番外編 ワールズレコード024:冒険者クラスと魔物ランク
「うふふ~。イルヴィスくんおかえりなさぁい」
「リィンねぇちゃん!?」
バンダルガからアンリアットへ帰還し、全員を送ってから帰ってきてみれば、いつもと違って髪を下ろしているリィンねぇちゃんのお出迎えが……って、あっ!? これねぇちゃん飲んでるな!?
……いやいやそうじゃなくて!
「やぁイルヴィス、おかえり。預かっていた合鍵はそこに戻しておいたよ」
「っと、ウリメイラかありがとな。……いやちがう! なんでねぇちゃんがここに……あ!? いや、ねぇちゃんってのはその、あれだ、なんつーか……」
「おやイルヴィス、私の情報網をまだ少し甘く見ているね? 君が最近、リィンさんのことをそう呼んでるの、私が知らないとでも思ったのかい?」
え。
「ふふ、心配しなくても言いふらしたりはしてないさ。ガングリッドはやっぱりまだ安静中、シーレはさっき孤児院から連絡があって、少し遅くなるそうだよ。それと、フーは急な仕事が入ったみたいでね、今夜は来られないそうだ」
「いやいやまてって、まだいろいろと頭の整理が……急な仕事?」
「なんでも『バンダルガのダンジョンで魔王級討伐の痕跡が見つかった』なんて情報が入って来たみたいだね」
バンダルガのダンジョン……魔王級……。
っつーと……。
「あー……それやったの多分俺達だわ……」
「だろうね、タイミング的にも。だから伝言、『そういうことはちゃんと報告せんかいこのどあほ! 今度きっちり埋め合わせしてもらうからな!』……だってさ」
あちゃー、確実に小言言われるヤツだなコレ……。
しかしちょうど更新日かなんかに重なっちまってたのか。
「それで、偶然そこでリィンさんに会ってね、せっかくだから招待してみたのさ」
「うふふ! イルヴィスくぅん、今日は一緒にお酒飲もうねぇ?」
「いやねぇちゃん、それクッション……」
「あれぇ? ……なーんて、うふふ、ちゃあんとわかってるよぉ、イルヴィスくんってばもぉー! つーんつん、うふふふふ……!」
「いやねぇちゃん、それ酒瓶……」
そんな間違いする?
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ワールズレコード024:冒険者クラスと魔物ランク
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「それにしても……とうとう魔王級を討伐とはね。随分と実力をつけてきているじゃないか、君も、彼女達も」
「いやまぁ今回は色々と運が良かったよ、本当にな」
まず事前に星10……レガリアレベルの代物を入手できていたこと。
悪い言い方になっちまうが、魅了魔法が爺さんに集中してたってのも大きい。
幸か不幸か二日目……つまり比較的浅層での遭遇でこっちにも随分余裕があったし、他の魔物にもほぼ気を取られなくて済んだってのもある。
本来魔王級ともなりゃ深層でのエリアボスになっていてもおかしくないからな。
つっても、運がよかっただけかと言われりゃそうじゃない。
アイツらに時間稼ぎを任せられたのも、ネルネがアルファスライムとオメガスライムを使えたのも、これまでの積み重ねがあったからこそだ。
「あのレガリアの鎧、あれから少し後に『買い手を探すのを保留にしてほしい』って言ってたけど……ちゃあんと活用できてるんだねぇ? うふふ、いいこいいこ~」
「ねぇちゃん、勘弁してくれって……」
しまったな、下手に指摘せず、そのままクッションなり酒瓶なりを与えておくべきだったか……。
「いいじゃないか、私は気にしないよ? たとえ君がその歳でリィンさんに甘えたりしていたとしてもね?」
「お前はまたそうやって……」
トリア レベル28 マナプール3400 上級上位 《勇者候補》
ネルネ レベル22 マナプール620 中級
ハク レベル16 マナプール230 中級
エテリナ レベル26 マナプール2800 上級上位 《勇者候補》
クヨウ レベル27 マナプール710 中級上位 《勇者候補》
「――とまぁ、現状はだいたいこんな感じだな」
「へぇ……こうしてみると、やっぱりトリアとエテリナは頭一つ抜けているみたいだね。もちろん、マナプールだけで実力が図れるわけじゃないけど……」
「しかしま、どうしても目安みたいなもんにはなっちまうからなぁ。ギルドのクラス分けも、マナプール基準で設定されてるしよ」
だが一般的な冒険者なら引退時のレベルは35~40程度、上級以上に上がれる冒険者なんてのは、多く見積もっても全体の二、三割程度なんだ。
そう考えりゃ、うちの子らは随分と優秀だと思うがね?
「えーっとぉ、たしか、マナプールが約30で『初級』、200で『中級』、1000で『上級』、だったよねぇ? それからぁ……」
「4000で『最上級』、10000を越えれば『英雄級』だな。そんでもって、30000を越えると『勇者級』なんて呼ばれるようになる……っつっても、それは非公式っつーか暗黙の了解っつーか……」
ギルドが設定しているクラスはあくまでも英雄級までだ。
公式としての『勇者』の称号は、検定の合格者なんかのギルドの基準を満たしたヤツだけに与えられるってとこなんだろうね。
……が、ぶっちゃけ冒険者の中どころかギルドの中でも、『勇者級』なんて表現は使われていたりする。
まぁマナプール30000なんつう、ちょっと眩暈がしそうな数字、普段は目にするようなもんじゃねぇからなぁ。
そのせいかは知らんが、結構ゆるくても支障がなかったりするのかもしれん。
「非公式っていえば、『魔王級』って表現も公式のものじゃないんだろう?」
「そうだな、本来は『ネームド』つって、SS+の中でも、特に力をつけてるヤツには個体名をつけるんだが……そいつらを『魔王級』なんて呼んでるんだよ」
冒険者のクラス分けは、『単体でどれだけの強さの魔物と互角に戦えるか』が基準になっている。
初級ならランクC、上級ならランクA、英雄級上位ともなればランクSS+といった具合だな。まぁ同じランク内でも強さの強弱は有る以上、あくまでもおおよその基準だ。
「……が、魔王級だけは逆でな? 俺も聞いた話になっちまうが、勇者級なんて表現が出てきたときに、『勇者と相対するなら魔王だろ』なんてノリで使い始めた奴がいるって話らしい」
「じゃあそれが広まったってことなんだ~? それにしてもぉ……うふふ、みんなすごーくがんばってるねぇ? ハクちゃんももう中級だし……」
「まぁ、トリア達なんかはもともと結構高レベルだったからな……って、うお!? ねぇちゃんもう真っ赤じゃねぇか!? あーもうほら、そんなに強くねぇんだから、せめてちゃんと水もだな……」
「あぁ!? むぅ~、イルヴィスくんのいじわるぅ! おねぇちゃんにいじわるするのは悪い子なんだよ!?」
「悪い子て……」
いやおっさんもう良い歳よ?
むくれるねぇちゃんからグラスを取り上げながら、ねぇちゃんの言う『すごーくがんばってる』アイツらのことを考えたりしてみる。
夢幻の箱庭を手に入れてからは、レベリングの効率も格段に向上した。
今では隠れ家を作りつつ、積極的にレベリングに励んでいる状態だ。
……まぁ積極的にっつーと若干一名例外もいるが、アイツはアイツでうまいこと誘導してやれば頑張れるヤツだからな。
レベリングだけじゃあない、今回のネルネもそうだが、それぞれが自分自身にあった成長の仕方を模索しているようだ。
――いつか全員、俺なんかよりもっとずっと強くなる。
根拠なんてもんは何もないが……いいのさ、俺がそう信じてるんだからな
だからせめて、それまでは一緒に冒険しながら、その成長を見守っていよう。
……先輩風をガンガンに吹かせながら、な。
「おや、どうしたんだいイルヴィス? なんだか随分とご機嫌じゃないか」
「ん、そうかい? ……ま、両手に花で旨い酒を飲んでるんだ、そりゃあご機嫌になったりもするさ」
「! うふふ~、もぉ花だなんてぇ、イルヴィスくんはおませさんなんだからぁ~! ぎゅ~!」
「うおっと!? ねぇちゃんホント、勘弁してくれって……」




