白との邂逅
「さてと、今日は色々と見て回ったし、ついでに走ってきたから宿でも行って休もうかな。」
僕はそこで重要なことに気づいた。
ホントに重要なことに。
人間社会で生きていく上で忘れちゃいけないもの。
そう、それは……
「僕今無一文じゃん。」
……お金である。
「……これどーしよう。野宿か?というか、お金を払えないやつがそもそも試験受けられるのか?これはなんとしても稼がなきゃいけないのでは??」
と、ぼそぼそ一人で呟いていると
「そんなところで何をしているの?一人で喋っているなんて。あなたにも何か見えているの?」
後ろから突然声をかけられ、驚きながら振り向くとそこには人形のように整った顔立ちの少女が立っていた。
「私は質問をしたのだけれど、答えてはくれないのかしら?」
彼女は無表情で、本物の人形のように僕に言った。
「あ、あぁ、ごめんなさい。遠くの村から来たんだけど、お金がなくてどーやって稼ごうかなって。」
「それなら、王都のギルドに冒険者登録をしてはどうかしら?登録費なら払ってあげましょう。」
…なんで見ず知らずの人の登録費を出そうと思えるんだ?着ている服や話し方、所作を見ると良家のお嬢さんなんだけど、こんな平民に優しくするかな?
でも、彼女と僕の共通点を見つけ、僕は
「大丈夫!明日は魔術学院の試験を受けるからギルドには登録できないし、お金ならなんとかして稼ぐから!」
と、彼女に向かってにこやかに言った。
「……そう。魔術学院に入学したいのですね。ならば、あなたが入学出来ることを心から祈っていますわ。入学出来たらまた会いましょう?」
そう言って彼女はどこかへ立ち去った。
透き通るような白い髪。
それが僕と彼女の共通点。
きっと、これがあるから彼女は優しくしてくれたんだろう。
学院に行ったら声をかけてみよう。
「それよりもまずはお金を稼ぐことだ。ギルドに行けば魔物の素材を買い取ってくれそうだけど、きっと拒否される。行商人に売り込みに行くか。」
僕は王都を一旦出て、近くの森で魔物を狩りまくった。採取もしまくった。
僕の唯一の持ち物、アイテムボックスがパンパンになるまで詰めた。
このアイテムボックスは、転生前に使ってたもので見た目は低級アイテムボックスだけど容量は最高級っていう優れもの。
そこに詰まった素材を、市場価格が変動しすぎない程度に売っていく。こういう細かい計算も人生を楽しみつつ生きていくために必要だと思う。
「もうこのくらいで十分かな?結構稼げたし、なんとかなるか。」
僕は売って稼いだお金で一番安い宿に泊まり、疲れを癒した。
明日は試験だし、ゆっくり休もう。