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番外編 ワールズレコード016: 装備品

「……あ、ど、どうだったおっちゃん?」


「ああ、恐らくだが……他には特に目立った問題なんかは無さそうだ」


 アンリアットの地下水路。

 テンタクルグリーデアから冒険者たちを救出した後、俺はネルネ達をその場に残し、軽く当たりの様子を確認していた。


 つっても、目的はそれだけってワケじゃなかったんだが……。

 そんなことを考えながら、あの(・・)二人の様子を横目でうかがってみる。


 どうやら気絶している冒険者の隣に座っているようだ。

 確か、アイツらのパーティのリーダーだったか。

 

 しかしあれだ、ここでネルネに『どうだった? アイツらとなんか話をしたか?』なんて聞いちまうのも……まぁ無粋っつーもんだろう。


「そ、そうか、よかった……。と、トリア達の方は、だ、大丈夫かな……?」


「確かに気にはなるが……気絶してる冒険者(ヤツら)がごろごろいる現状、このまま放っていくワケにもいかんしなぁ……」


 ただでさえ、ランクSSなんていう想定外のイレギュラーが出現したんだ。

 もう問題なんて起きない、なんてことは言いきれん。


「まぁ俺がここに駆けつけられたのも、アイツらが俺を信じてくれたからだ。……それなら俺も、アイツらを信じるさ」


「う、うん、そうか……。そ、そうだな……!」


 今頃、後方で待機していた奴らが順次こちらにやって来ていることだろう。

 これで問題なく全員が合流すれば、今回のクエストは完了ってワケだ。


 ひとまず今は、クエストが無事に終わるのを待つとしよう。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 ワールズレコード016: 装備品

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「あ、そ、そういえばおっちゃん、あ、あそこなんだけど……」


 思い出したといった感じで、しゅうしゅうと崩壊していくテンタクルグリーデアの方を指さすネルネ。


 ダンジョン外で討伐された魔物(モンスター)は、こんな風に魔素へと還っていく。

 すぐに消えてなくなっちまうワケじゃないが……討伐直後から目には見えないレベルでも劣化が始まり出すため、素材採取なんかのうまみ(・・・)は無いに等しい。


 ので、ギルドはクエストと言う形で報酬を用意し、冒険者を募るワケだ。

 『たとえ無償でも、街を守るために戦うぞ!』なんて言うような、そんなヤツばかりじゃないからな。


 まぁそれは置いておくとして……。


「こいつは……ドロップアイテムか。しかしまたこれは……随分とデカい鎧が出てきたもんだなホント……」


 触手の中から見つかったのは二組の巨大な鎧だった。

 大きさから考えると……恐らくジャイアントの冒険者が使っていたってところだろうね。


「ま、こういうときのお約束だ、適正チェックなんかをしてみようかねっと……」


「あ……そ、それじゃあついでにわたしも……」


 鎧に手を当て、軽くマナを込めてみる。

 ……反応が無い、だめだな、どうやら俺には適性が無いみたいだ。

 まぁ適性があったところで、こんなデカい鎧なんぞ着て歩けんが――。


「…………あれ……? え、えと、おっちゃんこれ……」


「……え? まさか適正? あったのか?」


「う、うん……」


 まじかよ……。しかしよりにもよってジャイアント用の鎧だからなぁ。

 ただでさえ背の高くないネルネがこんなもんを着こんだとしたら……。


「…………ぷふっ」


「あ……!? お、おっちゃん今、わ、わらっただろう……! な、なにを想像したんだ……!? なにを想像したんだぁ……!!?」


 ぺしぺしと袖を振り回しながら抗議してくるネルネ。


「くはは……、いや悪かった、わるかったって……!」


「ぜ、絶対反省してない……! もー、お、おっちゃんはまったく……!」




「……まぁしかしだ、こいつはひょっとして、結構良いモンが出てきたんじゃねぇのか?」


 改めて、触手に埋もれていた鎧を確認してみる。

 うちじゃあ使えるヤツはいなさそうだが、リィンさんとこで査定してもらえばそこそこ良い値がつくかもしれん。


 しかも二組分ときたもんだ。

 いやー悪くない、悪くないねぇホント。


「そ、そうなのか……? お、おっちゃんはそういう、あ、アイテム鑑定みたいなこともで、できるんだな……す、すごい……」


「ん? いやぁ全然?」


「あ、あれー……?」


 拍子の抜けた様子のネルネが『どゆこと?』みたいな目で見上げてくる。

 ……まぁそんな『せっかく褒めたのに……』みたいな顔すんじゃないよって。


「つっても、テキトーなこと言ってるワケじゃないぜ? 鑑定なんかはできんが、それでも分かることってのはあるからな」


「わ、わかること……?」


「そうだな……例えばまずは、こいつらが結構古いもんだってことだ」


 見つかった鎧を、拳でこんこんと叩いてやる。


「自浄魔法のおかげで見た目からは分からんかもしれんが……こんな風に全身をほぼまんべんなく防護する、いわゆるフルプレートみたいな装備品なんかは、今じゃあ使う奴もいないからな」


 似たようなモンが無いとは言わんが、それでも関節部からなにまでってのは、もはや骨董品ってレベルだ。

 時代の流れってヤツだね。


「た、たしかにあんまり、み、見たことない形をしてるかも……」


「昔は鎧としての役目を重視して、こういうのが主流だった時代もあったみたいだがな。『対人戦はともかくとして、冒険者には向いてないんじゃないの?』なんてことを言われ始めたのがきっかけらしい」


 冒険者にとって『動ける』ってのは重要な要素だ。


 日数をかけてのダンジョン探索では言わずもがな、多種多様な魔物(モンスター)との戦闘ともなれば、臨機応変に体を動かせなければ命にかかわることもある。


 だからと言って関節や胴回りなんかの……いわゆる『急所』になりそうな部分を晒すなんてとんでもない、なんて声もあったそうだが……。


「装備品なんかに付与されている能力……『エンチャント』っつったか? 例えば防御力上昇の魔法が付与されているモンを紐付けて『装備』すれば、その影響は全身にいきわたるだろ?」


「う、うん……。わ、わたしの胸飾り(これ)とか、と、トリアの胸当てなんかもそうだな……」


「あれは『装備』って概念が生まれてからの副産物らしくてな。今ではそっちの特性を生かして、セパレートタイプの装備品+それに合わせた肉体強化をってのが主流になったってワケだ」


 おかげでエテリナのアレ(・・)でさえ、あんなぶっ飛んだ見た目でちょっとびっくりするぐらいには高性能だからなぁ。


「とはいえ、物が小さくなればその分、能力の付加なんかにも高度な技術が必要となってくる。実用性を考えると、ただ小さくすればいいってモンでもないらしい」


 そのあたりのことはリィンねぇちゃんからの受け売りだがね。


「ま、まぁ、か、仮にむやみやたらと小さくしても、そ、そんなにたくさん一度に装備なんて、で、できないしな……」


 ネルネの言う通りだ。

 詳しい原理なんかは俺には良く分からんが、『装備』によって人にアイテムを紐づける数にも限界があるからな。


 いわゆるところの『スロット』ってヤツだ。



「あーそんで話を戻すが……コイツが使われてたのが一昔前、つまり、その冒険者がテンタクルグリーデアに飲み込まれたのも一昔前だってのが分かりゃあ……」


「な、なるほど……。そ、そんな昔に、ら、ランクSSの魔物(モンスター)の触手に飲み込まれて、そ、それでもずっと形を保っているってことは、それだけい、良いモノかもしれないってことか……」


 まぁそういうことだ。

 持ち主だった冒険者はとっくに復活して、もう引退なんかしていたりするだろうがな。


「れ、歴史的背景って言うと、す、少し大げさかもしれないが……そ、そういったものからも、いろんなことがわかったり、す、するもんだな……」


 クソザコだった俺が稼ぎをあげるには、こういった知識も最低限必須だったからなぁ。


 ……ま、おかげでこの鎧の価値にも気づけたんだ。

 まったくのムダじゃあなかったんだと、思っておくとしようかね。



「……あ、あれ? で、でもおっちゃん……」


「ん? どうした? なにか引っかかることでもあったか?」


 俺の顔を見上げながら、小さく首をかしげるネルネ。


「んと……こ、これが良いモノかもってことは分かったんだが……い、今その、こういう装備品を使ってる人は、い、いないんだよな?」


「ん? あぁさっきも言ったが……まぁそうだな?」


「う、うん……。じゃあその……、つ、使いたい人がいないってことになるわけで……あの、も、もちろんひょっとしてだけど……! さ、査定してもらっても、あ、あんまり値打ちとか出ないんじゃ……?」



「……あ」



 ……まったくのムダじゃあなかったと、思っておきたかったとこだったんだがなぁ……。

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