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番外編 ワールズレコード008:魔力

「そういえば、エテリナさんはどうやってハク達の先回りができたんですか?」


 正式にエテリナを迎え入れた後、ハクがそんな疑問を口にする

 それは俺も気になっていたところだ。俺達がクインカーバロウに行くと決めたのはエテリナが部屋を去った後の話だからな。


「にゃふふ、えっとねー? 最初はクエスト断られてどうしよっかなーって思ったんだー」


「あれ? でも結構素直に引き下がってなかった?」


「んと、机の上にね、そこそこ難易度のあるクエストの依頼書に混じって、初心者向けな依頼書がいくつかあったでしょ?」


 確かにネルネが『ハクも一緒に行けるように』と持ってきていたな。


「んでんでー。みんな『これからダンジョンに行くぞ』って恰好だったけど、ハクちーが来ることも知ってたみたいだよね? つまり『ハクちーが来た』ことと『ダンジョンに行く』ことは、重なっても不都合じゃないってことでしょ?」


「な、なるほど……」


「そこで依頼書のこととかを考えるとー、『ハクちーのために、難易度の高くないクエストを』ってことかなーって」


「確かにその話をしました……!」


「でしょー? そうなると野営はしないと思うからー、いろいろ考慮して候補は二つ(・・)くらい。でも一つ(・・)は怪しいよねー? ウチのせい(・・・・・)で」


 クインカーバロウとウィーグルモール。俺が最終的に候補として考えていたクエストだ。……片方が怪しいと思ったことも含めてな。


「もちろん他にもいろいろ考察する材料はあったよ? でもわかりやすいのはそのへんかなー? ちょうどイミテーションに使えそうなアイテムも持ってたしね!」


 ……おいおいマジかよ。あの短時間でそれだけ判断してたのかコイツは。

 フーのヤツが『優秀だ』なんて言ってたが……どうにも身内贔屓とかじゃなさそうだな。


 …………これでもう少し、恰好がまともならなぁ。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 ワールズレコード008:魔力

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「そういやエテリナ。お前フーの妹なんだって?」


「うんそうだよー? あれ、言ってなかったっけ?」


 圧倒的説明不足。コイツもトリアと同じタイプか……。

 あれ、心労の種が増えたのかな?


「で、でも、フーさんってハーフリングだよな……。え、エテリナはヒュームに見えるけど……」


「うん、血はつながってないからねー。パパとママが再婚したのがえっと……ウチが十歳の時だったから七年前かな?」


 そういや、そのぐらいの時期だった気がするな。

 フーからそんな話を聞いたのも。


「ウチのママって魔学者でね。フー(ねぇ)のパパが研究の視察にきたのがキッカケなんだってー。ちなみに、ウチも冒険者兼魔学者だったりするよ?」


 それであんなに魔法に長けてたってワケか。

 ……結構お金持ちってのも、あながち嘘じゃないかもな。


「ほらほらオジサン? インテリ女子を手籠めにしちゃう? にゃふふ……!」


 いやしねぇよ。つか、やたらと胸を強調してくるのはやめなさい。

 トリアとネルネもそんな目をするんじゃない。



「しかし魔法か。俺はそっち方面はからっきしだからなぁ」


 マジックアイテムのことさえ、ついこの間リィンさんに教わったばかりだ。


「わ、わたしは少しだけわかる……。スライムの精製には魔学が必須だったから……」


「お、そうなのか」


 まぁ俺は魔学の専攻授業はとらなかったからなぁ。その辺はホントさっぱりだ。

 そんな俺からすりゃ、ネルネも十分すごいと思うがね。


「あの、ハクはまだ魔法とかって習ってないんですけど……マナと魔力ってどう違うんですか?」


「にゃふふ、ハクちーは勤勉だねぇ? よーしそれじゃあエテリナおねーさんが教えてしんぜよー」


 ふむ、確かにそれは良い考えだ。

 今は俺にできる範囲で手ほどきをしているが、いろいろと学べばハクの進路にも選択肢が増えるはずだからな。




「まず魔法ってのはねー? 古くは魔物(モンスター)の力を人が使えるようにって生み出された技術なんだー」


「えと、それって亜人みたいにってことですか?」


「にゃ! 良く知ってるねハクちー!」


「あ、あの、じつは……」


 ハクが自分のことをエテリナに話し始める。つまり、エテリナのことも受け入れたってことなんだろう。

 ……いや、それ自体は良いことなんだよ?良いことなんだが……。

 

 何故かいろいろと、嫌な予感がするんだよなぁ。

 主におっさんの社会的信用が――。


「にゃふぅ……、ハクちーもいろいろ大変だったんだねぇ……。おねーさんがチューしてあげようか?」


「え!? いえあの、は、ハクのくちびるはおじさまのモノなので……!」


「うえぇ!!!? おっちゃん!!!?」


 ははは、ほらねもうきた。

 いやおっさん全く身に覚えがないからね?



魔物(モンスター)は魔素から生まれて魔素を使って力を行使するんだけどー? んにゃ~、残念ながら人は体内に魔素を持ってないんだよねー?」


 エテリナが続けて説明を始める。

 ……ほらトリア、結局ハクの発言は恋愛小説に影響されたって判明したろ。

 いつまでもおっさんを睨んでんじゃないよ。


「そこで生み出されたのが『魔力』! マナを変換して、魔素と似たような性質の力を生み出すことに成功したんだー。にゃふー! 先人ってのは偉大だねぇ」


 なるほど、()素に似た()で魔力ってことか。


「でも、なんでわざわざ魔力に変換するの? そのままマナでばしーっ!ってやっちゃえば早いのに……」


 うーむこの脳筋。


「うんうん、トリニャーいいタイミング! ここからがマナと魔力の違いなんだけど……」


 エテリナが指を一本立てる。

 すると、その指先から小さな炎が現れた。


「たとえば、炎を吐いてくる魔物(モンスター)なんかがいるでしょー? アレは簡単に言えば、魔素を『炎と同じ性質』に変換してるんだー」


「えっと、じゃあ厳密には炎と全く一緒じゃないってこと?」


「にゃふふ、そのとーり。んで、マナを使って同じことができるかって言うと……答えは『ノー』なんだよねぇ、ざんねーん。……ところが――」


「あ! 魔素と似てる『魔力』なら……!」


「にゃふー! ハクちー正解! えらい!」


 なるほどなぁ。

 意外っつーとアレなんだが、エテリナの説明は結構分かりやすい。


「わ、わたしのスライムも同じだ……。ぷ、プログラムと魔力の性質変化を併用して、最終的にスライムの精製を実現している……」


「うんうん、魔法までいかなくても、ネルネルみたいに魔力の性質変化はいろんなところで使われてるよー。一部のマジックアイテムなんかは顕著かなー?」

 

 エテリナがふっと指先に息を吹きかけ炎を消す。

 しかしリィンさんの時も思ったが、この歳になっても学ぶことってのは多いもんだねホント。



「まぁ魔法っていっても、今では結構発展して『魔物(モンスター)の力を人間も』なんて考えじゃなくなってるんだけどねー?」


「そうなのか?」


「にゃふふ、例えばウチらの使ってるこういった(・・・・・)装備品にも『自浄魔法』がかかってるでしょ? そんなの魔物(モンスター)が使うと思うー?」

 

 エテリナが自分の胸元をくいくいと引っ張る。

 ええい、はしたないからやめなさいってのに……。


「『自浄魔法』って言うと……えっと、装備品なんかの汚れを勝手に綺麗にしてくれるってやつだよね?」


 確かに魔物(モンスター)は使わんかもな。

 今でも『魔力』や『魔法』って言葉が使われてるのは昔の名残ってワケか。


「……つーか、分かったからそれ(・・)やめろって」


「にゃふー? それ(・・)ってなーに? ウチわかんないなー?」


 くいくいと胸元を引っ張ったまま、エテリナが挑発するように見つめてくる。


 ……コイツ絶対分かってやってるだろ。

 ただでさえ下着みたいな恰好してんだから、せめてもう少し――。


 ……ばつんっ!!


「え?」

「あ」


 はじけるような音と共に、目の前に現れたのはエテリナの――。

 ……とりあえず、目をつむっておこう。


「あれーなんでだろ? 弱くなってたのかなー? ……にゃふふ? オジサンにー、見られちゃった(・・・・・・・)ね?」


 なんでちょっと嬉しそうな声なんだおかしいだろ。

 もう少し恥じらいというかだな……。


「お、おっちゃん……? あ、あんまりな? そういうのは良くないと思うぞ……?」


「そうだよ!! おっちゃんのえっち!! えーっち!!」


「あ、あの、おじさま……? おじさまが望むならハクは……」


「いやだから俺がやってるわけじゃ――というかハク、ストップストップ! それはホントにシャレにならんから!!」


 最近のおっさんの扱いはいっつもこうだよ……。

 どうにも良くない傾向だ。


 どこかに俺の社会的信用を回復してくれるような、そんな魔法が使えるヤツはいないもんかね……。

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