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庶民が貴族に絡まれるのは必然。

「ふわぁぁぁ、よく寝れた。自分が思ってるよりも疲れてたのかな?」


僕は、久しぶりに睡眠を取った。転生前は寝なくても魔力の流れが乱れていなきゃ平気だったしね。

今はまだ魔力操作がこの体に慣れてないから睡眠を取らないといけないみたいだ。

少し不便だけど、この感覚は嫌いじゃない。


さてと、そろそろ支度しないと遅れちゃうかな?

僕は顔を洗って、朝ごはんを食べ、学院に向かう。

途中で貴族が乗るような馬車が前を通った。中の子供は僕を見るなり怪訝な顔をした。

そりゃ、これから魔術学院の試験を受けるって時に白髪の庶民を見たら嫌だよね。


「...学院に着いたらあんな顔がそこかしこにあるのか。気が滅入るな...。」


怪訝な顔するくらいなら耐えられるけど、殴られたりは嫌だなぁ。

僕は落ちた気分のまま学院へと足を運んだ。




やっぱり学院はいつ見ても広い。

迷わないように、入ってくる人の波に飲まれることにした。


そのまま試験会場に着き、守衛さんや他の受験者からの冷たい視線を背中に受けながら、受験料を払い、受験票を受け取る。

番号は『666』 悪魔の数字と呼ばれ、あまりいい数字ではない。


「なんだか嫌な予感がすごくする。何事もなく終わってくれないかなぁ〜。」


僕はそう呟き、割り振られた番号を元に教室で素質を判定してもらう。

大抵は特化した属性の色に変わるんだけど、僕の場合は...


「無色透明です。特化した属性はありません。魔力量は人より多めですね。あなたは一応規定を超えているので入学は出来ますが、今なら取りやめることも出来ます。いかがなさいますか?」


僕はもちろん入学を選ぶ。ここまで来てやっぱりやめますなんて言うはずがない。


「...そうですか。気をつけてくださいね。では、私達魔術学院はあなたの入学を歓迎いたします。」


そりゃどうも。そんな感情のこもってない目と声で歓迎されても嬉しいどころか煩わしい。

まぁ、ここで波風立てず、静かに学校生活を過ごすのがいいだろう。


「ありがとうございます。」


同じように感情のこもっていない顔で返事をする。

そのまま教室を出て、大広間で入学式を待つ。

この学院は試験と入学式が同日に行われる。

すごい皮肉だなーと思っていると、後ろから声をかけられた。


「おい、落ちこぼれ。お前みたいな落ちこぼれがどうやってこの学院に入学したんだ?見たところ庶民みたいだが、お前の母親が体でも売ったか?そんな髪色のお前を産んじまったばっかりに可哀想だなぁ!!」


ほら、こういう馬鹿な貴族の馬鹿なお坊ちゃまが喧嘩をふっかけてくる。

こういう相手は無視に限る。するともっと声を荒らげて話しかけてくる。


「おい!!聞いているのかよ、落ちこぼれぇ!!!お前みたいな落ちこぼれがぁ!!!どうやったらこの学院に入学出来るんだって聞いているんだよぉ!!!」


なんだよ、気に食わないなら突っかかって来るなよ。めんどくさいし、目立ちたくないんだから。

僕はなんとか収めようと、


「そんなに試験の公平さに疑いを持つなら学院に問い合わせるといい。僕は静かに過ごしたいんだ。すこし静かにしていてくれ。」


その言葉を聞いて、貴族のお坊ちゃまはさらに声を荒らげる。


「お前みたいな白髪が!!!色持ちである俺に!!!意見するつもりか!!!!」


じゃあどうしろって言うんだよ。

答えても怒って、答えなくても怒るって。

子供の癇癪じゃないんだからさ。落ち着けって。


「決闘だ!!俺はお前に決闘を申し込む!!」


おいおいおいおい、私闘出来ないからって入学初日に決闘するか?

そもそもまだ入学すらしてないだろ。

そう思い、困っていると貴族の肩に手を置き窘める男性が出てきた。


「まぁまぁ、落ち着きなさい。そんなにいきり立ってどうしたって言うんだい?」


彼が口を開くと、周りの女子生徒は黄色い悲鳴を上げる。

...この人そんなに有名なのか?

そう思っていると貴族のお坊ちゃまは


「生徒会長様はこのような者が学院に入学することにどうも思われないのですか!?」


あ、生徒会長様なのね。

とても人気なのね、生徒会長様。


「そうだね、何も思わない訳では無い。だが、それはこの場を乱していい理由にはなり得ない。君も学院の生徒になるのなら自制を心がけたまえ。荒れた心では魔法は答えてくれない。常に冷静に周りを見ることが、剣士という野蛮な者とは違う我らの優位性だ。忘れてはいけないよ。」


周りは拍手しているけど、この人、今さらっと僕と剣士を罵倒しましたよね?

え、誰も気付かないの!?この人腹黒だよ、絶対!!!


「もうすぐ入学式が始まる。列に戻りたまえ、クラス分けがある。そこで少し余興を用意した。皆、存分に楽しんでくれたまえ!!」


生徒会長様は大広間に響くような大きな声でそう言った。

貴族のお坊ちゃまは、何事もなかったかのように列に戻っていった。

謝罪くらいしろよと思ったけど、言わなかった。言ったら負けだ。


僕は静かに入学式を待った。隣に座ってきた女の子がすっごいこっち見てるけど気にしたら負けだ。

髪の毛、めっちゃ見てるけど気にしたら負けだ。

クラス分けでこの子と違うクラスであることを願いながら、なかなか始まらない入学式を待った。


このあと、僕の願いは届かないことを知る。

すっごい泣きたい。

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