クリスマス
初投稿です。高級料理店は行ったことがないので想像で書きました。
ちなみに友人用に勢いで書いた作品なので、それでも興味ある方はサラッと流し読みでどうぞ。
12月24日。今日はクリスマスイブ。カップルや会社帰りの人々が行き交う駅の前で、俺は大好きな人を待っていた。
女の子「シュウくーん!お待たせー!」
大きめのブラウンコートを羽織り、白の短パンに黒タイツという、なんともこっちが寒くなるような服装で叫んでいる女の子。白い息を吐きながら大きく手を振り、笑顔で俺の方へ走ってくる。俺の大好きな彼女、ハルだ。
ハル「シュウくんごめんね、待った?」
申し訳なさそうに、ハルが言う。
シュウ「ううん全然。こっちこそ、いきなり呼びだしちゃってごめんね。行こっか。」
俺はハルの方に手を差し出し、街に溢れる恋人たちのように俺たちも手を繋ぎ、歩きだす。
ハル「今日バイトって言ってなかった?」
シュウ「あーうん。なんか急に店長から夕方上がりでいいよって言われたから…」
俺は準備していたサプライズの事を気づかれないように答えた。
シュウ「急に連絡してごめんね…?ハルにも予定あったかもしれないのに…」
ハル「そうなんだ!ううん。今日は会えないと思ってたから、連絡きた時、すごく嬉しかった…!」
ハルは子どものような笑顔ですごく喜んでいた。その愛おしい可愛さで、俺も笑顔がこぼれる。
時計の針がもうすぐ7時を指している頃だった。
シュウ「…ハル。お腹空かない?」
ハル「そうだねー。でもこの辺りって、大学生の私たちが入れそうなお店なさそう…」
俺たちが今歩いてる所は、どこをみてもオシャレで、正直お金持ちがたくさん歩いてそうなお店ばかりであった。もう少し先まで歩けば、学生でも通えるようなお店が並んでいるが、今回はそうしない。
シュウ「うーん。そうだ、こことかどう?」
俺はあるお店を指さした。外装がすごくオシャレでSNS映えするようなレストランだった。
ハル「えっ?なんか高そう…」
シュウ「大丈夫!今日は俺が急に呼び出したから奢るよ。行こっ!」
ハル「えっ?シュウくんお金大丈夫なの?あっ…ちょっと…」
俺はやや強引にハルを誘導した。予約しているんだから、入らないわけにはいかないよ。なんてハルに言えるわけがない。
俺はこれから、忘れられないクリスマスをハルに贈れるよう、気合いを入れてお店のドアを開いた。
お店の中へ案内された俺たちは、言われるがままに席へついた。途中で上着を預かってもらう時には、慣れない事で少し戸惑ってしまい恥ずかしかった。店内には、スーツをきっちりと着た男性や、ドレス姿の女性など、綺麗に着飾ったお客さんがたくさんいた。
男性のウェイターがグラスへお水を注ぎ、席から離れたあと、そんな雰囲気に慣れないのかハルは小声で言った。
ハル「ねぇ…こういうお店初めてじゃない?なんかワクワクするね!」
どうやらハルは緊張どころか楽しんでいた。それを聞いた俺は笑いそうになりかけたが、なんとか抑える事ができた。そのおかげで少しだけ緊張がほぐれた。
シュウ「俺はワクワクじゃなくてドキドキだけどね…」
ハル「…もしかしなくても…予約してた?普通、こういうお店って予約とか会員制だよね?」
シュウ「まぁ…うん…クリスマスだし、なんかしたいなって」
俺はハルの問いに正直に答えた。
ハル「もしかして、今日のバイトも嘘?このお店予約する為の。」
シュウ「サプライズのつもりだったんだけど…さすがにバレやすいか。あはは。」
俺はおどけるように笑った。だが、俺のサプライズはこれではない。ここまでは想定内だ。
ハル「そんなバイトのフリまでして…私が来れなかったらどうするつもりだったの?」
少し怒ったような感じでハルは言った。
シュウ「…そこまで…考えては…なかったです…。ハルをびっくりさせられたら良いなって思っただけで…」
これは本心である。後のことは考えないタイプなので。
ハル「びっくりしたし、すごく嬉しかったよ?…でも、普通に誘ってほしかったかなー…。嘘でも…会えないの寂しいから…」
ハルは少し悲しそうな顔をした。そんな顔を見て俺は心が痛んだが、これもサプライズのためだ。ごめんハル…。
ウェイター「お待たせいたしました。こちら前菜の…」
予約していたコース料理が運ばれ始めたので、俺たちはいろんな話をしながら食事を楽しんだ。
・・・・・・
デザートを食べ終えた頃、俺は内心ドキドキしていた。サプライズに用意していたプレゼントを、いつ渡そうかタイミングを測っていたのだ。すると、ハルがお手洗いに行きたいと、席を外した。これはチャンスだと思い、すぐに近くのウェイターを呼び、打ち合わせをした。
シュウ「予定通りにお願いします。あ、あとお会計を。」
ウェイター「かしこまりました。」
数分後、ハルが席へ戻ってきた。
ハル「お料理すごく美味しかったね!初めてみたお料理とかもあったし、楽しかったなー。」
ハルは嬉しそうに言った。怒ったり、悲しんだり、笑ったり、なんとまぁ喜怒哀楽な彼女なんだ。そういう素直なところがハルの魅力の1つでもあるんだけど。
ハル「この後どうしよっか…?まだ時間あるし、一緒にイルミネーション見たいな?…」
シュウ「…その前に一つだけ、ハルに渡したい物があるんだ。」
俺がそう言うと、店の奥から1人のウェイターがこちらへやってきた。手には、ピンク色の小さい紙袋を持っていた。俺がその紙袋を受け取ると、ウエイトレスは静かに席から離れた。
俺は中に入っている、濃いピンクのリボンでラッピングされた、薄いピンク色の小さくて縦に細長い小箱を取り出した。
シュウ「今日はクリスマスだから、ハルにサプライズプレゼントがあります。」
俺は内心すごく緊張していたが、どうにか冷静を装いながら言った。
シュウ「これは俺からの、…大好きなハルへの気持ちです。受け取ってください。」
そう言いながら、ハルへ小箱を渡した。ハルは少し驚き、戸惑いながら、小箱を受け取った。
シュウ「開けてみて。」
ハル「…うん」
小箱を開けると中には、キラキラとしたピンク色のハート型が特徴のネックレスが入っていた。
ハル「キレイ…」
シュウ「ハルに渡したいアクセサリー探してたら、これを見つけてね。ハルはピンクが好きだし、ハートも似合うなって思ってこれにしたんだ。どうかな?」
ハル「嬉しい…!ありがとう!」
ハルは少し涙目になりながらも、すごく喜んでくれた。
ハル「ねぇ、今つけてみてもいい?」
シュウ「うん。…あ、ちょっと待って。」
ハルがネックレスをつけようとしたので、俺はとっさに席を立ち上がり、
シュウ「ちょっと借りるね」
と言い、小箱からネックレスを手に取った。
俺はハルの背後に回り、ネックレスをつけてあげた。すると女性のウェイトレスが手鏡を持って、こちらへやってきた。俺はお礼を言って手鏡を受け取り、ハルに見えるように手鏡を向けた。
ハル「かわいい…!」
シュウ「うん。すごく似合っててかわいいよ。ハルにピッタリだ。」
ハルは子どものようにすごく喜んでいた。その無邪気な笑顔がすごく可愛くて、俺も笑みがこぼれた。
俺は席へ戻り、ウェイトレスも手鏡を受け取りにきて、すぐに店の奥の方へ行った。ハルはネックレスをいじりながら、微笑んでいた。
ハル「ふふ。…あ、シュウくん。これ、いくらしたの?」
シュウ「それは聞かない約束…」
ハルが変なことを言うので、俺は笑った。
シュウ「あ、そうだ。そのネックレスの箱の、中敷きを取ってみて。」
ハル「…?…うん。」
ハルは小箱の、元々ネックレスがぶら下がっていた中敷きを取った。
ハル「これって…もしかして、手紙?」
中には箱にギリギリ入るサイズの、小さな手紙封筒が入っていた。
シュウ「開いてみて」
ハルは封筒から2つ折りの紙切れを取り出して開いた。
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俺のすごく大事な人 ハルへ
HappyMerry X'mas!!
付き合って半年になるのに、初めてのプレゼントになっちゃったね。
覚えてるかな?ずっと前にハルが「アクセサリーって身につけるものだから、貰ったらその人とずっと一緒にいるみたいだよね!」って、学校で友達と話してた事。俺は遠くから聞いてたんだ。だからいつかプレゼントしたいと思ってた。こんなに遅くなってごめんね。
今までも、これからも、ずっと大好きだよ。
シュウより
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2つ折りの紙切れは、手書きで書いた俺からハルへの手紙だった。
シュウ「今まで、良い贈り物できなくてごめんね。これからも、そのネックレスと同じように、君のそばにいてもいいですか?」
俺は微笑みながら、ハルに問いかけた。
ハル「…うん!…私もずっとシュウくんのそばにいたいな…!」
ハルは泣きながら、そう言った。俺はハルの手を握り、笑いかけた。
外では雪が降り始め、今日はホワイトクリスマスになりそうだった。今日は俺にとって忘れられないクリスマスになった。ハルにとっても、忘れられないクリスマスになると良いな……
end
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