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番外編 ワールズレコード011:ドロップアイテム

「……あのおじさま? トリアさんなんだかぐったりしてるんですけど……?」


「ん? 気にしなくていいぞ?」


 トリア達に声をかけてきたと言う謎の紳士。

 ……に、俺の風評被害を広めたトリアをくすぐり終わると同時ぐらいに、学校が終わったハクも酒場へとやって来た。


「えと、またいつものオシオキですか?」


「…………ウン、ソウダヨ?」


「あれ? なんだかカタコト……」


 実際にはお仕置きというか腹いせだったりするんだが……まぁほら、経緯的には似たようなモンだしね?


「でもそっか、オシオキ……。――あのおじさま、ハクこのあいだ、お友達と一緒に学校から帰ってたんですけど……」


 少々神妙な面持ちで、口を開くハク。


「その時にその、か、かいぐい(・・・・)というものをしてしまったんです!」


「え…………、ああ、そうなのか?」


 うん、良いじゃないか、学校なんかはもちろん良い顔はしないだろうが、それもまた青春の一ページってやつだ。

 ……でもなんでその報告にそんな気合い入ってんの?


「はい、そうなんです! ……ハク悪い子ですか? その、オシオキ、されちゃいますか……?」


「ああそういうことか……。んなことねぇって、オレがガキの頃なんて、もっとやんちゃもしてたもんだよ」


 自分もお仕置きをされてしまうのかが心配になったってところだろう。

 ……しかしこういうこと言うと『年寄りくさい』とか言われちまうのかね?


「あ、あれ? でもそうなんだ……やんちゃなおじさま、ふふっ……! ……あ、そうじゃなくて! えと、じゃあこの前おじさまがソファでうたたねをしていた時の話なんですけど……」


 うん? まぁよくやっちまうことだが……。


「起こしちゃいけないって思ってたのにその……寝ているおじさまのほっぺたをツンツンしてしまったんです! ハク悪い子ですよね……? オシオキ……されちゃいますよね……?」


 怯えたような、潤んだような瞳をこちらに向けてくる。

 ……なんつーか、よっぽどくすぐられたくないんだなぁ。


「心配すんなっての。そんなことぐらいで怒りゃしねぇよ、よーしよし……」


「あ、えへへ……は!? な、撫でられるのは嬉しいんですけどそうじゃなくて……、その、そうじゃないんですぅ……」


 ……? 



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 ワールズレコード011:ドロップアイテム

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「…………ん~トリアちゃんふっかつ!!」


 ぐったりとしていたトリアが唐突に息を吹き返す。

 ……きっかけがどうのとかは考えたら負けだ。いつもこんな感じだからな。


「ほらほらおっちゃん? 復活したボクを称えて、『さっきは悪かったな』って愛でてくれてもいいんだよ? そうすればおっちゃんも幸せに……」


 おいなんか怪しい宗教家みたいなこと言いだしたぞコイツ……。


「復活……。あの、今回の噂は教会で復活した人の装備品がきっかけですよね? そんな風にダンジョンで見つかった装備品って、その後はどうなるんですか?」


 そういや、その辺のことはまだ教えてやってなかったか。

 エテリナの様子を見に行ったネルネとクヨウもまだ少しかかるだろうし、この機会にいろいろと説明しておくのも良いだろう。




「あーとまずは……そうだな、冒険者がダンジョンに潜るときはいろんなモンを持っていくだろ? 武器、装備品、マジックアイテム……他にもいろいろだ」


 自分のナイフなんかを一つ一つ指差しながら、丁寧に説明してやる。


「魔法薬なんかの消費アイテムなんかは別として、そういったモンを全部(・・)持って帰れないってことも少なくない。単純に落っことしたり……あとはまぁ、死んじまったりとかな」


「いわゆる『アイテムロスト』ってやつだね!」


「お、珍しくちゃんとしたことを言うじゃねぇか」


「えへへー! …………あれ? 今めずらしくって言わなかった?」


「ん? 言ってないぞ? でだ、そういったアイテムなんかはダンジョンの糧になったりするんだが……その糧ってのにも色々あってな、文字通り素材になったり、特殊な魔物(モンスター)のエサになったり……」


 今回のように装備品を拾って使う魔物(モンスター)もいれば、何故か体内に硬貨をため込むような良く分からんヤツもいるからな。


「ぜったい言った……いいもん、今度おっちゃんが寝てるとき、お腹クッションにして座ってやるもん……。それとあれだよね? たまにある宝箱の中身もそうだったりするよね?」


 おい、ぼそりと嫌がらせを計画するんじゃないよ。


 冒険者をおびき出すためのエサと言われている宝箱。

 たまにダンジョン内で見かけるもんだが、トリアの言う通り誰かがロストしたアイテムが入っていることは珍しい話じゃない。


 ……まぁ中にはミミックなんて直接的なヤツもいるんだが。


「そんなワケで元の持ち主を探すのは難しいことが多いからな。基本的にはどんな状態であれ、ダンジョン内で拾ったアイテムは拾ったヤツの物になるんだ」


 前にも話したが、その辺も含めて『自己責任』ってヤツだ。

 冒険者なら、覚悟も対策もしなけりゃならん部分だな。


「それらを総称して『ドロップアイテム』って言ってな、そん中でもマナーっつーか、越えちゃだめだろって一線があるんだが……まぁ冒険者もピンキリだからなぁ、平気でそいつを乗り越えるようなヤツもいるんだよ」


「一線……ですか?」


「あーなんだ……冒険者の亡骸からな、こう……アイテムなんかを盗んでいくようなヤツもいたりしてな?」


「えぇ!? えと、そ、それはちょっと……」


 だよなぁ。

 いくらなんでも、あこぎっつーか……。 


「ま、『流石にそれはどうなの?』ってことで、俺達が生まれるずっと前に一つの対策が取られるようになった。……それが『装備』の概念だな」


「え、そうなの? そっかあれってそういう意味もあったんだ」


 ……おい現役冒険者?

 お前はのそういうとこはホントにアレだぞ? ん?


「装備っていうと……武器や防具、一部のマジックアイテムなんかに対して、その人のマナで『紐付け』をするっていう……」


「お、覚えてたか、偉いぞ?」


「そんな……えへへ……」


 ハクのボウガンを選びに行った時にも、もちろん装備をしてもらったからな。

 

 紐付けは俺もできない訳じゃないが……やっぱりプロに任せた方が安心だ。

 リィンねぇちゃんは『ここで装備していきますか?』なんて気を利かせてくれるからありがたいね。



「装備されたアイテムは、たとえ適性があっても本人にしか使えない。武器や防具の他にも、例えば特殊なアイテムバッグなんかを『装備』しておけば、中のアイテムを漁られたりすることも無いってワケだ」


 初心者の冒険者なんかに『装備品は装備をしないと意味がないよ』なんて言われるのはこれが理由だな。


「とはいえ、装備品の紐付けは教会復活の際には解除されちまうんだが……それでも露骨に死体をあさるような奴はだいぶ減ったらしいぜ?」


「減った? 無くなったんじゃなくて?」


 トリアの疑問はもっともだ。

 俺もそう言いたいところではあるんだが……。

 

「いやそれがなぁ……今度は冒険者の亡骸ごと(・・)盗み出して、復活による肉体の回収がされた後、残ったアイテムを……てヤツなんかも出てきたそうだ……」


「えー!? …………………………えぇ……」


 露骨にひいた顔で俺を見るんじゃいよ。

 つか、俺だって話してて気分が良いワケじゃないっての。


「ハクはまだ見たことないだろうが、『棺運び』ってのがいてな。棺型のマジックアイテムで、やられちまった冒険者を運び出すことを生業としてるんだが……」


 そうやって運んだ本人や依頼者、時には冒険者ギルドからの報酬で生計をたててるってワケだな。

 中には専属契約を結んでるようなヤツもいるそうだ。


「ボクは一回だけ見たことあるけど……なんていうか、棺がふよふよ浮きながら一列に後ろをくっついていくあの光景は……」


「まぁ確かに、良くも悪くもちょっと胸焼けしそうなぐらいにはインパクトがあるよなぁ……」


 いやホント、一冒険者としては頭が上がらんのだけどね?

 ……なるべくなら、お世話にならずに越したことは無いんだがな。


「まぁとりあえずそれは置いといてだ。その棺運びに成りすまして亡骸を回収し、さっき言ったようなことをするヤツらってのもいるワケだ」


「えっと……それは装備みたいな対策はあったりしないんですか?」


「残念ながら、色々な要素も相まって『決定的に完璧な対策』ってのは無いんだよ。はっきり言っちまえばな」


 冒険者ギルドも、クエストを依頼する棺運びは厳選しているそうだが……。

 というかそもそも、装備状態のアイテムでも構わず持っていっちまうヤツってのもいるからなぁ。



「そういった意味でも、やっぱり『死』ってのはこの上なくリスキーなんだよ。『どうせ復活できるから』なんて、身の丈に合わないダンジョンに潜る奴もいるが……少なくとも俺はどうかと思うね」


「じゃあやっぱり、きちんと準備をして『生きて帰ること』が一番の対策ってことですね!」


「おぉ! うんうん、ハクってばイイことを言うねー?」


「えへへ、実はおじさまの受け売りなんです! ベッドの上でそう教えてもらって……あのときはとっても気持ちよくて、ハクすぐにイっちゃいました……!」


「そうなんうえぇおっちゃん!!? まさか今度こそ!? 今度こそなの!?」


 はい油断してたー。おっさん完全に油断してたよー?

 まさかこの流れからそう来るとは……。


 訓練中にふらついたハクをベッドで休ませながら『無理をしすぎるのは良くないそれはダンジョンでも同じことだぞ』と頭を撫でながら教えてやったら気持ちよくてすぐに夢の世界へ行っちゃったわけだ。


 ……なんて、そんな風に全部説明したところでなぁ。

 逆に言い訳くさくなっちまわない? ねぇ?


 色々とめんどくさくなった俺は、とりあえず『誤解だぞ』とひとことだけ口にした後、悪気の無いハクのほっぺをぷにぷにとつついてやる。


「あ、あれ? あの、おじさまなにを……? えっとその、えへへ……」


 しかしなぜかハクは嬉しそうだった。




 そろそろネルネ達も、エテリナを連れてやってくるころだろう。

 ……そういやウィーグルモールへ向かう前に、リィンねぇちゃんのトコにもよらないとな。


 踵の道標(ホームカミング)。……懐は痛むが得体の知れん噂を相手にする以上、高説を垂れた俺が準備を疎かにするってワケにはいかんからなぁ。

 最近いろいろあったおかげで、高ランク魔物(モンスター)の素材の換金もしておいて助かった……いや、それもどうなのって話だけどね?


 しかし死人を漁るのは御免だが、倒した魔物(モンスター)から素材を収集する技術なんかは、もう少し磨いておいてもいいのかもしれんね。

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― 新着の感想 ―
[一言] あいかわらずハクちゃんは主語が足りないなぁw 湯婆婆にでも盗られたの?(笑)
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