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番外編 ワールズレコード017: 冒険者カード

 冒険者ギルドのいつもの別室。

 フーがてきぱきと、色々な処理を済ませていく。そして……。


「……ほいっと、これで手続きはぜーんぶ完了や! そんでもってこれが……」


「ふわぁ……! 見てくださいおじさま! ハクの冒険者カードです!」


「あぁ、今までよく頑張ったなハク?」


 両手で自慢げにカードをかざすハクを撫でてやる。

 本当によく頑張ったもんだ。この歳で魔物(モンスター)と戦うとなれば、まったく怖くないなんてことは無いだろうに……。


「しかしホンマに大したもんや! ウチも十年ちょいギルドで働いとるけどな、この歳での本登録はこの辺り一帯でも二人目やで?」


「えへへ、ありがとうございます! でも、おじさまたちのおかげです! ハク一人じゃとても――」


 相変わらず謙虚でいい子だよホント。

 ……どこぞのポンコツ娘にも、ほんの少しぐらいは見習わせたいもんだね。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 ワールズレコード017: 冒険者カード

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「……お、終わったか?」


「はい、おまたせしました!」


 フーから冒険者カードを渡された後、ハクはまた別の部屋へと案内されていた。

 ギルド内の『紋章処置室』、ここでレベルクレストを施してもらうためだ。


 レベルクレストは本来有料だが、冒険者に本登録してから最初の三ヶ月は無料で施してもらえるからな。

 俺達にとっちゃ必要なもんだし、間口を広げるって意味でも効果的なんだろう。


 そんなことを考えながら、いつもの酒場へと向かうと……。

 どうやらエテリナはもう来てたみたいだ。



「にゃふー! ハクちーおめでとーう! どうかね初体験(・・・)の感想は?」


「えへへ、ありがとうございます! なんだかまだ少しだけじんじんして……不思議な感じです……!」


 右手ね、右手の話ね。……だからつっこまんぞ俺は、決してな。

 エテリナも、そんなニヨニヨした目をこっちに向けてくるんじゃないよ。


「とにかくま、最初はそんなもんだ、違和感も含めてすぐになくなるさ。……さてと、そんじゃあ早速やってみるか?」


「あ、はい! えっとなんだかどきどきしますね……!」


 一度小さく深呼吸をしてから、冒険者カードをレベルクレストにかざすハク。


 そのまま少し待てば……。

 真っ白だったカードに文字や数字が浮かび上がってきた。


「わぁ……! えっと……このLvっていうのがレベルで、MPっていうのがマナプールですよね?」


「そうだなどれどれ……レベル15で、マナプールは200弱か。この歳でこれなら随分と優秀だ、頑張ってる証拠だな!」


「えへへ、そんな……! えへへ、えへへ……!」


 しかしこの時点でこれとは……。

 駆け出しをすっ飛ばして初級上位、これならもう少し訓練を積めば、すぐにでも中級に上がれるはずだ。


 レベルアップ時のマナプールの増加量にも個人差があるからなぁ。

 身も蓋も無い話になっちまうが、才能と言っちまってもいいのかもしれん。


 俺のスーパー大器晩成は極端な例だとしても、レベルとマナプールは必ずしも比例するわけじゃあ無い。

 クヨウなんかは、それで随分悩んでいたみたいだな。


 それでも勇者候補なんて呼ばれるようになったのは……ひとえにアイツの努力の賜物だねホント。



「……あれ? えっとおじさま、こっちの方の数字はすごく低いんですけど……あ、あの、ハクひょっとして、あんまり……?」


 攻撃力なんかのステータス欄を指さしながら、少し不安そうな顔になるハク。


「おっと、違う違う、そいつも含めてちゃんと説明してやるからな。とりあえずだ、ほんの少しだけ肉体強化をしてから、もう一度カードをかざしてみな?」


「えっと、こうかな……? …………あっ! 数字が変わりました!」


 そう、これが冒険者カードの一番の利点だ。


「にゃふふ、レベルクレストはレベルだけじゃなくてー、本人のいろーんな状態を総合した数値を割り出してくれるからねー?」

 

「それを冒険者カードで読み取るってワケだな。そこでだ、肉体強化には大きく分けて三種類の『傾向』があるって話は覚えてるか?」


「えと、はいもちろんです! 『機能系』、『身体系』、『感覚系』……ハクが得意なのは感覚系ですよね?」


 うんうん、しっかり覚えてるみたいだな。


 心肺機能や代謝なんかを増強することで、体力や持久力といった能力を伸ばす『機能系』。


 筋肉や皮膚を強化することで、攻撃力や防御力、行動速度なんかを底上げする『身体系』。


 神経や脳なんかに作用して、反射や反応、集中力などを高める『感覚系』の三傾向だ。


「前にも少し話したが、そういう傾向にも向き不向きがあってな。そのへんのことも、カードがあるとぐっと分かりやすくなる」


「? えっと……」


「にゃふふ、例えばー、身体系と感覚系の強化のためにそれぞれマナを『1』ずつ流すとするでしょー? でもでもー、それで両方の数値が1ずつ上がるかと言えば……、にゃうーん、そうじゃないんだー」


「片方が2上がったかと思えば、もう片方は0.5しか上がらない、なんて風にな」


 体で覚えるってのも大事だろうが、やはり数値で表記されるとわかりやすい。

 冒険者はそれを確認しながら、自身にあった肉体強化なんかをを調整していく。

 一番の利点ってのはそういうことだ。


「もちろん細かく分けりゃ腕力や皮膚、つまり、身体系の中でも攻撃力や防御力なんかでの得手不得手もあったりするし、そもそもどの傾向もほとんど向いてないってヤツもいる」


「にゃふふ、他にも例えばー、ネルネルのスライムで強化しているときにカードをかざせば、その分の数値もきちんを上書きされるんだよー?」


「ふえー……、すごいんですねぇ……」


 本当に、レベルクレストは優秀で助かるね。

 だからこそ安くない料金で毎月更新してるわけだが……随分と世話になってるのは確かなんだ、今さら文句は言わんって話だ。


 ……ほんの、少しだけしかな。


 ちなみに、俺の冒険者カードはフーに細工をしてもらい、リミッターの解除段階に会わせてマナプールの数字も変動するようになっている。


 面倒なことにならないようにってのもあるが……やはりそのへんは俺の最大の武器であり、最大の弱点でもあるからな。

 まぁ、地下水路の魔物(モンスター)掃討のときには、やむを得ず晒しちまったがね。


 ……無意味に広まったりしないように祈るばかりだ。



「さてと次は裏面だ。見てわかるとは思うが、左側には恩恵(ギフト)が、右の欄にはパッシブスキルが、それぞれ表記されている」


 と言っても、ハクはまだガッチャから恩恵(ギフト)を授かってないからな。

 そっちの方は空白だが。


「えと、ハクのパッシブスキルは『先祖返り』と……あ、『成長率+15』があります! えへへ! おじさまと、ちょっとだけお揃いですね!」


 そんなちょっとしたことに、こんな嬉しそうな顔をするんだからなぁ。

 可愛らしいもんだよホント。


「あーオジサン良いなー! ……そうだハクちー! ウチとお揃いになるように、一緒にオジサンをうにゅぐ……!」


「……何を言おうとしてたは知らんが言わさんぞ? ん?」


 エテリナのほっぺをむにゅっと掴みながら口をふさいでやる。

 どうせこういう時はろくなことを言わんのだ。

 おっさんもう身に染みてるからね?


「……?」



「……あ、じゃあおじさま この左下の数字がもしかして、ハクの『スロット限界』なんですか?」


「お、よくわかったな、その通りだ。リィンさんとこでも調べてもらったが、ハクのスロットは六つみたいだな」


 装備品の紐づけ、それをを行える最大数を現す『スロット』。

 六つなら標準的ってところだ。

 うちじゃあ確か、ネルネが一つ多い七つだったな。


「ウチのスロットは四つだからねー。この格好もそれで仕方なく……にゃうーん、よよよ……」


「え!? そ、そうだったんですか……!?」


「おっと騙されるなよハク。コイツのこれは完全に趣味だからな。……エテリナお前も、テキトーなこと吹き込むんじゃないよまったく……」


「にゃふふ、まぁまぁオジサン! ほら、続き続き!」


「え? まだ続きがあるんですか? もう全部確認したと思うんですけど……」


 カードをくるくる確認しながら、ハクが疑問を口にする。


「にゃふふ、トリニャーのメテオパンチやウチの魔法とかの、いわゆるアクティブスキルは普通は表示されないんだけどー、ギルドに申請するとほら、こーんな感じで……」


 そんなハクに手ほどきをするように、エテリナが自分のカードの右側面をトントンと二回つつく。すると……。


「あ! 表示が変わりました!」


 ハクの言う通り、カードの裏側には、エテリナが使用できる魔法の数々が、ずらりと並んで表記されていた。


「にゃふー! アクティブスキルはスキル屋に頼んだり自分で作ったりする以上、どうしても申告制になっちゃうからねー?」


 流石のレベルクレストも、そこまではカバーしてくれんからな。

 自身の能力のアピールのために表記を希望するなら、クレストの更新時に申請する必要があるってワケだ。


「えと、じゃあおじさまも?」


「いや、俺はバッシュクラックもオーヴァクラックも申請していないぞ。その辺は任意だからな、そういうヤツも少なくない」


 実はと言えば、もう一つ新しいスキルをプログラムしているんだが……。


 ――『オーヴァボルド』。

 テンタクルグリーデアとの戦闘を教訓に作り上げた、俺の新スキルだ。

 ……つっても、まだ魔物(モンスター)相手に実践したことは無いんだよなぁ。


 いや、正確にはあるんだが、威力が高すぎて並の魔物(モンスター)じゃ相手にならん。自分で言うのもアレだがね。

 実践がぶっつけ本番にならんことを、これまた祈るばかりだよ。



「とりあえずはこんなところか、他にもいろいろと機能はあるんだが……まぁその辺は追々だな」


「はい、わかりました! ……えへへ、これでおじさまと同じ冒険者……ハク、とっても嬉しいです!」


 にこにこと大事そうにカードを抱えるハクを、もう一度撫でてやる。

 ……まったく、本当に嬉しいのは俺の方だってのによ。


 ハクだけじゃない。トリアも、ネルネも、エテリナも、クヨウも……皆が成長していく姿を見るのが、最近楽しくてしょうがない。

 ……口に出しては、なかなか言えんがね。


 そしていつか、ハク達が五人そろって『勇者』なんて呼ばれるような日が――。

 あぁ、待ち遠しくて仕方がないねホント。

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