に何を求めているのか判らないけど、そんなのお断りだよ‼」
「だが、おぬしにはここへ来てしまった定と言う物がある。おぬしがここへ来たことによって、悪霊と戦う事は定となっているのじゃ」
う、嘘だ………僕の中で嫌いな物ベスト5に入るものなのに………他に嫌いなものはって? 野菜、虫、自己中、怒っている時のお母さん、そして幽霊。これが、僕の中で嫌いなものベスト5だよ。
「安心せい。童が付いておる。童がおれば鬼に金棒じゃ‼」
女性は豊富な胸を張って、胸を叩いたけど………揺れる二つの山に僕は目移りしてしまった。
「………おぬし、どこを見ておるのじゃ?」
「え? わぁぁぁぁぁ‼ ご、ごめんなさい!」
女性にジト目で見られてしまった………気を付けないと………
「そ、それで良い知らせと言うのは?」
「話を変えよってからに………まぁ、良いわ。良い知らせと言うのは、おぬしの体の中に童が入る。いつでもおぬしと話をすることが可能じゃ」
はい、知ってました。なんとなく、そんな気がしてたけど………まさか、この人が僕の中に憑いちゃうなんて…………不幸だ‼
「おぬしはこれから元の場所へと戻るじゃろう………向こうでは時が止まっておる。おぬしが帰ったとしても、童を触った時じゃ。浦島太郎の様な事は無いから、安心せい」
その言葉だけで安心できないよ‼
「僕が戻ったらあなた………そう言えば自己紹介してなかったね。僕の名前は山城勇気。それで、あなたの名前は………」
「童の名は虎徹。かの有名な新選組局長の近藤勇が使っていたと言われている刀じゃ」
「でも、博物館かどこかに保管されていなかったけ?」
「それは、偽物じゃ。本物とすり替えられておってのう……近藤勇が亡くなる前に、近藤勇自身が偽物を打たせて作り出した模造品じゃ。そろそろ、時間じゃのう」
「また会えますか?」
僕は不安になった。もしかしたら、僕がこの場所から離れたら虎徹さんは消えるんじゃないかなって。だけど、それは違った。なぜなら
「安心せいと言ったじゃろ。童はおぬしと共におる。向こうへ帰ったら心の中で念じれば、童と話が出来る様になる」
僕はその言葉を聞いて、なぜか安心した。
「さぁ、時間じゃ。向こうへ帰ったら何もなかったようにするのじゃぞ」
虎徹さんの言葉を最後に、僕は気付いたら爺ちゃんの家で刀を持っていた。
「どうじゃ、重いじゃろ?」
「う、うん。確かに重いね…………爺ちゃん。お願いがあるんだけど………」
「なんじゃ、言ってみなさい」
僕は意を決して爺ちゃんと対面する。
「この刀を僕に譲ってくれない?」
「………勇気よ。おぬしはこの刀で何をするつもりだ?」
うっ、爺ちゃんの目が………あの優しい爺ちゃんの目がきつい。元軍人だったと言っていた爺ちゃん。その頃の感覚が戻っているのかも………でも、虎徹さんとの約束を守らないといけないし………助けて、虎徹さん‼
【呼んだかのう?】
『虎徹さん‼ 爺ちゃんに虎徹さんを譲ってほしいって言ったら、理由を聞かれたんだけど………』
【そうじゃのう………おぬしの目的を話してもおぬしの祖父が納得するかのう………ん? 待つのじゃ。そう言えば、おぬしの苗字は“山城”じゃったな?】
『う、うん。そうだけど………何か関係でもあるの?』
【なんじゃ、もっと早様に言うてくれんと………祖父に話しても大丈夫じゃぞ】
『いやいや、信じてくれないよ‼』
【当たって砕けろじゃ‼】
『そんな、無責任なぁぁぁぁぁ‼』
「それで、勇気よ。もう一度、問う。おぬしはこの刀を手にして、何をするつもりだ?」
「爺ちゃん。信じられないかも知れないけど………僕はこの“虎徹”を使って悪霊を退治しないといけないんだ‼ だから、僕にこの“虎徹”を譲って‼」
僕は深々と頭を下げて爺ちゃんにお願いをする。突拍子もない言葉に爺ちゃんが信じてくれないと思った。
「………そうか、勇気は虎徹に気に入られたか………勇気よ。頭を上げなさい」
爺ちゃんに言われて頭を上げ、爺ちゃんの顔を見たら………爺ちゃんの目がさっきとは違い、いつもの優しさを籠らせる目をしていた。え? もしかして信じちゃったの⁉
「勇気よ。少し待っていなさい」
爺ちゃんはそう言うとどこかへと向かってしまった。
【ね? 言ったでしょう】
『う、うん。でも、どうして爺ちゃんは信じてくれたんだろう………』
【それはじきに解る事じゃ】
虎徹さんはそう言ってくれるけど………もしかして爺ちゃんって昔は僕と同じ様に悪霊と戦ってたのかな?
それから暫くして、勇気の祖父が戻って来る。その手には一つの衣装を持って。
「勇気よ。今すぐにこれに着替えるのじゃ」
「え?」
勇気に手渡されたのは、昔の侍が着るような小袖、袴、羽織だった。
「着付けの仕方は爺ちゃんが教えちゃる。それ、着替えるのじゃ」
「う、うん」
祖父の言葉通り、勇気は小袖、袴、羽織を着こむ。
「さて、これで準備は整ったわい………勇気よ。おぬしはこれで良いのじゃな?」
「僕は定として受け入れるよ。どんなことがあっても悪霊を退治する‼」
勇気は祖父の言葉に強い言葉で返事をする。
「その言葉。信じるぞ‼ 勇気、付いて来なさい」
祖父はそう言うと、勇気を連れ歩き出す。
勇気はまじまじと祖父の家を見るのは、初めてだったので新鮮であった。
そして、二人は禁忌の扉として教え込まれた扉の前へと立つ。
「爺ちゃん、ここって禁忌の扉じゃなかったの?」
「確かに禁忌の扉じゃ………認められた者のみしか入れない。爺ちゃんはここまでじゃ。後は勇気。おぬしとおぬしの中に宿る虎徹との問題じゃ」
そう言うと、祖父は扉を勢いよく開けた。中は真っ暗で先が見えなかった。
「勇気よ。この先、何が待っておるのかはわからん。だが、儂は信じておる。お前が無事に帰って来るのを」
「うん、爺ちゃん。行ってきます‼」
勇気はそう言うと開け放たれた暗闇の中へと飛び込むのであった。
中は暗闇で、一寸先も見えないというのはこういう事を言うのだろうか……と、僕はこの時思った。
「おぬし、なにか違うと童は思うのじゃが?」
「うおっ⁉ いきなり話しかけないでよ……って、なんでここにいるの⁉」
僕の横にはいつの間にか虎徹さんがいた。相変わらず、綺麗だ」
「おぬし、気付かぬか?」
「なにを?」
「…………何でもないわい。さて、ここは懐かしいのう」
なにやら、虎徹さんはここに来たことがあるのだろうか?
「虎徹さん、ここに来たことあるの?」
「あるぞ。それはそれは童の前の主がここで試練をしたところじゃからな」
ま、まさか………僕はある事を考えていた。
「まさかって思うけど………このの空間の名前って……試練の間とか言うじゃないの?」
「おっ! おぬしは解るのか‼」
やっぱりでしたぁぁぁぁ‼ 色々なゲームとかに出て来るアレじゃないですか‼ なに、ここはゲームと同じなんですか⁉
「やっぱりなのね………それで、ここでは何をすればいいの?」
「そうじゃのう………向かってくる敵を切り捨てるのじゃ」
「はい?」
え? 待って……今この人はなんて言った? 向かってくる敵を切り捨てろ? いきなり過ぎて訳が分からないんですけどぉぉぉぉぉぉ⁉
「おぬし、ここに来る前に童を持って来ておるじゃろう?」
「う、うん。ここにあるよ」
僕はそう言って右手に握っている虎徹を見せる。
「それで、向かってくる敵を切り捨てるのじゃ」
「いやいや、僕は剣道もしていないし、剣術なんて習ってないですけど‼」
「そこは安心せい。童が指導してやるからのう」
何だろう、この不安感は………あと、胸を勢い付けて張らないで下さい……その豊富な山が揺れて目がそっちに行ってしまうんですけど………
「………おぬし…またドコを見ておるのじゃ?」
「え? あっ! いや、これは………」
ついつい見てしまった豊富な山に目をしている事がバレた僕は、虎徹さんにジト目で見られた……あれ? そう言えば、こんな事ってあったね。
「まぁ、良い。おぬし、敵が来たぞ‼」
「え⁉ いきなりですか‼ でも、まだ僕には見えn」
最後まで言う前に僕は何か固いもので体を横殴りされ、僕は何もできないまま横に吹っ飛んでしまう。
「な、なにが………」
僕は痛い頭を振って、僕を殴りつけた者へと目をやった。そこにいたのは………
〈グルルルルルルル〉
緑色の体をし、大きな体に手には木製の棍棒を握る怪物。そう、オーガが僕の目の前に立っていた。
口からは果てし無く、タラタラと涎が落ちていた。
「ヒッ⁉ こ、こんなの僕聞いていないよ‼」
僕は堪らず、逃げ出そうとした。だけど、足が竦んで動けそうになかった………あっ、僕はここで死んじゃうんだ………僕はそう考えていた。だけど、そう問屋は卸さなかった。
「おぬしは何をしておるのじゃ‼ その武器は唯の飾り物に過ぎないのか‼ 男なら、男気を見せるのじゃ‼」
虎徹さんが僕の前に立っていた。だけど、その手には何も持っていない。
〈グラァァァァァ‼〉
オーガは棍棒を振りかぶり、虎徹さんを叩き潰さんとしていた。
僕は………僕は……‼
「ウオォォォォォォォォッ‼」
気付いたら体が動いていた。虎徹さんを守る為に‼
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