番外編 ワールズレコード010:禁止指定アイテム
「しかし、まさか本当にシャグヤス家が動いてくれるとはなぁ」
冒険者ギルドから部屋へと帰る途中、事件を振り返りながら改めてそう思う。
……正直、演技とはいえシャグヤスの名を出すのは気が引けた。
ハクにとっちゃいろいろと思うところもあるだろうし、俺自身、ハクの扱いに憤りなんかを感じていたりもする。
なのにこういう時だけ頼るってのも都合がいい話だし、そもそも、それきっかけでまたハクへの当たりが強くなるんじゃないか、なんて言う懸念もあった。
だが……。
『きっとハクがお願いしても、おとうさまのお力は借りれないと思います。……でも、そう思わせることぐらいならできるんじゃないでしょうか?』
そう口にするハクの目は随分と真剣で、ハクはハクなりに、あの少女たちに対して少しでも何かをしたいのだと訴えかけてくるもんを感じた。
そういった気持ちってのはやっぱり尊い。
できるだけ何とかしてやりたいなんて思っちまうほどにはな。
……なぁハクの親父さんよ、アンタはそんな風に思ったりしないのかい?
それとも――。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ワールズレコード010:禁止指定アイテム
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「首輪の元になったアイテム……えと、隷属の首輪でしたっけ? 禁止指定になっているとはいえそんなものがあるなんて、ハク、ちょっと怖いです……」
すっかり溜まり場と化した俺の部屋で、ハクがポツリとそうこぼす。
確かにこれくらい歳の子にとっちゃ、『奴隷』なんて単語自体が結構衝撃的なもんだろう。
「そうだよねぇ、いくら奴隷が欲しいからってそんなの……」
「……いや、なんつーかそいつは逆なんだよ。本来はな」
「え? えと、逆……ですか?」
俺の言葉に、きょとんといった様子で反応するハク。
「奴隷と呼ばれてでも生きていく術を確保したいヤツってのは少なからずいるからな。……良いか悪いかは別の話として、もともと隷属の首輪はそういうヤツらのために開発されたんだよ」
「にゃふにゃふ、一年っていう期間もー、装着者の体やマナとなじませるための時間っていうのもあるけど……一番の理由は『意思の表示』だしねー?」
「い、意思の表示……?」
「そうそう! 本来の隷属の首輪はー、本起動するまでは自分で外せちゃうんだー」
首輪をとるような動きをしながら説明するエテリナ。
「……なるほど、あくまでも自分の意思で一年間首輪を装着し続けることが、本来の起動の条件だというわけか」
まぁそういうワケだ。
『自分はそこまでしてでも貴方に仕えます』ってな感じで、自身に付加価値をつけるワケだな。
もっとも、強引なやり方でそれをさせる奴らなんかが現れ始めたもんで、禁止指定になっちまったらしいんだが……。
「それにしてもー、『お前は俺の言うことを聞いてりゃいいんだよ』だって! にゃーん、オジサンきちくー!」
「ねー? ……は!? まさかおっちゃん演技がうまくなったんじゃなくて、本当にボク達のコトそういう目で見るようになってきたんじゃ……!?」
「……お前ら後で覚えとけよ」
おもっくそにくすぐり倒してやるからな。
「禁止指定アイテムっつってもいろいろあってな。例えばほれ、ひと月ちょい前ぐらいか? どっかから盗まれたって話があっただろ?」
「あ……! え、えっと『強制的な運命論』だったか……? 新聞なんかでも、け、結構大きく取り上げられてたな……」
強制的な運命論。
魔物だろうが人間だろうが動物だろうが関係なく、持ち主の意のままに操ることができる、なんていう恐ろしいアイテムだ。
……いやホントにヤバいやつだろコレ。
盗まれたとか何やってんの。
まぁおいそれと使えるようなもんでもないらしく、そこまで警戒する必要はない、なんて言われちゃいるが、それでもなぁ……。
「あれはダンジョンから見つかったアイテムみたいでな、実験で効果が判明した瞬間、『あ、これヤバい』っつって即座に禁止指定になったそうだ。他にも……」
「にゃふふ、オジサンの背中の一坪もー、一昔前までは禁止指定アイテムだったらしいよねー? 密輸や窃盗、他にもいろいろな犯罪の温床になるーって」
「あぁそうだな。まさにコイツみたいに、いろいろと対策をとられた後に禁止指定を解除されるもんもある」
今でこそ、マジックアイテムの新規開発には、厳しい制限や審査なんかがあるが、昔はそういったもんが雑というかザルもいいとこだったらしい。
「でもでもー、オジサン結構詳しいね? 魔法関係とかには疎いーっていってたからー、にゃふふ、ちょっと意外ー」
「ふふふ、まぁな」
実はと言えば、あれからもリィンさんとこでいろいろ話を聞いてるおかげなんだが、……まぁそれは黙っておいてもいいだろう。
威厳ってほら、大事だしね?
「……む? そういえばイルヴィス、そんなブレスレットなどつけていたか?」
「ん? あぁ、こいつは……」
「……お、おっちゃん……? ま、まさかまた衝動買いを……」
「いや違うって! 今回はちゃんと考えて買ったから! 考えて買ったから!」
いやホントだよ?
だからそんな目で俺を見るのはやめておくれ?
「と、とりあえずそこんとこは置いていてだ、これはちょっとしたマジックアイテムなんだが……まぁそんなことよりほれ、カッコイイだろ? ん?」
俺は皆に見せびらかすように少し袖をずらす。
「……ナイフの時も思ったけどさ、おっちゃんの趣味ってちょっと子供っぽいとこあるよね?」
「あぁ、な、なんとなくわかる……。基本学校を卒業したての男子とかが、す、好きそうって言うか……」
ぐっ、コイツらまでウリメイラやフーみたいなこと言いよって……。
いいや! コレの良さが女にはわからんだけだ! きっと男ならわかってくれるはず……!! ……ガングリッドのヤツが帰ってきたらちょっと聞いてみよう。
「あ、あのおじさま! ハクはかっこいいって思いますからね? えっとその……、そう! ぎ、銀色ってところとか!」
「は、ハク~! そうだよなぁ? カッコイイよなぁ? よーしよし……!」
「えと、えへへ……」
なんだよ、ちゃんとわかってくれるヤツもいるもんじゃないか!
いやなんというか、嬉しくなっちまうねホント。
「あーあ、またハクはおっちゃんを甘やかして……」
「ま、まぁ……どっちも笑顔だし……い、いいんじゃないか……?」




