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番外編 ワールズレコード009:ダンジョンその2

「えぇ!? じゃあ仲間に裏切られちゃったってコト!?」


 首輪を破壊し、怒涛のあーんによってなんとか食事を終えた後、クヨウが首輪を装着された経緯なんかを話し始めた。


「あぁ、最初はケインからの申し出がきっかけだったのだ。自分の仲間にならないか、とな。……今思えば『自分のモノにならないか』と、そう言っていたのだろう」


「んにゃぁ……で、それを断ったクーよんの仲間を懐柔して……」


「結果があの首輪というワケだ。……まぁ仲間といっても、その時にはすでに随分と疎まれていたようだったがな。私はどうにも融通が利かないというか、頭が固過ぎるらしい」


「そうかぁ? 俺にはそんなことは無いように見えるが……」


 むしろコイツのチョロさは心配になるレベルだしなぁ。

 割とおっさん本気でそう思ってるよ?


「そ、それは、その……相手がお前だからだというか、ごにょごにょ……」


「ん? 相手が俺だとなんで――」


「とーう!」


 トリアのチョップが脳天に炸裂する。


「痛って!? トリアお前なにすんだ!?」


「ふふん! デリカシーゼロおじさんにはオシオキだよ!!」


 いやコイツマジで何言ってんの?

 ……と、思ったりしてみたが、他の奴らもなんだか『まぁしかたがないよね』みたいな顔をしている。


 くそう、俺が一体何したって言うんだ……。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 ワールズレコード009:ダンジョンその2

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 金と権力を持ってるヤツが次に手を出すのは趣味や嗜好だったりする。

 ケインのそれは言うまでもなくあの首輪だろう。


 自分を否定した女を首輪で無理やり服従させ、しかも本起動までの一年は、本起動後の扱いを笠に愉悦に浸る。……歪んでないと言えば、まぁ嘘になるわな。


 だがおかげでやりやすいとも言える。

 そういった意味ではエテリナの案は秀逸だ。その辺りをくすぐりつつ、うまく誘導できれば……。


「あーほら、だめだよおっちゃん! 全然『人でなし感』がでてないよー!」


「なんだよ『人でなし感』って……」


 ……まぁ、口で言うほど簡単ではなかったりするワケだが。


「大丈夫ですよおじさま! ハクはきっとおじさまには素質が有るって思いますから! もう一度頑張りましょう?」


 素質って演技の? それとも人でなしの?

 もし後者だったとしたら……おっさん抜群にショックだよ?




「……あーだめだ、くそ、ちょっと頭を冷やそう」


 演技と一言でいうが、これがなかなか上手くいかない。当たり前の話だがな。

 クヨウによれば、次に全員が集められるのは二日後らしい。……それまでには何とか形にしねぇと……。


「ほらイルヴィス落ち着け。……深刻になりすぎるのは良くない、だろ?」


「……なんだよ覚えてたのか」


「あ、そ、その話……、わ、わたし達もおっちゃんにしてもらったことがある……」


「そうなのか? ……私とイルヴィスが初めて顔を合わせたのは、とあるダンジョンに向かった時でな。その際二人だけでパーティからはぐれてしまったんだ」


 『サーリープラトー』、極寒の地の、雪深いダンジョンだ。

 魔物(モンスター)も、『ネイチャー』属のジャックフロストやスノーディアンといったヤツらばかりで、食糧の確保もままならん場所だったねホント。


「そこでその話を聞いてな。おかげで随分冷静になれたのを覚えている……。最上級ダンジョンから無事に帰ってこれたのもそのおかげだ」


 クヨウが当時を振り返るように見つめてくる。

 ……いやなんというかくすぐったいね。柄じゃないよホント。



「最上級っていうと、えと、私達がそのお話を聞いた『デルフォレスト』もそうですよね、おじさま?」


「お、そうだな覚えてたか」


「えへへ、もちろんです。だって……、ハクがおじさまに初めて抱いてもらった(・・・・・・・)場所ですから……ふふっ」


 うん、先祖返りを止める時にぎゅっとね?

 決してそういう(・・・・)意味のアレじゃなくてね?


 ……だからお前らそんな目で見るんじゃないよ。

 というか、トリアとネルネはあの場にいただろうが。


「で、デルフォレストにも、ネイチャー属は多いよな……トレントとか……。あとは……グリフォンやワーグ、ラミアなんかの『ワイルド』属、ピクセクトなんかの『バグ』属が多いかな……」


 デルフォレストには、実際の動植物なんかに似た魔物(モンスター)が多い。

 そのおかげでサーリープラトーなんかと違ってダンジョン内での食糧確保も不可能じゃあなかったりする。


 いろいろと目をつむれば、バグ属の魔物(モンスター)にも食えるヤツはいるしな。

 ……まぁ食いたいかどうかは別の話だ。




「…………にゃむむ」


「ん? どうしたよエテリナそんなシブい顔して……」


「ふーん! ウチだけその話してもらってないもーん! ふーん! ふーん!!」


 ぷいっと顔を背けるエテリナ。

 そういや、デルフォレストの時はまだエテリナと会う前だったしな。

 ……いやそれにしてもだ。


「そんなんで拗ねるなっての……。ほら、よーしよし……」


「あ! おっちゃんそういう時こそ強引に行かないと! ほら! もっと人でなしっぽく慰めてあげて!」


「なんだよ人でなしっぽい慰め方って……。つーか、そういうお前こそどうなんだよ?」


 演技が必要なのは、なにも俺だけってわけじゃない。

 コイツらにも『俺に従ってる』って演技をしてもらう必要があるからな。


「ふっふっふ……まかせてよ! ボクってば冒険者じゃなかったら女優さんになるつもりだったこともあったりなかったりするんだからね!」


 いやどっちだ。

 そんな風に胸を張りながら、トリアが演技をし始める。


 ――その光景はまさに衝撃的だった。感情の込め方、声の抑揚、身体の動き……その他全てがケタ違いだ。一言でいえば……。


「……ふぅ、どうだったおっちゃん?」


「ひっどい」


「あれぇ!!?」


 いやあれぇじゃないよ、もうホントケタ違いにひどい。

 大根も真っ青のレベルだわ。


「わーんネルネー! かたきをとってよー!!」


「ふぇ!? わ、わたしか……!? わ、わかった……!」


 お、今度はネルネか。


「わ、わたしはその……お、おっちゃんのモノです……。えと……おっちゃんのモノってことは、その、い、いろいろと……さ、されちゃうわけで……。」


 ……あれもう雲行きが怪しいぞ。


「あ、あんなことや、もしかしたらこ、こんなことなんかも……!? そ、そんな……! だ、だめだおっちゃんわたしはまだ……こ、心の準備というか……! その、あの、あっ…………。――――すりゃいむぅ……」


 いやそんな気絶の仕方ある?

 つか、クヨウといいコイツといい、限界突破すると気絶するのはなんなんだ……。


 しかしこれは、どうしたもんか……。

 俺ですら、何とかある程度まではこぎつけた……とまではまだ言えんが、そこそこ頑張ってるんだぜ?


 いつだったかトリアの奴に『夢が役者さんじゃなくてよかったね』なんてことを言われたが……そっくりそのままお返ししてやりたいね。


 もし決行日までにもう少し何とかならなかったら……。

 もうコイツらには、こう、それっぽい感じで黙ったままつっ立ってもらっとこう。

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