表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

78/230

番外編 ワールズレコード020:魔導

「……お、ネルネとハクも来たか」


「えへへ、ただいまですおじさま!」


 もうすっかりおっさん家に来るときは『ただいま』が定着しちまったね。

 ……まぁ最近は、それが結構嫌じゃなかったりするんだが。


「た、ただいまおっちゃん……。あ、あれ……? ほ、他の三人は……?」


「あぁほれ、あの黒い部屋にあった魔導器具、俺がコイツ(・・・)で使った後はもう、うんともすんとも言わなくなっちまっただろ?」


 左腕の紋様を、服の上からトントンと叩いて説明する。


「その辺も含めて、エテリナがもう少しいろいろ調べたいってんでな。念のためにクヨウに護衛を頼んで、ゲートでそっち行ってもらってるってワケだ」


「あれ? えっと……じゃあトリアさんも護衛に?」


「いや……アイツは『ボクもゲート使えるようになったらいろんな場所に楽してどうたらー』とか、のたまいながら二人についてったぞ」


「ああ……な、なんとなく想像がつく……」


 だろうなぁ。

 俺も同じ立場ならそう思うわ。


「ま、お前らも来たことだし、もう少ししたら差し入れでも持っていくか。とりあえずココアでも淹れるか?」


「あ、えっと、それならその、ハクはおじさまと同じものが良いなって……」


「そうかい? ……つっても、俺もなんとなく今は甘いもんが飲みたい気分でよ、結局ココアになっちまうけどな」


 返事をしながら粉末ココアに手を伸ばす。

 そろそろストックも少なくなってきてるな。また買い足しとかねぇと……。


「……ふふ、甘いものが飲みたい、か……。お、おっちゃんはやっぱり優しい……」


 ……さて? 何の事だかわからんね?



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 ワールズレコード020:魔導

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「……へぇ~、魔法と魔術ってそういう意味だったんですねぇ」


「そうなんだよ、俺もエテリナから聞いたばっかなんだけどな?」


 ココアの準備をしながら、この間の魔法の話をハクにも教えてやる。

 今度クヨウにも話してやろう。

 こう……先輩風を吹かしながらな。


「そういえば……えと、こういう冷蔵庫とかもそうですけど、『魔導』器具って言いますよね? なんで『魔法』器具じゃないんでしょうか……?」


「ん? ふーむ、そう言われるとそうだな……」


 あんまり考えたことは無かったが、確かに他にも『魔導』書だったり『魔導』士だったりと、『魔法』が使われない単語ってのはよく聞く気がするね。


「あ、ああ、それは……い、一応明確なくくり(・・・)があるんだ……。同じような話だと、ま、マジックアイテムなんかにも……」


「そうなのか? そういやネルネは魔学も専攻してたっつってたな」


 ネルネのスライム生成には、その辺の技術が必須らしいからな。


「俺も最近、そういう話を聞くのは結構楽しくてな。せっかくだし、ココアでも飲みながらいろいろと教えてくれよ」


「ふふ、う、うん、いいぞ……。といっても、わたしは、え、エテリナほど明るいわけじゃないけど、そ、それでもいいなら……」





「はいよ、二人とも冷たいので良かったよな? そんじゃあ早速……ネルネ先生、お願いします」


「! えへへ、お願いしますネルネ先生!」


「お、おっちゃん……!? そ、そういう呼び方はその……て、照れるから……!! は、ハクも……!!」


 手渡したココアをこぼさないように、ネルネが袖でぺしぺしと抗議してくる。

 ふはは、可愛らしい抵抗だよ、効かん効かん。


「まったくおっちゃんはもう……。こほん、そ、それで魔導のくくりだけど……、正直、普段は気にしなくてもいい……。わ、わたしたちも、こ、こうやって説明する時でもない限り、いちいち指摘したりしないし……」


 そういや……今考えてみれば、以前リィンねぇちゃんにマジックアイテムのことを色々聞いた時もそんな感じだった気がするな。


「く、詳しく話しだせば、い、一級魔学者の資格認定レベルの話になっちゃうからな……。わ、わたしも全部が明確に分かるわけじゃないし、か、かいつまんだ説明になっちゃうけど……」


 い、一級か……。

 そいつは確かに、俺の頭じゃあ理解できそうにないぞ……。

 かいつまんでくれるっつーなら、むしろ大助かりだ。



「た、例えばそうだな……え、エテリナが前に、ゆ、指先から火を出してただろ……? わ、わたしは出せないけど、こ、こんな感じで……」


 この前のエテリナのように、ネルネが袖の下で人差し指をぴんとかかげる。


「けど、そ、それこそエテリナなら指先に限定せず、てのひらだったり、杖の先からだったりと、い、いろんなところから火を出せるんだ……」


「あ、はい! エテリナさんの『ベールブラッド』や『エンペルソード』も、魔物(モンスター)さんの真上から発動してますよね?」


 前に『モックスモッグ』で目くらましを頼んだ時は、足元から煙が出てきたりしていたしな。


「も、もちろんそういった魔法を使うためには、く、空間把握や対象指定、環境設定や座標固定なんていうような、ふ、複雑な構成式を展開する必要があるんだけど……」


 ネルネがコンロの火をパチンとつける。


「ま、魔導器具を使う場合はそんなことを考えなくても、ゆ、指先一つで火を起こせる……。こ、これは、魔導器具の中にあらかじめ、そ、そういう術式や構造なんかを組み込んであるからなんだ……」


「お、あれか? これもエテリナから聞いた話なんだが、魔法使い用の装備品みたいな……」


「う、うん、今は似たような物だって思ってくれていいかな……。さ、流石にあっちの方が、こ、コンロよりは複雑だけど……」


 まぁそりゃそうか。

 そうでなけりゃ、杖なんかよりコンロを持ち歩く方がいいって話になっちまうだろうしな。



「と、とりあえず、ここまでの説明は、だ、大丈夫かな……?」


「はい! ハクもちゃあんとついていけてます!」


「よ、よかった……。そ、それで続きだけど……コンロなんかは操作は簡単だけど、か、火力を調節できるぐらいで、火を起こせる場所なんかは決まってるだろ……?」


「まぁ、仮に前面からぼーぼー火ぃだされても困るわなぁ」


 料理より先におっさんがこんがりといっちまうわ。


「ふふ、そ、そうだな……。そんな感じで、あ、あらかじめ術式なんかが組み込まれいる分、結果はある一定の範囲に収まるんだ……。ゆ、融通が利かないって言うと、少し悪く聞こえちゃうけど……」


「使い道が決まってるモノに関しては、とっても便利ってことですね!」


「う、うん……。は、ハクはやっぱり、か、かしこいな……」


「そんな、えへへ……!」


 ネルネがハクを優しくなでる。

 ほほえましいねぇホント。



「そ、そんな感じで、魔法まで万能じゃなくても、ま、魔力をある一定の決まった結果に導くことを『魔導』って言うんだ……。だ、だから、呪術や錬金術なんかで使う道具なんかでも、全部『魔導器具』って呼んだりするな……」


 なるほどなぁ。

 魔力を導くで『魔導』か……。


「他にも……た、例えばわたしのスライム……。ひ、ヒールスライムとパワースライムを混ぜたからと言って、りょ、両方の効果があるスライムが作れるワケじゃない……」


 ネルネのスライムは覆っている部分に効果を発揮してくれる。

 逆に言えばその部分にしか効果を発揮しない訳で……強力だが、そこが欠点だったりもするワケだ。


 ……いやまぁ俺にとっちゃ一番の欠点は、あの感触だったりするんだがね?


「わ、わたしのもあくまで『魔導』であって『魔法』じゃないからな……。ぎ、技術がもっと上がれば、そ、そういうこともできるようになるかもだけど……」


「……あれ? でもネルネさんの『スライムマン』は……?」


「す、スライムマンは実質、あ、あれでひとつのスライムなんだ……。だ、だから例えばあの中に、い、異常状態回復用のキュアスライムを混ぜ込んでも……」


「スライムの毒を無効化できるわけじゃあないってことか」


 エテリナ先生に魔法の説明を受けた時も思ったが……。

 そうそう都合のいい話は無いってワケだね。


「あ、あとは魔導書なんかも一緒で……魔法って言うのは、あ、新しく作るのはすごく大変なんだけど、すでに作られた魔法を参考にすれば、い、一から研究しなくてもその魔法を利用できる……。そのかわり……」


「きちんと中身を理解してないと応用が利かないどころか、いざっつー時まで使えない、か」


「さっきのエテリナさんのお話にもありましたね? 杖をロストした冒険者さんが魔法を使えないのはそのせいだって……」


 だから『魔導』書、なんだな。

 本当の意味でそれを『魔法』として利用するには、自身の努力が必須ってワケだ。



「と、とりあえず、くくりに関して言えば、こ、こんなところかな……。そ、それで、魔導に関する研究や開発を行ったり、そ、それを利用して戦ったりする人たちのことを……」


「あ! だから魔法使いじゃなくて『魔導士』って言うんですね!」


「ふふ……う、うん、そのとおり……! け、けどさっきも言った通り、別に普段は『これは魔法でこれは魔導』なんて気にしなくていい……。ど、どっちが優れているかって話でもないしな……」


 確かに、コンロなんかよりはエテリナの魔法の方が抜群に高度だと思うが、そのエテリナでさえ、あの黒い部屋の魔導器具を、完全に理解するのは難しいって話だったからな。


 何事も一長一短ってやつなのかね。




「……っと、ハク、もうカップ空じゃねぇか。おかわりいるか?」


 いつの間にか、結構話し込んでたみたいだ。

 差し入れを作るついでに、ココアのおかわりがいるようなら……。


「あ、えっと、せっかくですけどハクはもう大丈夫です。……えへへ、ハクのおなかの中、もうおじさまに注いでもらったものでいっぱいですから……!」


 頬を染めて返事をしながら、お腹の辺りを撫でるハク。

 あれね、ココアね。カップに注いでやったココアで、もうお腹いっぱいになったってことね。


「……!? あわわわわわ……!? お、おっちゃん……!? ま、ましゃか……こ、今度こしょ……!」


 お前もがっつり動揺してかみかみになってんじゃないよ。

 つーか、二人で同時におっさん家に来たこと忘れてんの?


 それともあれかな?

 それを忘れるほどにおっさん信用無かったりすんのかな?


 俺のことを慕ってくれてるとは思うんだが……どうにもそのあたりの認識だけは相変わらずなんだよなぁホント。

 こういうのも一長一短っつーのかね?


 いや違うか、はははははは。

 ……つらい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ