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第17話 またどこかで会えるといいね?

「クエスト依頼書の控え、いろいろ貰ってきたけど……」


 半裸の少女となんやかんやあった後、俺達はひとまず部屋へと戻ってきていた。

 そろそろハクもやって来る頃だろうしな。


「せっかくなら、ドーンと稼げる方がいいよね? まぁその分、ちょっとだけ大変かもだけど……おっちゃんならきっとだいじょぶだよ! がんばって!」


「……言っとくけど、お前も連れてくからな」


「え!? ボク、クエスト探すの手伝ってあげてるじゃん!?」


 コイツこれで一仕事終えた気になってやがったな……。


「お前こないだ『今回はボクに任せといてよ』とか言っといて、ぜんぜん活躍せんかっただろうが」


「あー、それはまぁ……。けーどー、ボクはお部屋でゆっくり待ってるつもりだったのになー」


 おっと、完全に本音をもらしやがったな?

 そうはさせん。お前には、俺の生活のための礎となってもらおう。


「わ、わたしはちゃんとついてくぞ……。お、おっちゃんには、いろいろとお世話になってるしな……」


「ネルネは良いヤツだなー? ほらよーしよし……」


 ネルネの頭を撫でてやる。


「え、えと、その……て、照れる……」


「あーずるい! ボクも! ボクも!」


「んー? でもトリアは手伝ってくれないんだろー? 別に無理しなくていいんだよ? 部屋でゆっくり待っててくれりゃあね?」


 ま、実際のトコは一人で行けるクエストを探すつもりだったんだがな。

 今回の件は、完全に俺の自業自得だ。ネルネの申し出は嬉しいが、気持ちだけ受け取って……。


 …………ん?


「ぐしゅ……いいもん……。べ、別に羨ましくなんかないもん……」


「おいまてまて、わかったって! ほらよーしよし、ホントはトリアにも手伝ってほしいなーって思ってたんだよ? な?」


「ぐし……えへへ……! しょーがないなーおっちゃんは! ボクがいないとダメなんだからー!」


 たった一言でこの笑顔。

 コイツの情緒はいつも全力だな……。


「せ、せっかくなら、ハクも一緒に行けるようなクエストがいいんじゃないか……? さ、最近は、冒険者になるために、い、いろいろ頑張ってるみたいだし……」


「あ、いいね! その分報酬は安くなっちゃうけど……」


「いや、そういうワケにもいかんだろ」


 ハクはまだ十一だ。

 経験を積むにしても、いきなりクエストってのは……。


「えー? 冒険者を目指すなら普通……とは言わないけど、めずらしい話じゃなくない? ボクも十歳から、おししょーと一緒にダンジョン潜ってたよ?」


 そりゃお前が特殊な環境なんだよ。


 でもまぁ、トリアが言うこともあながち的外れとも言いきれない。

 勇者検定の最年少記録も、公式じゃ十二歳だったりするしな。


「そ、それに、ハクがおっちゃんに肉体強化の手ほどきを受けてるのは、早く冒険者になりたいからなんだろ……? だ、だったら、実戦での経験は、や、やっぱり大事なんじゃないか……?」


「いやまぁ、そりゃそうなんだが……」


 実際には他にも理由がある。


 ハクぐらいの年齢になると、マナ発現の兆し(・・)が見え始めるため、護身用の肉体強化など、マナ操作関連の授業が始まりだす。

 どこへ行っても魔物(モンスター)が出現するこのご時世、たとえ冒険者でなくても、そういった技術は無駄にならなんからな。


 フラモネの花のクエストを引き受けたのも、それがあったからだ。

 そうでなけりゃいくら危険が少なくても、魔物(モンスター)が出る場所になんか連れていかん。


 ……が、ここで問題になってくるのがハクのレベル(・・・)だ。


 ランクA+の魔物(モンスター)グリフォンを、ハクは一人でを倒しちまった。

 レベルクレスト無しじゃ正確にはわからんが、少なくともレベルは10前後ぐらいにはなってることだろう。


 そうなると、授業でのマナ操作だけでは十分とは言えなくなってくる。


 自身に見合った正しいマナの扱いは重要だ。

 疎かにすれば自分だけでなく、周りにも影響が出かねない。


 とはいえ、亜人であることをなるべく隠しているハクに『先祖返りでグリフォンを倒してレベルが上がりました~』とは言わせられん。

 そんなわけで学校が終わった後、俺が手ほどきをしているってワケだ。


 あまり褒められたやり方じゃないのはわかっている。

 ……が、ハクの家の事情なんかを知っちまうとどうしてもなぁ。



 そんでもって実戦で学ぶことってのも確かに大きい。

 実際、戦闘系の第二学校へ進学すれば、監修者付きで弱い魔物(モンスター)を相手にする授業なんかもある。


 経験を積めば、その分ハクのマナ操作も安定してくることだろう。

 もちろん俺もいろいろ準備はしているが、そう考えればハクのためってのもやぶさか(・・・・)じゃあない。

 それでもやっぱり、いきなりクエストってのは……うーむ。

 

 そんな風に思案を続けていると、不意に呼び鈴の音が鳴り響いた。


「あ! ハクが来たんじゃない?」


 ああ、そうかもしれん。

 ハクも合鍵は持っているが、誰かさんと違ってきちんと呼び鈴を鳴らすからな。

 そんなことを考えながらドアを開く。すると――。



 ――そこには見覚えのある、ピンクの髪をした半裸の少女が立っていた。



「にゃふふ~。どもどもー、こんにちはイルヴィスさん――」


 ――ぱたん。

 

 扉を閉めて考える。落ち着け、落ち着くんだイルヴィス。

 扉の前に立っていた半裸の少女、そんな露出狂の知り合いは――。

 ……まぁいないと言ったらウソになるのかもしれんが。


 だが(ウチ)を訪ねてくる理由にはそりゃもうアホかってぐらい身に覚えがない。


 しかし、何故かは知らんがあいつの目的は俺で間違いなさそうだ。

 なんせ名前まで知っていた。


 これがまずい。

 なぜなら……。


「あれ? どうしたのおっちゃん?」


「な、なんだか、顔色が良くないが……? は、ハクじゃなかったのか……?」


 ……コイツらが部屋にいるからだ。


 この状態で、半裸の少女が俺を訪ねてきた事実(・・)だけを見れば、真実(・・)がどうであれ、まためんどくさいことになるのは確実だ。


 ……頭が痛くなってきた。だがなんとか状況を打破しなければならない。


 大丈夫だイルヴィス、最近は随分とイレギュラーも乗り越えてきた。

 今の俺ならば――!


「――あれ? キミもここに用事なの? にゃふふ、ウチもなんだー! イルヴィスさんって人に会いに来たんだけど……キミ知り合い?」


「え? えっとはい、おじさまはその……。あ、あれ? あの……お洋服は……」


「にゃふー! いいのいいの、細かいことはー、気にしない気にしなーい」


「え、えと……こ、細かいこと……なのかな……?」


 扉の向こうから聞こえてくる会話。

 はい詰んだー。今この瞬間完全に詰みましたー。


「あれ、ハクと……」


「も、もう一人、別の声が聞こえるな……。あ、あれってさっきの……」


 もーだめだわこれ。完璧に手遅れなヤツだわ。

 逆にウケるね、ははは。




「――うん、うまい。うまいぞハク、ありがとな」


「ホントですか!? えへへ、嬉しいです……!」


 以前言っていた、はじめて授業で作ったというクッキー。

 ハクはそれを持参してやってきていた。


「ハク、おじさまにはじめてを捧げられて、とっても幸せです……」


 おっと、表現に気を付けような?

 おっさんその内つかまっちゃうよ? いいのかな?


「ほ、ホントにおいしいぞ……。わ、わたしはスライムは作れても、お菓子は作れないから、そ、尊敬する……」


「そ、そんな……。えへへ……」


「でもでもー、ウチも貰っちゃってよかったのー?」


「あ、はい! 少し多めにラッピングしておいたんで、ぜひどうぞ!」


 良い子だねぇホント。


「それにしても……。はぁー、おっちゃんはまったく……」


 じとりと俺をにらむトリア。


「……なんだよ。べつにやましいことなんてしてないぞ俺は」


「こんなに可愛いボクがいるって言うのに、すーぐほかの女の子にも手を出して……。おっちゃんのえっち!」


 『も』ってなんだ『も』って。

 お前にもコイツにも手なんかだしとらんだろが。


「そんで、あーっと……」


「にゃふふ、エテリナ・クルカルカでーす。よろしくねー、オジサン?」


「じゃあエテリナ、お前はなんで……」


「あ、あのおじさま? お話の前に、お洋服を貸してあげた方がいいんじゃ……」


「にゃーだいじょぶだいじょぶ。ウチは好きでこのカッコしてるんだー」


「え!? だって……あれ……?」


 まるで変態みたいなこと言っとるぞコイツ。

 そりゃハクも混乱するよ。

 

 というか、それはそれで全然大丈夫じゃないだろ。

 むしろ大問題だ。


「みんなに見られてるって思うとー、結構興奮しちゃうんだよねー? まぁ最近は、ちょっとマンネリかなって思ってたんだけど……」


 ……まるで変態だと思っていたが訂正しよう。

 完璧に変態だった。


「それに聞いたよ? オジサンはえっちぃの見せれば、とりあえずお話だけは聞いてくれるって? にゃーん、やらしい視線むけられちゃうのかなー?」


 いやホントにやめて? トリアとネルネも、そんな目で俺を見るんじゃない。

 おっさんただでさえ、最近いろんな人にそういう目で見られて……。


 ……ん?


「おいちょっと待て、『話だけは』ってのはどういう……?」


「あれ、ちがうの? えっちぃの見せれば話を聞いてくれてー、それでもダメならもっとカゲキなことを……って聞いたんだけど?」


 悪化しとる!!

 なんでそんなことになってんの!?


「あれー? おっかしいなぁ、ちゃんとボクおっちゃんのために、『ぱんつ見せるぐらいじゃダメだったよ』って、みんなに言っといてあげたんだけど……」


 いや犯人いたわ。

 身内の犯行だったわコレ。


 まぁ仮に俺が『あの噂違いますよ?』と言いまわったところで、聞く耳を持ってはもらえんだろうけどね? 

 けどもう少し言い方ってモンがあると思わない?


 しかも、今回はホントに善意っぽいから責めづらい。

 泣き寝入りか……。


「にゃふふ、じゃあウチってば見せ損ってことかなー?」


 見せ損もなにも、お前は元からその恰好じゃねぇか。




「そ、それで、エテリナはなんでおっちゃんを訪ねてきたんだ……?」


「にゃ! そうだったそうだった! ウチねー、オジサンにクエストを依頼しに来たんだー」


 そう言いながらクエストの依頼書を取り出すエテリナ。

 ……これ今どっから出て来たの?


「えっと、ダンジョン『ウィーグルモール』の探索、報酬は……うえぇ!!?」


「す、すごいです……! こんなにたくさん……!」


 おいおいまてまて、流石にこの報酬は異常だ。

 ウィーグルモールなんて初級中の初級ダンジョンだぞ……?


「……目的はなんだ? いくらなんでも、クエスト内容に報酬が釣り合わん」


 何か隠しているのか。

 それとも……。


「にゃふふ、だいじょーぶだいじょーぶ! ウチって結構お金持ちだしー、まぁちょっとしたサービスっていうのかな? 慈善事業、慈善事業!」


 ……なるほどな。

 話すつもりはないってワケか。


「……悪いが、引き受けられんな。他をあたってくれ」


「えーなんでー? この内容じゃ不満ー?」


「そうだな。お前が全部さらけ出す(・・・・・)ってのなら、話は別だが……」


「…………ふぅん、そっか」


 この反応。

 やっぱり何か別の目的が――。


「ちょっとおっちゃん! 全部さらけ出せって、これ以上エテリナ脱がせてどうするつもりなの! えっち! けだものー!」


 ……いや今結構シリアスなとこだったよ?

 コイツはホントに……。


「……にゃふふ、ま、いいや。断られちゃったのなら仕方ないしねー?」


 そう言いながら立ち上がるエテリナ。

 以外にもあっさりと引き下がるんだな……?


「とりあえず今日は帰るけどー? ……またどこかで会えるといいね? オ・ジ・サ・ン……?」

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