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第三章 プロローグ

このページには挿絵が含まれています。

苦手な方はお手数ですが、

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 クインカーバロウ第二十三階層。


「……ふーむ、やっぱなんも見つからねぇか」


 今んとこ、この辺で目立ったイレギュラーが起きてないダンジョンっつったらここぐらいだからな。

 一応、何かしらの収穫があればと思って探索しに来たんだが……。


「にゃふふ、みたいだねー? ハクちーはどう? なにかこう……びびーっときたりしてる?」


「えっと……うーん、特にこれといっては……」


「そ、そうか……。じゃ、じゃあやっぱり、ここにはフリゲイトや、ふ、不落の難題に関わるものは無いってことなのかな……?」


「さてどうかねぇ。……つっても、俺の『傾向限界突破』でも引っかかるモンは無いみてぇだし……ま、とりあえず今回はハズレってところか」


 あくまでも今回は、な。

 この先もっと情報が集まれば、何か分かることがあるのかもしれんが……。


「それで……どうするのだイルヴィス? 人の気配もないし、このままゲートを経由して、別のダンジョンでのレベリングに移行するか?」


「うーむ、そうだなぁ……」


「……あれ? ……ねぇおっちゃんあれ……! あそこ……!!」


「? どしたよそんな急にひそひそと。……!」


 分かりやすく息をひそめだしたトリアの指先に視線を向けると、そこには数匹の魔物(モンスター)の影があった。


 ――ラッキーマウス。

 ベテランの冒険者ですら、数年に一度出くわすか出くわさないかってレベルのレア魔物(モンスター)だ。


 ラッキーなんて名前が付いちゃいるが、特別縁起が良いってワケじゃあない。

 むしろ直接襲ってくるようなことは無いにしろ、冒険者の亡骸を漁ったりするようなヤツらだしな。


 んじゃあなんで『ラッキー』なんて呼ばれてるかっつーとだ。

 恐ろしいまでに臆病者のそいつらは、生きている冒険者からは確実に逃げるために、マーキングに多量の魔素を使用する。


 つまり、その分EXP現象による実入りが大きいってワケだ。

 ……しかも三匹。いやホントにおいしいねこの状況は。


 っつーわけで。


「……逃がさねぇように一気にけりをつけるぞ? ……せーのっ!!」


挿絵(By みてみん)



 ……

 …………

 ……………………


 ダンジョンから帰還し、部屋に戻る。

 夕食を終えた後は、今日は全員、自分の家やら部屋に帰しておいた。


 最近なんつーか、誰かしらは部屋に泊まってるってな状況が多かったからなぁ。

 周りの評判……っつーのは今さらか。


 正直、それ以外に困ることは無いんだが……こう、けじめっつーか線引きっつーか、そういうモンがおっさん的にはどうにもなぁ……。

 ……いやまぁ『それこそ今さらなんじゃないの?』って感じではあるんだが。


 しかしあれだ、ラッキーマウスのおかげで無駄足にはならんかったが、結局今日は不落の難題なんかに関する収穫はなかったな。


 洗面台の前で歯を磨きながら、そんなことを考えつつ頭の中を少し整理する。




 一つ、『最期の(はこ)』。

 どこにあるのかも、どういうものなのかも、そもそも箱であるのかどうかすらわからん謎の物体。


 そんな怪しげなモンの噂を、何故かほとんどの冒険者は知っている。

 むしろ知らない奴の方が少ないぐらいだ。ホントにあるのかどうかもわからんなんて言われてるのによ。


 だがもし、それを手にするこがことができたヤツがいたならば……そいつは『この世界の全て』を手にするだろう、なんてことを言われている。




 二つ、『ジレンマの鍵』。

 とあるダンジョンで見つかった、日の高さによって形を変える一対の鍵と錠前。


 『まるで永遠に報われぬ恋人の様だ』なんて、詩的な表現をしたヤツもいる通り、その性質上、永遠に噛み合うことが無いそれは、それだけでいろんな人間の気を引いたりもする。


 もしも、鍵が噛み合うような時があったとして、一体何が起きるのか。

 俺としても、興味が無いと言えば嘘になるって話だ。




 三つ、『過干渉の炉心』。

 現在見つかっている最古の魔導炉と、その炉心となる三つの巨大な魔石。

 すでに魔石は枯れていて、一ミリたりとも魔力を生み出さない、のだが……。


 一説によると、魔石同士が力を打ち消すように干渉していて、魔力を生み出さないのはそのせいだ、なんて話もある。

 ……まぁお偉い学者さんたちの研究では否定されちまったらしいけどな。


 だが逆に、『無限に魔力を生み出す可能性』を見出したりする奴もいるわけで。

 さてどっちが正しいのか……ま、後者の方が浪漫があると思うがね。




 四つ、『夢幻の箱庭』。

 どこにでも在ってどこにも無い、しかし、どこよりも楽園に近い場所……か。


 ……本当にあの場所(・・・・)がそうなのか? と、左腕の紋様を見ながら考える。

 仮にそうだとしてだ、『楽園』っつーのは一体……。


 あの意味ありげな白い祭壇も気になるところだ。

 もう少し情報や手がかりなんかがそろってきたら、そういった部分もひも解くことができるかもしれんな…………主にエテリナがね?




 五つ、『天壌の恩恵ギフト』。

 異世界の勇者のみに与えられたと言われている、唯一にして究極の恩恵ギフト


 まぁ『異世界の勇者云々』って話ですら眉唾だったりするんだが……ひとまずそこは置いておくとしてだ。

 特別な恩恵ギフトと聞くと、どうしてもあの時のことを思いだす。


 ……『ウルトラ相思相愛』、そして、白い空間で出会ったあの少女。

 あれはやはり、ひょっとすると……。




 六つ、『ミストルノ手記帖原本』。

 冒険者なら知らない奴はいないであろう、古代文明の冒険者、ミストルノが残したといわれる一冊の手記帖の、その原本。


 一応、数冊の『写本』は見つかっているんそうなんだが……。

 聞いた話じゃ、そのどれにもまったく違う内容が書き記されているらしく、はたしてそれらを写本と呼んでいいのかって感じらしい。


 そんでもってなまじ有名な分、『これには何か意味があるんじゃないか』と、いろいろな憶測が飛び交っているってワケだ。

 おかげで写本ですら数千万の値がついている。……どうすっかなぁホント。




 七つ、『七大魔王』。

 『ホラー』『ドッペル』『ネイチャー』『パラダイム』『ワイルド』『バグ』そして『ソリッド』……。


 この辺じゃソリッド属の魔物(モンスター)は見かけないが、ともかく、ダンジョンに出現する各属性の魔物(モンスター)には、それぞれ頂点となる特別な魔王が存在する……んじゃあないかといわれている。


 これは『エリアボス』や『ダンジョンボス』なんかの存在が大きいんだろう。

 まだ最下層まで到達されていないダンジョンなんかには、そういったヤツらもいるのかもしれねぇな。




 八つ、『新種族』。

 俺達『ヒューム』やガングリッド達『オーク』、フーやシーレの『ハーフリング』や『フェアリー』……それらなんかとはまた別の、もう一つの種族。


 大昔には亜人がそれなんじゃないかと言われていた時期もあったらしいが……今は色々とはっきりしてるからな、亜人のルーツなんかも。


 だがそれでも、『もう一つの種族に関する記述』とも考えられるような痕跡が、各地の遺跡からも見つかっているらしい。

 亜人でないっつーならそれらは一体何なのか……と、そういう話だ。



 九つ、『大陸の(くさび)』。

 南極を除く世界の大陸それぞれに、まるで突き刺さるようにしてそびえたつ巨大な剣。


 俺も何本かは目にしたことがある……というかあれだ、ここアンリアットの周辺からでも、見通しのいい場所からはうっすらと一本確認できるからな。

 まぁそんくらいにはデカいワケで。


 武器なのか、建造物なのか、はたまたそれ以外の『何か』なのか。

 確認しようにも、特殊な空間によって近づくことすらできず、いまだに何一つとして解明されていないそうだ。




 そして最後、『入口の無いダンジョン』。

 南極の大陸『アンタルクティア』に存在する、透き通るような建造物。

 特に何か特別なモンが見つかったってワケじゃあないんだが……。


 だからこそそんな場所にあるそいつを、ただの『お飾り』だと断定するのは早計だ、なんて主張する奴は少なくない。

 入り口は『まだ』見つからないが、ここは重要なダンジョンの筈だ、ってな。


 ま、俺も今なら、そっちの考えに一票を入れたいところだ。




 冒険者の間でまことしやかに囁かれ続ける十の噂。

 通称、不落の難題。


 ……もっと力をつける必要がある。俺も、アイツらもだ。

 またあんな風に、奇跡的なことが起きるとは限らんからな。

 それに……。


「……気のせいじゃあ無い、か。まぁ考えられるのは……あん時の毒の影響だろうね、どうにも」


 鏡を見ながら、ため息とともに独り言を吐き出す。

 これ(・・)自体は……まぁまったく問題無いってワケじゃないが……。



「――やっぱ駄目(・・)になってきてるな、左目」



 ……俺としちゃあ、もっと気がかりなのはアイツらの反応だな。

 必要以上に気に病んだり、してくれなけりゃいいんだがね、ホント。

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