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咲夜修行中!~火傷娘と先輩の。退魔師修行、ことはじめ~  作者: 弓弦
第一章「見崎の宝珠と亡者の手」
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プロローグ「幸せな夢《カコ》は未だ遠く、手は届かず」

挿絵(By みてみん)




 私の一番古い記憶は、父の運転する車に乗っていた記憶だ。


 確かあの時は、母に『もう少し女の子らしい話し方をしなさい』と怒られて、後部座席でひとり()ねていたはずだ。


 助手席に座った母が、父と話す声を聞きながら、車の窓ガラスに行儀悪くもたれかかり、窓の外に生い茂る木々が、緑色の帯となって流れ消えるのをじっと眺めていた。


 とても静かで、暖かな家族との記憶。

 ――しかし、いつもその記憶はすぐに思い出したくないものへと移り変わる。


 それは、割れたペンダントを握りしめて横たわる、血まみれの母に泣きすがっている痛み……


 ――恐怖の記憶だ。


 赤く、(あか)く、轟々と五月蠅(うるさ)(わめ)く炎に焼かれ、ギリギリと歯車が締め上がるような痛みを感じる世界の中で。



 ――私はただ、泣くことしか出来なかった……



 ――交通事故。

 そう、後になって祖母から聞いた。

 本家近くの山中を走行中、落石に()ったらしい。


「――(さく)ちゃん、これから一緒に住もか? ……ちゃんと、ちゃんと……全部、ばあちゃんが、面倒見たるさけな……」


 祖母は、私の顔に残ってしまった大きな火傷跡を、悲しそうに撫でながらそう言ってくれた。


 ――そんな祖母の姿を見て。

 事故で涙をすべて流しきってしまったように、ただ呆然とするだけだった私は。

 ようやく涙を流し、おばあちゃんの手を取ったのだった。



 ――そして、今。

 私はまた泣きながら、血塗れの人を抱きしめている。



「――先輩ッ! 先輩ッ! 目を開けてくださいよッ! ――穂積先輩(、、、、)ッ!」



 ――高校一年、春。


 夜桜舞い散る丘の上、私は――



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いつも応援・ご評価ありがとうございます。

おかげさまで、ジャンル別日間ランキングで19位を頂くこともできました。
これからも、お付き合い頂ければ幸いです。

*******↓ 『もうひとつ』の物語 ↓******

「ラリカ=ヴェニシエスは猫?とゆく。」
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